東武鉄道は、12月14日から15日にかけて、東武アーバンパークラインの逆井~高柳~六実間で、線路を単線から複線に切り替える工事を実施しました。
東武アーバンパークラインは、春日部~運河間と逆井~六実間が単線となっています。東武鉄道では、逆井~六実間を複線化し、あわせて従来の大宮~春日部間に加え、運河~柏~船橋間で急行運転を本格化する計画を進行中。2020年3月のダイヤ改正にて、全線での急行運転を開始する予定です。
急行の全線運転など、東武アーバンパークラインの利便性向上に向けた工事、その現場を取材しました。
12月14日の深夜、日付は15日に変わったころ、高柳駅の周辺は、深夜の静けさとは無縁でした。
この日の工事は、現在使用している線路と、あらかじめ敷設しておいた新たな線路を繋ぎ、単線から複線運行にするもの。報道陣に公開された「野265号」踏切周辺の現場では、従来の線路を切り分け、新下り線と新上り線にそれぞれ接続する工事が実施されました。
0時50分頃、14日最後の列車が高柳駅に到着。列車が去った直後、協力会社の作業員が一斉に軌道内に入り、工事が始まりました。
レールを移設するために、まずは線路内のバラスト(砂利)を除去。あらかじめ袋詰めしていた軌道中心部のバラストを手渡しで次々と搬出するほか、袋詰めができない軌道左右のバラストをスコップで切り崩していきます。見る間に枕木の下までバラストが除去されました。
あわせて、踏切ではアスファルトを剥がし、踏み板を除去していきます。
バラストの除去と並行して、既存線路を切り分ける作業が始まりました。ガスバーナーを用い、レールをざっくりと溶断。あっという間に線路が2つに分かれました。
線路の移設作業は人力です。作業員たちは、「エイ!エイ!」あるいは「ヨッコイ!ヨッコイ!」というかけ声のもと、枕木が付いたままのレールを予定位置へと移動させていきました。
線路の移動が終わると、次は新設線との接続です。接続部分の枕木を一旦取り外した上で、移設した線路と新しい線路の長さを調整し、不要な部分は切断機を用いて切断します。
調整が終わると継目板で2つのレールを接続し、またレール締結装置によってレールを枕木に取り付けます。そして、レールに流れる信号などの電流を流すレールボンドを溶接。これで接続は終了です。
あわせて、一旦除去していたバラストを再度投入。「タイタンパー」という機械によって、バラストを突き固めていきます。余談ですが、保線機械の「マルタイ(マルチプルタイタンパー)」は、このタイタンパーの機能を自動化したものです。
並行して、電力や信号・通信設備の作業も進められます。
今回の工事では、線路の位置が変わるのにあわせて、架線も複線に対応したものに付け替えられます。あらかじめ設置しておいた複線対応の架線の高さを調節し、既存の架線はパンタグラフが接しない高さに固定。後日撤去する流れとなります。
また、新たな線路を列車が走ることになるため、信号や踏切などの動作確認も必要です。切り替えが終わった箇所から「軌道短絡器」という機材を用いて確認する作業に入りました。2本のレールの間に軌道短絡器を渡し、線路上に列車がいる状態を再現することで、踏切が正常に動作するか、信号が正常に切り替わるかを確認していきます。
踏切の踏み板と舗装を復旧し、障害物検知装置の動作が確認できると、列車が走行できる準備が整いました。4時45分ごろ、始発列車に先立って、試運転列車が工事区間を1往復。上下線ともに問題無いことが確認されました。東武鉄道 改良工事部 部長の矢野哲郎さんは、工事開始前に「時間との戦い」と表現していましたが、約4時間を予定した工事は、予定通りのスケジュールで無事に終了となりました。
そして、作業員や関係者が見守る中、4時58分に高柳駅を出発する始発列車が、作業が終了した工事現場を通過していきました。