JR東日本は15日、田町駅付近で発見された「高輪築堤」の遺構に関する調査・保存方針を発表した。
高輪築堤は、1872年の日本初の鉄道開業時、当時は海上だった高輪沖に線路を通すために構築された構造物のこと。後の海上埋め立てや線路増設により埋設されていたが、2019年以降に高輪ゲートウェイ駅付近の工事によって出土。田町駅付近でも、「羽田空港アクセス線(仮称)」整備に向けた試掘調査において石積みの構造物が発見されており、JR東日本や有識者らによる「高輪築堤調査・保存等検討委員会」にて、高輪築堤であると確認されていた。
JR東日本では、委員会が示した方針をふまえ、羽田空港アクセス線の工事計画を一部で変更。下り勾配の開始地点を当初より品川駅寄りに約100メートル移動することで、東海道本線の線路下に存在すると想定される高輪築堤の一部を、現状のまま保存する。この変更により、当初計画では約160メートルが高輪築堤に支障していたところ、約100メートルを現状のままで保存できると想定しているという。
また、委員会による調査では、田町駅北側の「雑魚場架道橋」の橋台には鉄道開業時の「第5橋梁」の橋台が残存している可能性があること、同駅付近は江戸時代後期に構築された「薩摩台場」の上に位置している可能性があることが明らかになったという。委員会ではこれら調査結果をふまえ、羽田空港アクセス線に支障する範囲の遺構については、記録保存とする方針を示した。
羽田空港アクセス線は、浜松町~東京貨物ターミナル間を通る休止中の貨物線「大汐線」などを活用して整備する、羽田空港の新たなアクセス路線。現在は東海道本線・上野東京ラインと直通する「東山手ルート」の整備が進められており、開業すれば東京~羽田空港間を約18分で結ぶこととなる。同社では、高輪築堤の一部現地保存に向けて羽田空港アクセス線の線路縦断線形の計画変更を実施する予定。今後、計画変更に必要となる環境影響評価手続きや工事計画の変更手続きを、国、東京都などの関係行政と連携して進めるとしている。