スマートフォンで自撮りをしやすくするためのアイテム「自撮り棒」。最近は一時期よりも使用者が減っているようですが、それでも観光客が多い場所では、まだまだ使っている人を見かけることがあります。手持ち撮影時とは違った画角で写真を撮れるこのアイテムですが、一部の施設では、「建物や展示品を傷つけるおそれがある」として、使用を禁止しているところもあります。
そんな自撮り棒は、新幹線の駅でも使用のルールが定められている場合があります。たとえばJR西日本では、新幹線を含む同社管内のホームで、自撮り棒の使用を禁止。その理由は2つで、1つは「迷惑になりかねないから」なのですが、もう1つは「死亡事故につながるかもしれないから」という、とても重要なものです。
新幹線では、線路上にある電線(架線)から電気を得て走ります。同じように架線から電気を取って走る東京や大阪の在来線では、1500ボルトの直流の電気を使用しています。一方、仙台や札幌、金沢、福岡などの在来線では交流2万ボルト、新幹線では交流2万5000ボルトを使用しています。この交流というものが曲者で、架線に直接触れていなくても、近づいただけで感電するおそれがあるのです。もちろん、直流だから安全というわけでもなく、架線に付着物があり、それと自撮り棒が接してしまえば、同様の事故が起こりかねません。
電化区間では、残念ながら感電による事故は昔から多く、鉄道の保線や信号・電気・通信設備管理にたずさわる人たちの悲しい事故が、今も報告されています。鉄道のプロのはずの作業員ですら事故が絶えないのですから、その怖さが伝わってきます。
なお、JR西日本の広報担当者に聞くと、「ホームにおいて『長く伸ばした棒』を使用することが危険であるという認識から、その他の長尺物(釣り竿、薙刀、スキー板、弓、録音機材など)を高く掲げる行為につきましても禁止しています」とのこと。特に冬場はスキー・スノボのために新幹線を利用する方も多いでしょうが、駅では取り回しに注意が必要です。もちろん、駅や車内への自撮り棒の持ち込みは禁止されておらず、ホーム以外の安全な場所であれば、(当たり前ですが迷惑にならない範囲で)自撮り棒を使用できます。
ちなみに、全ての新幹線で自撮り棒の使用が禁止されているわけではなく、たとえばJR東海の広報担当者によると、同社の東海道新幹線では、駅のホームで自撮り棒の使用を全面禁止しているわけではないとのこと。ただし、危険性については変わらないため、使用する際は黄色い線の内側で、と担当者は説明しています。