11月30日に開業した「相鉄・JR直通線」。相鉄本線の西谷駅から、新駅「羽沢横浜国大駅」を経由してJR線に乗り入れ、相鉄線と渋谷・新宿方面を乗り換え無しで結ぶルートです。
直通線と同時に開業した羽沢横浜国大駅で、券売機の上にある運賃表を見ると、少々不思議なことが起こっています。隣駅である武蔵小杉駅までの運賃は310円(紙のきっぷの場合、以下同じ)なのですが、直通線のルートから離れた鶴見駅までの運賃は170円。隣の駅よりも、路線図上では離れた駅の方が、運賃が安いのです。これは一体どういうことなのでしょうか。
まず、運行経路のおさらいです。
直通線は、相鉄本線の西谷駅から分岐し、羽沢横浜国大駅を経由。列車はここからJRの東海道貨物線に乗り入れ、横須賀線・湘南新宿ラインの武蔵小杉駅、西大井駅と停車します。そのため、路線図だけを見れば、羽沢横浜国大駅からは隣駅である武蔵小杉駅が、JR線方面では一番安く行ける駅となるはずです。
見かけ上の路線図と運賃が一致しないのは、直通線の走行経路に秘密があります。羽沢横浜国大駅から乗り入れる東海道貨物線は、鶴見駅付近で横須賀線・湘南新宿ラインの経路と合流。ホームが無いため乗降はできないのですが、JRの運行上は、鶴見駅を経由する扱いとなっているのです。
そのため、運賃を計算する上でも、直通線は鶴見駅から東海道線と分岐するという扱い。運賃計算上、羽沢横浜国大駅の隣駅は鶴見駅となっており、東海道線の川崎・品川方面や横浜方面も、鶴見駅経由で運賃を計算しているのです。
羽沢横浜国大駅から直通線経由で鶴見駅まで移動しようとすると、武蔵小杉駅で横須賀線・湘南新宿ラインに乗り換えて、さらに横浜駅で京浜東北線に乗り換える経路、あるいは武蔵小杉駅で南武線に乗り換え、川崎駅で京浜東北線に乗り換える2つのルートが挙げられます。前者の距離は約39キロで所要時間は約40分、後者の距離は約28キロで所要時間は約40分となっています。いずれにせよ、170円という運賃以上の距離・時間が掛かる、鉄道ファンにとっては「おいしい」区間となります。
なお、羽沢横浜国大駅は、実際の乗車経路に関わらず最短経路で運賃を計算する「東京近郊区間」エリアに含まれます。そのため、近郊区間の乗車ルールに則る限りは、羽沢横浜国大~鶴見間でどのような経路に乗車しても、運賃は170円です。