東海道新幹線の終点で、山陽新幹線の起点でもある新大阪駅には、私鉄は大阪メトロ御堂筋線しか乗り入れていません。現在、同駅に乗り入れる新たな私鉄路線の建設構想が進められています。
その路線を構想しているのは、阪急電鉄。大阪駅から十三駅を経由し、新大阪駅に至るという路線構想です。大阪駅は、うめきたエリアにあるJR西日本の地下ホームを使用。大阪駅でJR線と直通する計画となっています。
阪急はもともと、淡路~新大阪~十三間、新大阪~神崎川間の短絡線を建設する構想を持っていました。これらは国からの鉄道事業許可も得ていたのですが、阪急は2002年12月、新大阪~十三間を残し、鉄道事業許可の廃止を届け出ていました。残る区間も具体的な建設に向けた動きは見られませんでしたが、2017年に策定された「阪急阪神ホールディングスグループ 長期ビジョン2025」において、阪急は「新大阪連絡線」の整備について触れており、計画が消えたわけではありませんでした。
また、2017年には、大阪府、大阪市、JR西日本、南海、阪急の5者連名によるプレスリリース「なにわ筋線の整備に向けて」が発表されました。その中では、北梅田駅(現在の大阪駅うめきたエリア)から十三駅に至る「なにわ筋連絡線」の整備に向けた調査を実施すると説明されています。さらにその後も、公式発表ではありませんが、マスコミ各社が「大阪~十三~新大阪間の新線を阪急が建設する」と報じています。
なにわ筋線とは、うめきたエリアからなにわ筋を通り、JR難波駅と南海の新今宮駅を結ぶ計画の路線。現在は大阪環状線を通る「はるか」や、難波駅から発着している「ラピート」が通る計画となっています。このなにわ筋線と、阪急が構想している新線を組み合わせることで、新大阪駅から関空へのさらなるアクセス改善を図る狙いです。
ところで、阪急が各線で採用しているレール幅は、1435ミリの「標準軌」。JRや南海が採用している1067ミリの「狭軌」とは異なり、直通運転はできません。各報道によれば、阪急はなにわ筋連絡線を狭軌で建設し、なにわ筋線との直通運転を実施する計画だといいます。既存の阪急の各路線とは、十三駅で乗り換えこそできますが、線路はつながっていない「独立路線」となります。また、車両も南海と共通仕様になるとのことで、外観のマルーンや車内の緑色の座席などは阪急仕様と考えられますが、既存の阪急車とは異なる雰囲気の車両が登場しそうです。
阪急では、2031年度を予定するなにわ筋線の開業にあわせ、なにわ筋連絡線を開業させることを検討しているようです。また、かつての淡路~新大阪~十三間の建設計画に対応し、新大阪駅付近には新線建設用地や橋脚が準備されています。しかし、なにわ筋連絡線は、これらの準備設備を活かすのではなく、トンネルで新大阪駅へと乗り入れることになるようです。