西武鉄道は2月14日、新型特急車両001系「Laview(ラビュー)」のメディア向け内覧会・試乗会を開催しました。独特のデザインや大きな窓が話題となっているLaview。その内装や乗り心地はどのようになっているのでしょうか。鉄道コムスタッフがリポートします。
乗車してまず驚いたのが、デッキの広さ。Laviewをデザインした妹島和世氏は、このデッキを車内へいざなうエントランスと位置付け、あたたかみのある黄色基調の壁や、人造大理石を使用した床など、落ち着きと高級感を与えるデザインとしたそうです。
客室内も、従来車の10000系「ニューレッドアロー」より明るい印象を抱きます。特徴ある大きな窓のほかに、白基調の壁や天井が、開放感を与えてくれます。座席上の荷棚にガラスを採用していることも、開放感を与える理由の一つでしょうか。
黄色が目立つリクライニングシートは、腰掛けてみると座面が厚めでふかふか。座り心地は上々です。背もたれは若干浅いようですが、池袋~秩父間の乗車時間ならば全く問題ないレベルです。背もたれの可動式枕はかなり厚め。グリーン車と同等以上ではないでしょうか。シートピッチ(座席間隔)はニューレッドアローと同等レベルのようですが、ニューレッドアローでは機器類が設置されていた座席下は空洞となっているため、これまで以上に足を伸ばすことができました。
着席して窓の外を見ると、従来の鉄道車両ではあり得なかった展望が目に飛び込んできました。窓の下底は着座時の膝より下。子どもが立っていても目の前に窓がある低さです。試乗会では小手指~池袋間と住宅地を走るコースでしたが、飯能~秩父間の正丸峠を越える区間では、すばらしい眺望を得られるのではないでしょうか。
一方で、大きな窓と引き換えに消えてしまったのが、窓下に小物を置くスペース。ただしその代わりに、Laviewでは肘掛けに小型のインアームテーブルが設置されています。お弁当を広げるには少し心もとないサイズですが、座席を向かい合わせにした際にもテーブルを使える点は嬉しいです。
このほか、インアームテーブル下にはコンセントが各座席に1つずつ設置されています。車内ではWi-Fiサービスも提供されているので、行楽時のみならず、通勤通学時のデジタル環境確保にも十分です。
座席周りで気になる点は2つ。まず1つは、肘掛けが座面の両側に固定されていること。筆者は標準体型のため問題ないのですが、肥満体型の人では、肘掛けの間に体を押し込むことになるかもしれません。そして2つ目は、座席回転用のバーが小さいこと。このサイズのために踏みづらく、椅子の向きを変える際にちょっとした負担になりそうです。座席を向かい合わせにする際はもちろん、池袋~西武秩父間の特急「ちちぶ」では飯能駅で進行方向が変わるため、特にこの点がネックになりそうです。
Laviewでは、トイレやパウダールームの快適性向上にも重きが置かれています。飯能方先頭車の1号車に設置された多目的トイレは、車いすでもそのまま入れる広さをもった大きなスペースを有しています。また、中間車両の5号車には、男女共用トイレ、男性用小便器のほかに、女性専用のトイレも設置。さらに、パウダールームもニューレッドアローより拡大され、化粧のしやすい拡大鏡や姿見を設置しています。従来車よりも格段に快適になったスペースで、心遣いを隅々まで行き届かせる設計となっています。
先頭車両に移動してみましょう。列車の前面展望といえば、鉄道好きはもちろん、そうでない人でも楽しめるものです。Laviewでは、両先頭車の乗務員室直後はガラス張りとなっており、運転士の背後から進行方向の眺望を楽しめます。もちろん、小田急ロマンスカーや名鉄の「パノラマSuper」のような幅広い視界があるわけではなく、Laviewの先頭形状ゆえに、左右の視界は限られてしまいます。しかしながら、ニューレッドアローでは前面展望は全く考慮されていなかったことを考えると、嬉しいサービス改善と言えそうです。また、車内通路上に設置された23インチの大型車内ビジョンにて前面展望映像が放映されるので、先頭車以外の車両でも進行方向の眺望を楽しめます。
列車の乗車時に気になることといえば走行音ですが、これはニューレッドアローよりも格段に静か。1編成を除いて旧型車の足回りを流用したニューレッドアローでは、豪快な走行音が車内に響いていました。一方で、Laviewではモーターを搭載している電動車でもかなり静寂。試乗時のスピードが比較的遅かったこともありますが、ポイント通過時などを除き、ほとんどの場面で軽やかな走行音がわずかに聞こえる程度でした。音鉄の方には物足りないかもしれませんが、かなり静寂性に配慮していることがうかがえます。
もう一つ、車内を巡ってみて気がついたのが、自動販売機が設置されていないこと。昨今は列車の乗車前に駅で飲食物を購入する旅客が増えているといい、JRでは車内販売の見直しが進められています。西武鉄道もこれに倣い、ニューレッドアローでは設置していた自動販売機のサービスを見送ったのでは……?と想像しました。
しかしながら自動販売機が設置されない理由は、西武鉄道の担当者によると、販売数減少が原因ではないとのこと。Laviewのデザインコンセプトには、「みんながくつろげるリビングのような特急」というものがあります。デザインを担当した建築家の妹島和世氏は、車内を家の中のようにくつろげるような設計としています。この「リビングのような」というコンセプトがある中で、自動販売機を設置することはデザイン上マッチしないということで、今回は設置を見送ったということです。
30分ほどの短い時間の試乗でしたが、Laviewの完成度は高く、とても魅力的な特急車両として仕上がっていました。現行のニューレッドアローに代わる新型車両として、また小田急のロマンスカー、京成のスカイライナーのような西武のフラッグシップトレインとして、これからの活躍に期待です。