JR東海は10日、緩み止め性能を向上させた、新たな「電車線金具」を開発したと発表した。
電車が走行するための電気を供給する架線(電車線)では、パンタグラフが直に接する「トロリ線」が、金具によって一定の高さに保たれている。この金具は締結ボルトで固定されているが、列車通過時の振動で緩みが生じることがある。そのため、金具は定期的に締結ボルトの状態などを検査する必要があるが、これは作業員が至近距離で確認する必要があるため、列車が走行しない夜間の限られた時間しか実施できないという課題があった。また、東海道新幹線では全線で40万個を超える金具があることから、検査には多大な人員と時間を要しているという。
そこでJR東海は今回、NejiLawが開発した「L/Rネジ」の締結技術と、JR東海が持つ電車線金具に関する技術を組み合わせることで、新たな金具を開発した。
L/Rネジは、右ネジと左ネジの両構造を持つボルト。右ナット(右ネジ)と左ナット(左ネジ)を組み合わせ、一体で使用することで、緩まない仕組みを実現している。振動などでナットが回転する力が加わった場合でも、ナット同士が押し合う方向に力が掛かるか、片側は締まる方向に力が掛かるため、ナットは回転しない。
今回開発した金具では、締結ボルトをL/Rネジに変更。また、緩み止めナットを薄い鋼板製にすることで、メンテナンス時に一定の力を加えれば壊れるよう設計。通常時の緩み防止と、メンテナンス時の取り外し作業の容易さを両立した。
JR東海では、小牧研究施設などでの振動試験により、この金具の実用性を確認。今回、営業線での性能確認試験を開始した。同社では、2026年12月まで、営業線での性能確認試験を実施する予定。これと並行し、JR東海のほか、三和テッキ、NejiLaw MO IP Innovation、ジェイアール東海商事を交えた4社で、量産化の検討を進め、2027年度以降の導入を目指すとしている。