東芝インフラシステムズは16日、線路内に設備を追加せずに「自動化レベルGoA2.5」に対応する自動運転システムの開発に成功したと発表した。
鉄道の運転に関する自動化レベルは、国際公共交通連合(UITP)が、目視運転の「GoA0」から完全無人自動運転の「GoA4」までの5段階に分類している。また、UITPが定めたレベルではないものとして、運転士以外の係員(添乗員)が先頭部に乗務する自動運転「GoA2.5」がある。
東芝インフラシステムズでは、長野電鉄と共同で、2021年度からGoA2.5に対応するシステムの開発を進めてきた。対応車両には、ステレオカメラやLiDAR(レーザー光による測距装置)、GNSS(汎地球測位航法衛星システム)やINU(慣性計測装置)を備えた位置計測装置、画像処理・運転支援装置を搭載。速度計などにより自車位置を高精度に測定・推定し、その位置情報を線路地図データベースと照合することで、加減速制御や停車制御を実現したという。
これまでの自動運転システムでは、位置情報を補正するための地上子などを線路内に設置する必要があり、地上子の設置・維持管理に係るコストが課題となっていた。同社が今回開発したシステムでは、基本的には車上の搭載機器で自動運転の動作が完結する。また、GNSSの精度が低下する場面においても、センサー認識用に設置する停止位置目標をカメラやLiDARで捉えることで、所定位置への停車が可能だとしている。位置補正用地上子の追加なしにGoA2.5に対応するシステムの開発完了は、業界初のことだという。
また、同社のシステムでは、線路内の支障物検知機能も備えている。ステレオカメラが支障物をとらえると、GoA2.5係員に音や光で通知。添乗員によるブレーキ操作をうながす。また、曲線区間においてもカメラによる支障物検知性能を確保するため、列車位置に連動する視界確保対応のカーブ用補助灯を、コイト電工と共同で開発している。
東芝インフラシステムズと長野電鉄による実証実験では、自動運転の停止精度は前後50センチメートル以内を実現。また、支障物の検知機能は、昼間、夜間ともに、200メートル先の支障物を検知可能であることを確認したという。
東芝インフラシステムズは、長野電鉄での自動運転の本格的な運用に向けた開発に引き続き取り組むとともに、地方鉄道・ローカル線向け自動運転システムの開発を進め、GoA2.5に適合するシステムとして実用化を目指すと説明。また、今後は支障物検知距離の拡大や、地形・天候の影響を考慮して最適なセンサーを自動的に選択する技術の開発を目指し、将来的にはGoA3以上の自動運転対応も目指すとしている。