11月30日、神奈川県を走る相鉄線からJR線に直通する「相鉄・JR直通線」が開業します。これまで相鉄線ユーザーが都心へ出るには乗り換えが必要でしたが、この直通線の開業で、渋谷・新宿方面へ乗り換え無しでアクセスできるようになります。
直通線の開業にあわせて、定期券の経路を変えたいという方も多いかもしれません。きっぷの買い方や精算が必要となる条件、そのほか開業にあわせて変わることをご紹介します。
この記事のポイント
・直通線経由の定期券は11月30日から発売。経路を変える場合は、これまでの定期券は無手数料で払い戻し可能。
・一部の定期券では、精算時に注意が必要。紙のきっぷでの直通線乗車は精算が必須。
・女性専用車は海老名寄りの先頭車に変更。設定時間は朝ラッシュ時のみに。
・直通線の車内で忘れ物をすると、遠い駅まで取りに行くことになる可能性が。
定期券はどう買う?
相鉄・JR直通線で通勤・通学する予定だ、という方も多いのではないでしょうか。
この直通線経由の定期券は、開業日の11月30日より発売となります。発売可能エリアは、相鉄線各駅からJR線内各駅までのほか、JR線経由で東京メトロ、都営地下鉄、りんかい線、東京モノレール、ゆりかもめの各線までとなります。
通勤・通学ルートを直通線経由に切り替えたいけれど、定期券の有効期限がまだ残っている、という場合はどうすればいいのでしょうか。
相鉄やJR東日本は開業時の特例として、11月30日から12月30日までの間、定期券および回数券のルートを、新駅である「羽沢横浜国大駅」経由、または同駅発着に変更する場合、無手数料で払い戻す取り扱いを実施します。本来は手数料が掛かり、払い戻しにも制限がある定期券・回数券ですが、この特例期間中は新たな定期券・回数券と同時購入の場合に限り、旧券を日割り計算で払い戻してもらえます。
先述のとおり、直通線経由の定期券は、開業前に購入することはできません。発売当日や開業後初の平日となる12月2日には、定期券の購入者やルート変更希望者によって、定期券発売所の混雑が予想されます。通勤・通学ルートを直通線経由に切り替えたい場合は、余裕をもった行動が必要です。なお、通勤定期券の購入で、かつ払い戻しの必要も無い場合は、各駅の自動券売機の利用がオススメです。
気をつけたい定期券の精算方法
「横浜駅経由の定期券だけど、直通列車に乗れたし、今日は羽沢横浜国大駅経由にしよう」、あるいは「直通線経由の定期券を持っているけど、今日は横浜駅経由で帰ろう」となることがあるかもしれません。この場合、どちらも定期券区間外の乗車となるため、着駅での精算が必要となります。
前者の、横浜駅経由の定期券で直通線に乗る場合は、少々複雑です。
運賃計算上、東海道線と直通線の分岐点は鶴見駅に設定されています。そのため、直通線に乗車する際は、鶴見~羽沢横浜国大駅経由~西谷間の345円(IC運賃の場合)を精算する必要があります。しかし、11月の開業時点では、自動改札機はこの経路の自動精算に対応していません。SuicaやPASMOの定期券でチャージ額が十分にある場合でも、到着駅でタッチアンドゴーで出ることができない状態です。そのため、自動精算機などでの処理が必要となってしまいます。
なお、この問題はPASMO・Suica定期券のみ発生する問題なので、定期券区間を含まない交通系ICカードを利用する場合には、他の路線と同じようにタッチアンドゴーで利用できます。また、定期券の精算の場合でも、2020年春以降は自動改札機で精算できるようになる予定です。
一方、直通線経由の定期券により横浜駅経由で移動する場合には、鶴見駅~JR横浜駅間と、相鉄横浜駅~西谷駅間の運賃、計346円(IC運賃の場合)が必要となります。この場合は、従来どおり降車駅でチャージ金額から自動精算されるため、利用上の問題はありません。
紙のきっぷは注意が必要
定期券ではなく、SuicaやPASMO、紙のきっぷで利用する場合はどうでしょうか。
SuicaやPASMOの場合は、他の路線と同様に、タッチアンドゴーで利用できます。一方で、相鉄線内から直通線を経由して新宿方面までの紙のきっぷは発売されません。相鉄、JR共に羽沢横浜国大駅までの乗車券しか発売しないため、紙のきっぷにて、発駅から羽沢横浜国大駅をまたぐ経路で直通線に乗車する場合は、着駅での精算が必要となります。
なお、紙のきっぷの場合、新宿~羽沢横浜国大間は570円で、二俣川駅まで乗車した場合は210円の精算、大和駅まで乗り越した場合は270円の精算となります。
なお、平沼橋~天王町間の各駅では相鉄線とJR線の連絡きっぷが発売されていますが、これは横浜駅経由の乗車券。こちらの連絡きっぷで直通線に乗車することはできません。
ちなみに、二俣川駅から渋谷駅までのIC運賃は、横浜駅経由で595円、直通線経由で769円となっており、横浜駅経由の方が安い設定となっています。これは、JRが横浜~渋谷間に「特定運賃」という割安な運賃を設定していることによるもの。直通線経由は特定運賃の設定ルート外になるため、200円弱高くなってしまいます。なお、二俣川駅から新宿駅までのIC運賃は、横浜駅経由で760円、直通線経由で769円と、ほぼ同額の設定です。
直通で変わることさまざま
JRとの直通が始まる相鉄では、ダイヤや行先以外にも、いくつかの変更点があります。
まずは、平日に設定される女性専用車。これまでは編成中間の4号車に設定されていましたが、12月2日からは湘南台・海老名寄りの先頭車(10両編成は10号車、8両編成は8号車)に変わります。海老名駅で急いで近い車両に乗ったら、そこは女性専用車だった……なんて事態が起こるかもしれません。
女性専用車の設定時間も変更されます。これまでは横浜駅到着時刻が7:00~9:30の上り全列車、横浜駅18:00発以降の下り全列車が設定対象でしたが、12月2日からは、横浜駅到着時刻が7:00~9:00の上り全列車、大崎駅到着時刻が7:20~9:30の上り全列車が対象に。下り列車の女性専用車は、混雑緩和などの理由により、設定が無くなります。
続いて、車内での忘れ物です。相鉄線内での忘れ物は、駅や車内で拾得された翌日以降、二俣川駅構内の「お忘れ物センター」に集約されます。しかし、直通列車だった場合はそうとは限りません。JR線内で拾得された場合は、JR東日本の「お忘れ物承り所」などに集約されます。
JR線内で発見された場合、忘れ物を直接受け取るためには、東京駅や上野駅、さらには大宮駅などまで行かなければなりません。もちろん、JR線ユーザーが直通線列車の中で忘れ物をした場合も、同じように相鉄の駅まで取りに行くことになるかもしれません。忘れ物の問い合わせ箇所も増えてしまうため、手続きがこれまで以上に煩雑になります。車内での忘れ物には気をつけましょう。
車いすを使用している方も、直通線の利用時には注意が必要です。車いす使用者など、乗降時に駅員の補助が必要な方の場合、乗車駅から降車駅に対し、事前に乗車することを連絡しています。しかし、羽沢横浜国大駅を除く相鉄の各駅と、直通線が走るJR線の各駅の間には、直通電話が引かれていません。このため、車いす使用者が相鉄線各駅から直通線に乗車する場合は、相鉄やJRの駅係員は次のようなプロセスを踏むことになります。
「相鉄の乗車駅で申告」→「乗車駅から羽沢横浜国大駅へ連絡」→「羽沢横浜国大駅からJR線の降車駅へ連絡し、乗車列車を伝達」→「羽沢横浜国大駅から乗車駅へ、JR線の降車駅へ連絡済みの旨を連絡」→「乗車」
これは逆方向のJR線からの利用時からも同様。このため、相鉄では、「降車駅によっては1時間以上待つ場合もある」と案内しています。不便は致し方ありませんが、車いすを使用されている方は、時間に余裕を持った行動が必要となります。なお、直通線に乗車しない場合は、これまで通りの取り扱いです。