駅名の重複を避けるために用いられるものとして、武蔵や三河などの旧国名があります。国内の駅名ではその旧国名と地名を組み合わせて漢字4文字とするものが多く、その数は500余り。数が多いことから4字中3字が同じで、しっかり見極めないと間違えてしまいそうな組合せがいくつかあります。今回はそれらの例を紹介します。
頭3字まで同じものが3駅ある例としては、徳島県の阿波川口、阿波川島、阿波川端、富山県の越中中川、越中中島、越中中村が挙げられます。いずれも仮名では「あわかわ」「えっちゅうなか」までは同じになるため、乗換案内サイトなどで駅名を検索する際には3駅が候補として出てくることに。特に注意を要する組合せと言えるでしょう。
旧国名と4字目が同じ例としては、「紀伊〇田」「越後〇沢」が4駅ずつ、「紀伊〇原」「阿波〇田」「伊豆〇川」「伊予〇田」「羽前〇沢」「陸奥〇田」が3駅ずつあります。「伊豆〇川」はいずれも伊豆急行の駅で、伊豆大川、伊豆北川、伊豆熱川はこの順序で3駅続き。「紀伊〇原」の紀伊宮原、紀伊内原、紀伊田原は紀勢本線、「伊予〇田」の伊予富田、伊予横田、伊予吉田は予讃線、「陸奥〇田」の陸奥鶴田、陸奥森田、陸奥柳田は五能線といった具合に、似た名前の駅が1つの路線に3駅というケースもあります。旧国名ではないですが、「会津〇川」も3駅組です。
読み方と表記が混同しそうな組合せもあります。三重県の伊賀上津、伊賀上野、伊勢上野、茨城県の常陸太田、常陸大宮、常陸大子がその一例。名松線の伊勢八太、伊勢八知は頭3字が同じですが、後ろ2字の読みが異なる一方で、伊勢八太に似た読みの伊勢治田が三岐鉄道にはあります。また、4字のうち中央の2字が同じという組合せが多々ある中で、その漢字が好対照なものとして、上総中川と下総中山(上と下、川と山)といった例も。間違える可能性は低いとは言え、紛らわしさではなかなかの組合せと言えそうです。
いよいよ夏本番。ローカル線の旅を計画されている方も多いことでしょう。行先候補に旧国名で始まる駅が出てきた際は今回のような例を参考にしつつ、より念入りに確認することをおすすめします。
旧国名4字 | 該当駅名(路線名) |
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阿波川○ | 阿波川口(土讃線)、阿波川島(徳島線)、阿波川端(高徳線) |
阿波○田 | 阿波池田(土讃線)、阿波富田(牟岐線)、阿波半田(徳島線) |
伊賀上○ 伊勢上○ |
伊賀上野(関西本線、伊賀鉄道伊賀線)、伊賀上津(近鉄大阪線)、伊勢上野(伊勢鉄道伊勢線) |
伊勢○○ | 伊勢八太(名松線)、伊勢治田(三岐鉄道三岐線)、伊勢八知(名松線) |
伊豆○川 | 伊豆熱川(伊豆急行)、伊豆大川(伊豆急行)、伊豆北川(伊豆急行) |
伊予○田 | 伊予富田(予讃線)、伊予横田(予讃線)、伊予吉田(予讃線) |
羽前○沢 | 羽前金沢(左沢線)、羽前沼沢(米坂線)、羽前水沢(羽越本線) |
越後○沢 | 越後岩沢(飯山線)、越後田沢(飯山線)、越後水沢(飯山線)、越後湯沢(上越新幹線、上越線) |
越中中○ | 越中中川(氷見線)、越中中島(富山地方鉄道富山港線)、越中中村(富山地方鉄道本線) |
紀伊○原 | 紀伊内原(紀勢本線)、紀伊田原(紀勢本線)、紀伊宮原(紀勢本線) |
紀伊○田 | 紀伊井田(紀勢本線)、紀伊富田(紀勢本線)、紀伊長田(和歌山線)、紀伊山田(和歌山線) |
常陸○○ | 常陸太田(水郡線 支線)、常陸大宮(水郡線)、常陸大子(水郡線) |
陸奥○田 | 陸奥鶴田(五能線)、陸奥森田(五能線)、陸奥柳田(五能線) |
(その他) | (その他の紛らわしい例) |
○総中○ | 上総中川(いすみ鉄道いすみ線)、下総中山(総武本線) |
会津○川 | 会津越川(只見線)、会津豊川(磐越西線)、会津中川(只見線) |