鉄道の歴史を語るアイテムとして、大きな存在と言える記念きっぷ。約30年にわたる平成の間にもさまざまなきっぷ類が発売されました。
数としては十分ではありませんが、筆者の手持ちの中からピックアップし、仕分けてみたところ、平成ならではの特徴のようなものが見えてきました。大まかには、数字並びに始まり、磁気式が登場し、路線や駅の開業とともにさまざまな趣向のものが発売され、といったものです。
今回は、記念きっぷを通して、平成時代を振り返ってみます。
平成初期のきっぷ
平成から令和への改元では、5月1日を中心に各社局で記念きっぷが発売されます。昭和から平成の際は、改元への準備期間がなかったこと、時世のムードが変わるまで月日を要したこともあり、改元を記念するタイプのものは身近な範囲ではなかったと記憶しています。平成2年(1990年)になると、即位の礼に関する行事が設けられ、同年11月12日には「即位礼正殿の儀」が行われました。その記念に発売された一つに、写真の「天皇陛下御即位記念乗車券」があります。京王帝都電鉄(当時)発売のもので、新宿駅発の乗車券3枚と、台紙、封筒のセットで500円。有効期間は同年末まででした。
改元記念ではありませんが、平成元年発売の記念きっぷは少なからずありました。ここでは、中野駅の開業100周年記念入場券を紹介します。お手製の台紙に当時の趣が見てとれるうえ、中野駅の電話番号が03に続いて3桁というところにも歴史を感じます。同年4月9日に開催された記念イベントの会場(中野駅付近の公園)で購入しました。
きっぷ券面の日付で和暦を使う場合、改元後の年数が浅い間は年月日を使った数字並びがしやすいということで、平成初期は「2.2.2」「2.3.4」「3.3.3」といったタイプの記念きっぷが毎年のように発売されました。
小田急電鉄では「日付けシリーズ」として、その年月日になると各駅で発売されていました。台紙は共通で、発売駅の入場券をセットする様式でした。
京成電鉄では、「777記念乗車券」というのが発売されました。京成上野→京成金町間で運転していた「第777列車」が台紙にデザインされ、同列車の運転区間にあわせた乗車券3枚のセットでした。
名古屋鉄道の「888記念きっぷ」は、同社の「八」がつく駅3つと、「8」がつく形式名の車両3タイプをデザインしたもの。懐かしい顔ぶれの車両が並び、違う意味でも保存版と言えます。駅の方は八神駅、八百津駅が5年後の平成13年(2001年)9月末をもって営業終了。こちらも歴史を感じます。2つ減ってしまった「八」の駅ですが、現時点でまだ3つあります。次の888、楽しみです。
JR西日本では、「1.11.11」から「11.11.11」までの歴代記念台紙をデザインした「22.2.2」の入場券が発売されました。入場券を買うと共通の台紙がついてくるというスタイルでしたが、同じ数字が並ぶ形での記念きっぷ発売は、今回の改元により、この次の「22.2.22」が最後となりました。
数字並びの記念きっぷ、令和時代でも継承されることでしょう。
磁気式カード、1日乗車券など
交通系ICカードの登場で、その役割が薄れつつある磁気式カード。自動改札機にそのまま挿入できるタイプのものができた時は画期的に思えたものですが、今では過去の話になりました。
磁気式全盛とも言える時期には、記念カードと呼べるものが各社局から発売。JR東日本の「イオカード」、営団(当時)・都営の両地下鉄共通の「SFメトロカード」、都営地下鉄専用(当時)の「Tカード」などの記念版が手元にありました。パスネットのスタート、営団地下鉄から東京メトロへの変遷もカードから見てとることができました。
対象路線が乗り放題になる1日乗車券などの記念版も数多く発売されましたが、紙式に加え、磁気式が登場するようになったことも平成時代の特徴と言えるでしょう。
平成は、紙、磁気式、ICカードと、きっぷの進化を体感する時代でもあったと、記念きっぷを見ながら思うのでした。
路線延伸など
記念きっぷは、新会社設立に伴う新規開業のほか、路線の延伸や新駅の開業でも発売されます。それらがメインと言ってもいいかもしれません。
1991年3月31日の北総開発鉄道(当時)新鎌ヶ谷~京成高砂間の延伸開業では、北総・公団線、京成線、都営浅草線、京浜急行線の相互乗り入れが始まり、その記念乗車券が発売されました。
京成や京急では、空港アクセスのための延伸もあり、それらの記念きっぷが発売。両社のほかにも、各地で空港直結の路線や駅の整備が進み、記念きっぷの発売も充実していくことになります。これも平成時代の一つの特徴と言えるでしょう。
令和時代も、鉄道の変化は続き、その変化の数だけ記念きっぷも増えていくことでしょう。歴史の証しともなる記念きっぷ。引き続き、追いかけていきます。