JR東海は16日、新幹線車両によって架線電圧を維持する機能を開発したと発表した。
架線から走行用の電力を得て走る電車では、高密度なダイヤで列車を運行すると、架線電圧が低下し、列車の安定的な運行に必要な電圧が維持できなくなる。同社ではこれまで、東海道新幹線の変電所を増設したほか、地上電力設備「電力補償装置」21台を設置することで、高頻度運転に対応してきた。
今回開発した機能は、N700Sに搭載する主変換装置(直流電車の制御装置に相当する機器)のソフトウェアを改良して実現したもの。列車本数が増えた場合、架線の電流の位相が遅れ、電圧が低下する現象が発生していたが、主変換装置によって電流を制御することで電流の位相遅れを小さくし、架線電圧の低下を抑制する。車両が架線電圧を維持する仕組みは、世界初の技術だという。
今回開発した機能は、今後、N700Sの一部営業車に順次搭載。2023年2月まで、機能確認試験を実施する。この結果をふまえ、他のN700Sへも同機能の搭載を拡大するという。同社では、東海道新幹線全編成へ同機能の導入が完了すると、約1割の変電所と約半数の電力補償装置が削減できる見込みであるほか、年間約2000万kWhの電力使用量を低減でき、約3億円の電気料金と約1万トン相当のCO2排出量を削減できるとしている。