平成の約30年で、大きな進化を遂げた鉄道車両。令和では、どのような動きがあるのでしょうか。
新幹線
新幹線では、さらなる高速化に向けた取り組みが進められます。JR東海は、次期新幹線車両「N700S」の量産車を、2020年度から営業運転に投入予定。量産車に先立って、2018年に落成したN700Sの確認試験車では、最高時速360キロを目指す速度向上試験を、2019年5月から6月にかけて実施する計画です。東海道新幹線はカーブが多く、高速走行に適した路線ではありませんが、比較的直線が多い区間や、乗り入れ先の山陽新幹線などでの営業列車速度向上、あるいは輸出時の性能アピールとして、重要な試験です。一方のJR東日本も、2019年5月に新幹線試験車両「ALFA-X」を導入予定。将来の最高時速360キロでの営業運転実現を目指し、各種試験が進められます。
車輪の無い鉄道も見逃せません。JR東海が建設を進めるリニア中央新幹線は、2027年に品川~名古屋間が開業予定。各所で工事が進められているほか、並行して車両技術の向上に向けた試験も実施しています。2020年には、カラーリングや前照灯の位置などを変更した、改良型の試験車両が落成予定。車内用の電気をガスタービン発電機から誘導集電方式と変更し、ますます営業運転時に目指す仕様に近づくこととなります。
在来線
在来線でも、新技術の導入が進められます。
JR東海は、特急「ひだ」「南紀」で使用しているキハ85系の置き換えを目的として、ハイブリッド式の特急型車両を導入する計画です。ハイブリッドシステムを採用した鉄道車両は、JR東日本のHB-E200系のような一般型車両のほか、JR西日本のクルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」での採用例はありますが、特急型としては日本初。試験走行車は2019年末に導入、量産車は2022年度に営業運転開始の予定です。
ハイブリッド方式ではない気動車も導入されます。JR北海道とJR東日本は、それぞれ電気式気動車H100形「DECMO」、GV-E400系を試験中。蓄電池を搭載するハイブリッド車両とは異なり、ディーゼルエンジンと発電機、制御装置とモーターを直結した車両です。蓄電池を搭載しないため、重量削減やコスト低減などのメリットがある車両です。GV-E400系は2019年度中、H100形も2020年春に営業運転を開始する予定で、それぞれキハ40系などの老朽化した車両を置き換えます。
目に付かない技術面の革新も進められます。先に紹介したJR東日本の新幹線試験車両ALFA-Xでは、速度向上に加えて、車両の状態データを運輸司令やメンテナンス基地などに送信し、メンテナンスに役立てる技術が試験されます。1980年頃から導入が進められた、機器類をモニタリングするモニタ装置は、コンピューターなどの技術革新により、平成の約30年で大幅に進化を遂げています。山手線のE235系で実用化された「INTEROS」では、車両の加減速やドアの開閉といった制御部分の伝送、車両基地からの出庫時における自動点検機能などに加え、ALFA-Xと同様に車両データを地上に送信する機能があります。このINTEROSはJR東日本のほか、東急電鉄や都営地下鉄が採用。今後他の事業者にも同様のシステムが広がることで、メンテナンス面の進化が見込まれます。
地上設備のメンテナンスにも、車両の進化が関わることとなります。E235系を始めとする首都圏のJR車両では、一部編成に「線路設備モニタリング装置」を搭載しています。レールや枕木、架線の状態を、営業運転と同時に確認することができるもので、JR東日本では2020年度末までに50の路線で導入する計画です。また、JR東海もN700Sに同様の装置を搭載する予定。将来的には、「ドクターイエロー」のような専用の試験車両が不要となるのかもしれません。
このような新技術の導入が進められる一方で、かつての主力車両を改造した列車も登場します。
JR西日本は、2020年春に「WEST EXPRESS 銀河」の営業運転を開始する予定です。WEST EXPRESS 銀河は、117系を改造した車両を用いる長距離列車。寝台列車のような「ノビノビ座席」、フラットなスペースとなる「プレミアルーム」や「ファミリーキャビン」が設けられます。
思い起こせば、昭和の末期から平成の初期にかけても、既存の車両を改造したジョイフルトレインが数多く誕生しました。新技術の導入も、既存車両の改造も、元号や時代にはとらわれない、鉄道車両に共通するテーマなのでしょう。