近畿日本鉄道は27日、内部・八王子線を「公有民営方式」に移行することで、三重県四日市市と合意したと発表した。2015年春頃をめどに新しい運営形態でスタートを切る。
四日市市内を走る内部(うつべ)線と八王子線は、近鉄の支線。ここ10年ほど毎年3億円弱の赤字が続き、同社の経営を圧迫していた。年間利用者数は、1970年度の722万人からほぼ半減し、2011年度は363万人に。1日の利用者は約1万人と低迷しており、電車のワンマン化や駅の無人化などの経費削減策も限界にきていた。昨年8月、同社は内部・八王子線のBRT(バス高速輸送システム)への転換を四日市市に提案したが、市は鉄道存続の考えを維持。両者で協議が続いていた。
協議の中で、鉄道施設の保有事業者と列車の運行事業者を分ける上下分離方式の「公有民営方式」が浮上。同方式への移行を前提に協議し、今年8月からの交渉期間延長を経て、今回の合意に至った。公有民営方式は、国が2008年度に導入した制度で、車両や施設の維持費などの3分の1を国が地方自治体などに補助する。ただし、大手の鉄道会社は対象外のため、新会社を設立し、運行を担うことになる。2015年春以降、四日市市が鉄道施設と車両を所有する第3種鉄道事業者に、新会社が第2種鉄道事業者となり、市から施設と車両を借り受けて鉄道事業を運営する。赤字の補てんや設備投資など、市の負担は移行後の10年間で十数億円に上ると試算している。
内部線は、近鉄四日市~内部間(5.7キロ)、八王子線は日永~西日野間(1.3キロ)の路線で、ともに軌間762ミリの特殊狭軌。ナローゲージと呼ばれる同軌道の路線は他に、三岐鉄道北勢線と黒部峡谷鉄道で使われている。