夏休み、お盆の時期が近づいてきました。鉄道を使っての旅行や帰省を予定している方も多いことでしょう。
鉄道を利用した旅では、きっぷの予約や手配で時間や労力を要する面があります。インターネットで予約したり、指定席券売機で買ったりと、窓口以外の選択肢や利用も増えていますが、出発日が近づけば、「みどりの窓口」などに長い行列ができる光景は今も昔も変わりません。2019年は8月10日から長期休暇という人が多ければ、その1か月前の7月10日に指定席の予約ラッシュが始まり、窓口も混み合います。長距離を移動する手段として、新幹線や特急列車を使うとなれば指定席は欠かせない訳ですが、そうしたラッシュと向き合わざるを得なくなるのが実情です。今回は、そのラッシュをできるだけ回避し、より円滑に指定席を押さえる方法などをご紹介します。
おすすめは「事前申込」
日程や乗る列車が決まっていて、インターネットを使った予約などに慣れている(またはすでに専用サイトの会員登録が済んでいる)場合、新幹線や在来線特急などを事前に予約できるサービスを使うのがおすすめです。JRの予約サイトでは、指定席発売開始日よりもさらに1週間前に予約ができるようになっています。この「事前申込サービス」は確実に席がとれる保証はない旨、おことわりがありますが、やっておいて損はないサービスと言えます。とれればそれで済みますし、仮にとれなかった場合は、通常通り出発日1か月前に改めて予約をすればいいことになります。チャンスを増やせるという点でも利用したいサービスです。事前申込がとれないことを見越して、発売開始日時(10:00)に窓口に出向いたり、同時刻に通常のネット予約を試したりというのも可能です。
事前申込の結果を待っている間に予定が変わった場合は、その予約をキャンセルすることもできます。逆に事前申込が通った後に、全面的にキャンセルする場合は、所定の手数料がかかります。列車の変更は、発券前であれば可能です。
窓口に並ばずに済むネット予約
JRのインターネット予約サイトは、JR東日本の「えきねっと」、JR西日本の「e5489」、JR東海の「東海道新幹線ネット予約&チケットレス乗車サービス」などがあります。いずれも会員登録(無料)をすれば利用でき、空席状況のチェック、座席の予約をはじめ、座席の位置の指定も可能。ただし新幹線に関しては、えきねっとは全国をカバーしているのに対し、e5489では東海道、山陽、九州、北陸の各新幹線が対象になっているなど、違いがあります。
出発日の1か月前の10時以降に、これら各サイトから予約を入れることができます。窓口に行く手間は省けますが、利用の多い時期での1か月前では、窓口同様、アクセスが集中し、ログインしづらい状況になる場合もあるので注意が必要です。その点でも事前申込がおすすめです。
予約が成立したら、各社エリアを中心とした指定の券売機や窓口などで発券します。券は磁気式のきっぷということになりますが、発券を要しないサービスもあります。JR東海、JR西日本が提供する「スマートEX」というサービスでは、登録したICカードやスマートフォンがきっぷ代わり。利用する新幹線の各駅相互間で、ICカードやスマートフォンを自動改札にタッチすればOKという仕掛けです。スマートフォン、または、専用のICカードが利用できる「エクスプレス予約」というサービスもあります。
なお、空席状況を手早く調べたい場合は、「JR CYBER STATION」を使うのも便利です。
旅行会社を使う手も
窓口もインターネットも大変そうだという向きには、旅行会社を使う手もあります。おすすめは、新幹線と宿泊がセットになった旅行商品。通常の新幹線の往復分でホテル代相当が込みといった感覚で、おトクです。きっぷを予約する手間が省けるというのも大きなメリットでしょう。きっぷなどは郵送してもらうこともできるので便利です。ただし、需要が多い時間帯の列車には加算料金が設定されているケースがあるため、十分な検討が必要です。
1泊分だけ指定のホテルや旅館を組み合わせれば、ほかの日はどこに泊まってもOKというプランを扱う旅行会社もあります。帰省先で宿泊するのがメインの場合でも使えるので、うまく日程を組んで活用したいものです。
こうした旅行商品は、窓口でもインターネットでも手配できます。組み合わせや行程が複雑なケースでは、窓口の方が手っ取り早いでしょう。
新幹線をリーズナブルに
東海道・山陽新幹線では、JR東海、JR西日本のネット予約サービスとして、「スマートEX」、「エクスプレス予約」の2種類があり、いずれも「スマートEXサービス」、「EX予約サービス」、「EX早特」といった割引サービスが設定されています。両方とも会員制のサービスですが、スマートEXは無料で、エクスプレス予約は年間1000円(税別)が必要です。両者の違いはその割引の幅で、エクスプレス予約の各種サービスの方がよりリーズナブルな設定になっています。なお、会員登録ができるは、どちらか一方のみです。
北海道新幹線と、JR東日本エリアの各新幹線では、「えきねっとトクだ値」や「お先にトクだ値」の設定があり、乗車券、特急券ともに一定の割引額で利用できます。50パーセント割引の「お先にトクだ値スペシャル」が発売されることもあります。ネット限定での割引サービスは、九州新幹線でも各種設定があります。
新幹線で片道601キロ以上を移動する場合は、往復割引を使うのも手です。東京駅起点で、東海道・山陽新幹線方面では西明石駅(612.3キロ)以遠、東北・北海道新幹線方面では二戸駅(601キロ)以遠で適用され、運賃(乗車券部分)が10パーセント引きになります。特急券部分は割引対象外です。往復割引は、EX予約サービスでも適用され、より格安になります。
このほか、新幹線回数券を利用する方法もあります。普通車指定席用、グリーン車用がどの新幹線でも設定され、6枚綴りが基本。有効期間は3か月です。一部区間では設定がなかったり、ゴールデンウィーク、年末年始、夏は8月11日~20日が利用できなかったりという制限はありますが、条件が合えば活用したいきっぷです。みどりの窓口のほか、特定の券売機で購入できます。チケットショップや個人間取引ができるサイトではバラで買うことも可能です。
新幹線回数券は、インターネットで予約した分を発券する際にも使えます。ただし、ネット予約時に乗車券の同時購入をしないことが条件。クレジットでの決済額は表示されますが、実際の請求は発券時になるため、回数券で発券するタイミングでクレジット決済は解除されるという仕掛けです。
東海道新幹線(東京~新大阪間)かつ、「こだま」に限った条件では、「ぷらっとこだま」という旅行商品もあります。移動距離が長くなるほど、「のぞみ」、「ひかり」との時間に差がつきますが、急がない旅であればおすすめです。
乗車券と特急券を分けたプランニング
単純な往復ではなく、帰省先や目的地で「途中下車」する前提で旅程を組むのも有効です。途中下車は乗車券の有効区間において、駅の外に出て、再度入場することができる制度で、経路の順で101キロを超えた駅から可能になります。加えて、JRでは一部の特例を除き、重複がない形で経路を設定すれば、距離が長くなるほどキロあたりの運賃が安価になります。この制度をうまく使って、一筆書きになるような行程を組むことで、乗車券代を安くできるできるのです。経路の重複がなければ、起点と終点は同じ駅でもOK。距離が長くなるほど、有効日数が増えるのもメリットです。
都区内を基準にした場合、次のようなルートが設定でき、いずれも一部で新幹線を使うことができます。
東京~名古屋~高山~富山~東京 東京~米原~福井~金沢~東京
乗車券部分を安くしたうえで、必要に応じて特急券を足し、全体的に安くするというのがポイントです。新幹線(九州新幹線を除く)と特急列車を乗り継ぐ場合は、特急列車の方の特急料金が半額になる乗継割引も適用されます。なお、経路の途中でJR以外の路線を組み込む「通過連絡運輸」が設定できる場合もあり、一例として、東京(都区内)~京都~福知山~宮津~西舞鶴~敦賀~金沢~東京(都区内)といった乗車券を買うこともできます。福知山~宮津~西舞鶴間は京都丹後鉄道ですが、距離は通算され、全体で安上がりに。この場合の大人運賃は1万5990円で、東京~京都間の往復運賃1万6420円よりも安くなります。東京~金沢間の往復運賃1万4680円と比べても1310円の差です。日程に余裕があり、京都、金沢をはじめ、北近畿方面にも足を延ばしたいといったプランでは、大いに重宝するでしょう。
距離がそれほど長くない旅でも、工夫や注意が必要な場合があります。例として、東京近郊区間内(黒磯~熱海間、銚子~松本間など)での移動が挙げられます。同区間内を起点・終点とする乗車券の場合、有効日数は1日限り、途中下車も不可の扱いになってしまう点、要注意です。この場合の工夫としては、東京近郊区間を外れた駅を片方だけでも組み入れること。熱海駅の一つ西隣、函南駅までの乗車券にすれば、より使い勝手のいい乗車券になるのです。101キロ以遠の駅での途中下車が可能になり、有効日数も距離に応じて延ばすことができます。運賃は、黒磯~熱海間、黒磯~函南間ともに4750円です。
仙台、新潟、大阪、福岡の各近郊区間でも同じことが言えます。途中下車ができるような区間を設定して買うといいでしょう。