一度は後続列車に抜かされた列車が、先の駅で抜き返す……そんな珍しい光景が、7月13日に走る臨時「やまびこ」で見られるようです。
その対象となるのは、定期列車の「やまびこ」203号と、臨時列車の「やまびこ」173号。ともに東京駅発仙台駅行きの列車です。203号は東京駅を6時40分に、173号は6時48分に、それぞれ出発します。203号は白石蔵王駅を除く各駅に停まる一方、173号は小山~那須塩原間の各駅を通過。203号は、宇都宮駅で3分停車している間に、173号に一度抜かされます。
しかし、郡山駅に到着した173号は、ここでなんと14分も停車。この間に「はやぶさ」2本の通過待ちをします。さらに福島駅では、連結していた「つばさ」173号の切り離しのため、5分間停車します。郡山駅到着時点で19分もリードしていたはずの203号との差は、福島駅発車時点で4分差に。そして、173号は白石蔵王駅に10分間停車。ここで、一度抜かしていた203号に抜き返されてしまいます。203号は仙台駅に8時58分に到着する一方、173号は9時8分着。最終的に10分の差となってしまいました。
この173号自体は、繁忙期などに走る臨時列車として以前から設定されていました。2023年3月改正ダイヤまでの場合、東京駅の発車時刻は同じですが、郡山駅の停車時間は今より短く、仙台駅到着時刻は8時53分と、203号を抜いたまま先着する設定でした。
その173号が、ここまで遅くなってしまった理由は、対向列車の「やまびこ」「つばさ」124号が原因のよう。福島駅で連結する両列車は、2024年3月改正で、「つばさ」側がE8系指定の列車となり、最高速度も以前の時速275キロから時速300キロにスピードアップしました。この際、東京側の時刻を変更すると他の列車にも影響があるため、福島駅の発車時刻を遅くすることで、スピードアップ分の時間差を吸収しています。
そして、現在の福島駅は、「つばさ」が乗り入れることができる新幹線ホームが、14番線しかありません。つまり、124号が連結している間は、「つばさ」を切り離す「やまびこ」173号は福島駅に入線できないのです。そのため、173号は郡山駅の停車時間で時間調整するダイヤになったと考えられます。124号が福島駅に入線するより前に173号が同駅へ入れればよかったのですが、173号は郡山駅で「はやぶさ」に追いつかれ、これを待避する必要があるため、こちらも難しいようです。
列車の「抜き返し」は、東武スカイツリーラインや、東急~東京メトロ~西武の直通列車などでも見られます。しかしこれらの場合、種別が別々だったり、あるいは途中駅で種別を変更するために見られるもの。「やまびこ」203・173号のように、同じ種別(列車名)でこのような光景が見られるのは、少し珍しいようです。