JR東日本は7日、2022年3月に発生した「福島県沖地震」を受けた地震対策の方向性について発表した。
同社ではこれまで、過去に発生した地震被害を受けた対策を導入。結果、福島県沖地震においても、建て替えや補強などの対策を施した箇所の耐震性が確認できたほか、「早期地震検知システム」による列車の迅速な停車を実現していた。一方で、揺れにより一部の構造物が損傷する被害を受けたほか、「やまびこ」223号が停車後の揺れを受けて脱線する被害を受けていた。
高架橋などでは、補強計画中の一部のラーメン橋台柱が損傷し、桁の沈下が発生した。同社では、同様の特徴的な構造形式や荷重条件を有するラーメン橋台について、2022年度より優先的に補強を進めてきたとしているが、今後さらに前倒しして補強を進めていく。
電柱では、コンクリート製のもので損傷や傾斜の被害が発生した一方で、従来より高じん性補強を施行した電柱や、鋼管柱に建て替えていた電柱については、損傷や大きな傾斜はなかったという。同社では、揺れやすい地盤の箇所や、運行頻度が高い区間など、高い整備効果が得られる箇所を優先的に選定し、今後も補強や建て替え工事を進めていくとしている。
車両では、逸脱防止性能の向上と新たな対策の導入を検討する。脱線した「やまびこ」223号では、17両編成全68軸中、60軸が脱線。2004年の「中越地震」を受けた対策で導入した「L型車両ガイド」などが機能し、48軸がレールに掛かっていたが、一方で地震の揺れを受け、12軸がレールを乗り越えていた。同社ではこれを受け、先頭車両に搭載している「排障器」と、E5系中間車両の一部に搭載している「セラミック噴射装置」について、L型ガイドと同じ高さまで延長した構造とすることで、L型ガイドと同等の効果の発揮を狙い、逸脱防止性能の向上を図る。
さらに、新たな脱線防止対策として、「地震対策左右動ダンパ」の導入を検討。地震によって発生する左右方向の大きな揺れに対して、ダンパに高い減衰力を発揮させることで、車体の揺れを抑制し、脱線しにくくする。同装置は現在、試験車両「ALFA-X」に搭載し、検証を進めているという。
同社では、今回発表した対策のうち、高架橋などと電柱の耐震補強の全体計画については、詳細が決定次第発表するとしている。