1998年に運転を開始した寝台特急「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」は、デビューから25年以上が経過した今も、特に繁忙期はプラチナチケットとなるほどの人気が続いています。国内の寝台列車は、高価格帯のクルーズトレインを除けば、この「サンライズエクスプレス」を残すのみ。その希少性からも、高い人気があるようです。
かつて、寝台列車といえば、青い客車を用いた「ブルートレイン」のことでした。一方、サンライズエクスプレスは、当時としては非常に画期的なコンセプトで登場したことが、今も続く人気の秘訣となっているようです。
かつてのブルートレインでは、寝台は個室ではない「開放式」が主流。ベッドにカーテンはあるとはいえ、外部と完全に隔絶されたものではありませんでした。サンライズエクスプレスデビュー時には、「シングル」や「ソロ」といった個室はすでにブルートレインに存在しましたが、当時サンライズエクスプレス以外で開放式寝台よりも個室寝台の方が多かったのは、「トワイライトエクスプレス」「北斗星」など、近年の観光列車に似た性格を持った列車が中心でした。
一方、サンライズエクスプレスでは、「ノビノビ座席」(後述)を除く全てが個室寝台として登場。特にプライバシーが重視される現代において、かつてのような開放式寝台では、ここまでの人気を得ることは難しかったのではないでしょうか。
また、設備面でもう一つ特徴的なのが、ノビノビ座席です。ベッドではなくカーペット敷きの座席なのですが、昼行特急列車のリクライニングシートと異なり、横になって寝ることが可能。にもかかわらず、寝台料金は不要で、運賃と指定席特急料金のみで利用できるという、非常にリーズナブルな座席です。当時、すでに関西~九州間の一部寝台特急には、高速バスのようなリクライニングシート「レガートシート」が導入されていましたが、こちらは完全に水平な状態で寝られるものではありませんでした。
なお、青森~札幌間の寝台急行「はまなす」には、かつての青函連絡船の「雑魚寝」席をモチーフとしたという「カーペットカー」が1997年に導入されていたほか、上野~青森間のブルートレイン「はくつる」「あけぼの」でも、開放式B寝台から毛布などの提供を取りやめ、寝台料金を不要とした「ゴロンとシート」が、2002年に導入されています。
加えて、客車方式だったブルートレインに対し、電車方式を採用したことも、大きなポイントでした。このように新しいコンセプトで登場したサンライズエクスプレスでしたが、ビジネス需要もまかなえるものとして、これに続く列車は現れずじまい。結局は、同列車が定期寝台列車としては国内最後の存在となってしまいました。車両もデビューから25年超えと、決して新しくはない世代となっており、今後の行く末が注目されています。