近鉄グループホールディングスは、25日に開催した取締役会において、「近鉄グループ長期ビジョン2035」と「近鉄グループ中期経営計画2028」の策定を決議したと発表した。

「近鉄グループ長期ビジョン2035」は、10年後の2035年に向けて近鉄グループが取り組む重点戦略をまとめたもの。沿線の価値深化・活性化、沿線外・グローバルでの事業深化・拡張などに取り組み、国内外での暮らし・交流を支えるビジネスを柱に、持続的に価値を創造する企業グループへの進化を目指すとしている。
「近鉄グループ中期経営計画2028」は、2025年度から2028年度までを期間とする計画。「価値を創造する企業グループへの進化に向けた『新たな基盤構築』と『着実な成長』」を基本方針に掲げ、長期ビジョンの実現につながる種まきとしての施策を展開する。
近畿日本鉄道による鉄道事業の計画としては、沿線活性化と需要喚起に取り組み、収入の拡大を目指す。大阪~名古屋間の特急増発や、最終電車の繰り下げによるサービス強化、大阪・関西万博への対応、デジタルきっぷやタッチ決済乗車サービスなど、デジタル技術を活用したサービスの拡充、交流人口の拡大や定住人口の維持拡大に向けた取り組みの展開、沿線街からの旅客誘客の拡大などを掲げている。
また、「コンセプトやテーマ性の高い列車」の導入も検討。夢洲直通列車や、新型観光列車、ビスタカー更新などにより、新たな魅力発進と近鉄ファンの創出を図るとしている。
大阪・関西万博の会場となる夢洲では、2030年に統合型リゾート「大阪IR」の開業が予定されている。夢洲には、大阪メトロ中央線が乗り入れており、近鉄もけいはんな線との直通運転を実施している。しかしながら、中央線・けいはんな線とその他の近鉄各線は走行用の電気を得る方式が異なっており、通常の車両では直通運転はできない。近鉄では、大阪IRの開業を見据え、直通列車の開発・運行を検討。生駒駅を介して夢洲と近鉄沿線を直接結ぶ列車の実現を目指す。


ビスタカーは、近鉄が運行する特急型車両。2階建て車両を連結するのが特徴で、主に観光客向けに良好な眺望を提供している。2025年現在、定期特急列車に用いられるビスタカーは、1978年デビューの30000系「ビスタEX」のみとなっている。

近鉄では他にも、安全輸送を大前提とした効率的な事業体制の強化に取り組む。各種施設の更新やIT化による安全対策の推進、省力化・省人化の徹底、業務効率化の推進を図るほか、省エネ効果の高い新型一般車両の導入も拡大。新型一般車両は、2025年度から2028年度にかけて、150両程度の導入を予定する。また、さらなる収支改善に向け、ダイヤ見直しによる運営コストの削減、支線エリアにおける賑わい創出に向けた地域連携施策の推進にも取り組む。
