黒部峡谷鉄道は、10月5日より、猫又駅での乗降取り扱いを実施すると発表しました。
黒部峡谷鉄道では、2024年1月1日に発生した能登半島地震により、鐘釣駅付近の橋りょうが被害を受けたことから、2024年シーズンは猫又~欅平間の運休を決めています。そのため、通常時では宇奈月~欅平間を走るトロッコ電車は、この運休期間中は途中の猫又駅での折り返し運転となっています。
暫定終着駅となっている猫又駅ですが、これまで列車が同駅に停まっても一般旅客は降りることはできず、列車はすぐに折り返していました。猫又駅はもともと、黒部川第二発電所の関係者のために設置された駅。黒部峡谷鉄道線は単線のため、平常時でもトロッコ電車が停車することはありましたが、一般旅客が乗り降りすることはできませんでした。今回の被災による猫又駅折り返しの臨時ダイヤでも、黒部峡谷鉄道は「ホーム長が旅客列車編成に対応していない」ことを理由に、一般旅客の乗降取り扱いを実施していませんでした。
同社は今回、新たにホームを設置することで、猫又駅での乗降取り扱いを開始すると発表。これまで一般旅客が使うことはできず、近隣に道路も通っていないために外部からのアクセスも困難だった、まさに秘境駅中の秘境駅での乗降が、この臨時ダイヤでの運転を機に実現することとなりました。黒部峡谷鉄道の担当者によると、既存のホームは旅客列車に対応するには短く狭いため、側線に新たなホームを設置し対応するということです。
黒部峡谷鉄道では、猫又駅での乗降取り扱い開始にあわせて、トロッコ電車のダイヤを変更します。従来ダイヤでは、猫又駅では1~3分で折り返していましたが、同駅での乗降取り扱いが始まる10月5日以降は、同駅で20分程度停車するダイヤとなります。なお、現在のダイヤでは、一般旅客は一度乗車したトロッコ電車で往復することとなっていますが、猫又駅での乗降取り扱い開始以降も、行きと帰りで同じ車両に乗車する必要があります。
なお、黒部峡谷鉄道の担当者によると、今回の猫又駅での乗降取り扱いは、猫又~欅平間の運転再開までの期間限定とのこと。橋りょうの復旧工事や全線再開のスケジュールについては現在精査中だといいますが、一般旅客が猫又駅で降りられるのは、非常にレアな体験となるようです。
余談ですが、猫又駅は駅名に「猫」の漢字が含まれる唯一の駅。他の動物は、犬山駅(名鉄犬山線など)や虎ノ門駅(東京メトロ銀座線)、熊本駅(九州新幹線など)、亀山駅(関西本線・紀勢本線)など、各地にその漢字が入る駅が存在していますが、猫は全国でもこの駅だけとなっています。