日本には100近くの空港があり、うち13の空港に「〇〇空港駅」と、空港アクセスを意識した名前の駅が設置されています。このような駅は、基本的には飛行機と鉄道の乗り換えに便利な存在。空港から都心部まで約5分で移動できる福岡空港はもちろん、都心とのアクセスが悪いと言われている成田空港や関西国際空港でも、空港の旅客ターミナルと鉄道駅の移動自体はそこまで不便ではありません。
しかし、数ある空港駅の中でも、岩手県にある花巻空港駅だけは、事情が異なります。東北本線にあるこの駅は、たしかに駅の近くに花巻空港があるのですが、近いのは滑走路で、旅客ターミナルは滑走路を挟んだ彼方先。花巻空港駅と花巻空港旅客ターミナルは、直線距離でも約2.5キロ、道路上を移動すれば最短でも約3.8キロという距離です。列車本数こそ少ないのですが、釜石線の似内駅の方が、旅客ターミナルには近い位置にあります。
花巻空港駅は、もともとは二枚橋駅と名乗っていましたが、1988年に現在の駅名に改称されています。この当時、花巻空港の旅客ターミナルは、現在の滑走路東側ではなく西側にあり、今は花巻市交流会館となっている建物を使用していました。この時点であれば、花巻空港駅から旅客ターミナルまでは実距離で約2.3キロの距離にあり、花巻空港駅が最寄り駅といえました。ただし、最寄り駅といっても距離があることに変わりはなく、少なくとも他の空港駅のように徒歩で駅と空港の間を移動するのに便利なものではありませんでした。空港の旅客ターミナルは、2009年に現在の場所に移転しています。
徒歩連絡向きとは言えない花巻空港駅ですが、現在は盛岡駅と花巻空港を結ぶバスが同駅を経由。花巻空港駅と空港を7分で結んでいます。
余談ですが、花巻空港駅とは逆に、「空港駅」と名乗らないにもかかわらず、空港アクセスに便利な駅もあります。宇部線の草江駅がそれで、山口宇部空港とは約600メートル、徒歩でも10分弱の距離に位置しています。山口宇部空港の旅客ターミナルからは、宇部線と同じ宇部新川駅や新山口駅に向かうバスが、飛行機の時間にあわせて運行されており、わざわざ歩いて駅に移動し、宇部線を使う必要性は低いのかもしれません。しかし空港側では、アクセス手段の一つとして、草江駅までの道順を案内しています。