東京急行電鉄の軌道線として、東京都世田谷区内を走る世田谷線。三軒茶屋~下高井戸間の約5キロを結んでいます。
その世田谷線を走るのは、300系電車。2両編成10本が在籍し、そのうちの1本が「幸福の招き猫電車」として運行中です。
今回の幸福の招き猫電車は2代目。初代は2017年9月から2018年10月までの1年余り運転されました。
再度登場することになった幸福の招き猫電車。その概要とともに、復活の背景について紹介します。
幸福の招き猫電車、2代目登場
幸福の招き猫電車は、世田谷線宮の坂駅付近にある豪徳寺ゆかりの「招き猫」をモチーフにした車両で、300系308編成が使われています。外観で目をひくのは、先頭部の猫顔、側面の招き猫ラッピング。車内も招き猫の趣向が凝らされ、編成全体が「見て、乗って楽しめる」デザインになっています。吊り革はすべて「招きポーズ」。床面には、猫の足跡が施されていて、窓の一部にも招き猫がデザインされています。
2代目となる幸福の招き猫電車は、現在の路線である「世田谷線」がスタートしてまる50年という節目を記念して登場しました。世田谷線は、玉川電気鉄道の支線(下高井戸線)が前身。1969年5月10日をもって、玉川電気鉄道玉川線(渋谷~玉川間)などが廃止される一方で、支線の方を独立する形で存続させたのが世田谷線です。そのスタートは、同年5月11日。2019年で世田谷線開業50周年を迎え、翌日の5月12日に、幸福の招き猫電車が復活の運びとなりました。初代も好評でしたが、初代デザインを一部変更しての再登場。運転終了時期は未定とのことです。
復活初日の5月12日は、7時26分から20時30分まで半日以上運転。駅や沿道では、カメラを向ける人の姿が多く見られたほか、招き猫電車が来るのを待って乗り込む乗客などで車内もにぎわいを見せました。
世田谷線50周年を記念して
世田谷線50周年記念企画は、「幸福の招き猫電車」のほかにも行われました。記念日にあたる5月11日と、その翌日の12日には、「世田谷線フェス」が沿線各所で開催。上町車庫では、子ども向けの乗務員体験などが開かれ、体験した車両の前で記念撮影する親子連れの姿が見られました。三軒茶屋駅前での「世田谷線沿線マルシェ」では、世田谷線グッズなどのブース出店もありました。
また、同イベント開催にあわせ、1日乗車券「世田谷線散策きっぷ」のリストバンドタイプの発売もありました。当日有効のリストバンドの提示で、イベント会場や協力店舗などで、割引やノベルティなどの特典が受けられるという設定もあり、記念企画ならではの取り組みとなりました。
世田谷線三軒茶屋駅に隣接するキャロットタワーでは、3階のギャラリーで「世田谷線にのって展」が、記念企画の一環として開催。4月27日~5月26日の1か月間、会期中無休で開かれ、世田谷線の年表、沿線の見どころマップ、引退車両の部品などが展示されました。「旧型電車最後の日」「消え行く玉電」と題する映像の放映もありました。
世田谷線の特徴、車両など
東京都内を走る軌道線の一つ、東急世田谷線。全長5キロ、駅数10の短小路線ですが、1日の平均乗車人数は5万人を越え、地域の足として確固とした役割を担っています。
世田谷線としての半世紀の歴史の中で走った車両は、デハ70形、デハ80形、デハ150形があります。そのうちデハ150形の最後の編成が営業運転を終えたのが2001年2月でした。旧型車両(当時)が退いたのと引き換えに、1999年から順次導入されていたデハ300系への統一が図られ、ホームの高さを車両床面にあわせることも可能に。そのためのホームのかさ上げ工事は2月10日の終電後に一斉に行われ、同11日の始発前に全駅で完工しました。車両とホームとの段差が解消され、今日に至ります。
世田谷線は、道路と併用する区間はなく、専用軌道を走ります。独特な架線方式、信号機による踏切など、設備面での見どころのほか、かつての車両が保存されているスポットもあり、鉄道ファンが楽しめる要素を持った路線でもあります。車両のカラーバリエーションもまた注目ポイントと言えるでしょう。
50年は大きな節目であるとともに、一つの通過点とも言えます。100年、200年と歴史を刻み続けてほしいと思います。