現在はバスと地下鉄、路面電車に新交通システムと、4つの分野で東京の交通を支える東京都交通局。このうち路面電車(都電)は、1972年、現在の荒川線を残して廃止となりました。それから約50年、車両の世代交代も進んだ荒川線ですが、同線での役目を終えた車両の一部は、現在も公園などに保存されています。
そのひとつが、板橋公園(通称「板橋交通公園」)。ここに、7500形の7508号車が保存されています。
7500形は1962年にデビューした車両。当時は都電の全廃に向けた動きがあり、同車は「都電最後の新製車」とも言われていたそうです。しかし、前述のとおり、1972年以降も荒川線が残ったため、都電が完全に廃止されることはありませんでした。これを機に、7500形は全20両中18両が同線に集結(残りの2両は廃車)します。この時点ではイエローに赤帯のスタイルだった7500形ですが、のちのワンマン対応化改造とともに、帯の色を青に変更。さらに一部の車両には冷房化を実施し、その際に車体を新たに作ったものと取り替えています。
7508号車は車体の載せ替えを経験せず、1986年に廃車。その後、板橋交通公園に移設され、保存車両として余生を過ごしています。そのスタイルは、冷房化されていない原型の車体に、ワンマン対応の青帯が入ったもの。昼間は車内が開放されており、木製のままの床など、車体載せ替え前の7500形の雰囲気を楽しむことができます。
また、この公園には、都営バスの車両も保存されています。保存車は1975年に製造されたもので、車内の床は、これまた木製。7508号車とともに、昭和の都営交通の面影を満喫することができます。
ところで、板橋区は現在、この公園のリニューアル計画を進めています。2023年12月に公表された文書では、2024年度~2026年度にかけて設計・施工を進める予定となっています。リニューアルにあたって実施した地域住民へのアンケートには、公園内の交通機能に関する施設・設備の老朽化に対し、再整備を求める声も多かったようです。これに対し区は、
- 乗り物などは現代に合わせた新しい内容の交通公園を目指す
- 楽しく体験できる新しい乗り物の導入を進める
- 老朽化した施設・設備に関しては、新しく整備する
などと回答しています。
現在の7508号車、都営バスは、素人目に見ても状態はよくないとわかる程度には老朽化が進んでいます。公園のリニューアル後もこれらの保存車両が残るかは、正直、微妙なところでしょう。引き続きの保存を願いたいですが、7508号車などに会えるのは、いまが最後のチャンスなのかもしれません。
板橋交通公園へのアクセスは、東武東上線大山駅から徒歩約10分、地下鉄千川駅から徒歩約20分。毎週月曜(祝日の場合は直後の平日)と年末年始は休園で、保存車両は9時~15時45分の間に公開されています。