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相鉄が進めるもう一つの都心直通ルート、「相鉄・東急直通線」

2020年1月12日(日) 鉄道コムスタッフ

相鉄からはどこまで直通する?

開業後の運行形態はどのようになるのでしょうか。まずは、直通運転が見込まれる各線の対応状況から見てみましょう。

相鉄と相互直通運転が始まる東急では、目黒線の8両編成化計画が進行中。2019年には8両編成に対応した新型車両の3020系を導入したほか、既存車両の対応工事も進められています。

目黒線の新型車両、3020系。8両編成化に対応して製造されています
目黒線の新型車両、3020系。8両編成化に対応して製造されています

地上設備も対応工事が進められており、奥沢駅では、ホームの延伸工事と、隣接する車庫の8両化対応工事が2018年に始まっています。奥沢以外の各駅では、既に8両分のホームがあるため、ホームドア設置などのわずかな工事で8両編成に対応できます。東急では、2022年度上期から東急新横浜線が開業する下期までの間に、目黒線用車両の全26本を8両編成化する計画です。

8両対応化が進む奥沢駅の車庫
8両対応化が進む奥沢駅の車庫

目黒線と直通する都営三田線、東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道線でも、8両編成化に向けた整備が進められています。

東京都交通局では、2019年1月に発表した「東京都交通局経営計画2019」において、2021年度に三田線へ9編成を投入するほか、2022年度以降に既存車両の8両編成化を実施すると盛り込んでいます。

都営三田線の車両は順次8両編成に
都営三田線の車両は順次8両編成に

東京メトロは、2019年3月に発表した東京メトログループ中期経営計画「東京メトロプラン2021」において、2022年度に南北線で8両編成の運転を開始するほか、6両編成の車両を順次8両編成化するとしています。

埼玉高速鉄道においても、2019年4月より8両編成対応の工事を開始。2022年度上期に8両編成の運転を開始する計画です。

この3社局について、東京都交通局では車両の積極的な8両化対応が進められる一方、東京メトロと埼玉高速鉄道については「順次8両化」との表現があり、少なくとも東急新横浜線開業時点では、南北線・埼玉高速鉄道線と目黒線の直通列車には6両編成の列車が残ることが予想されます。

目黒線と共に日吉駅で接続する、東急東横線方面はどうでしょうか。相鉄の直通線特設サイトなどでは目黒線方面の所要時間しか表記していませんが、相鉄や鉄道・運輸機構の事業概要には渋谷方面への直通も示されており、東横線への乗り入れも計画に含まれていることが窺えます。

また、事業概要の路線図には、東横線から東京メトロ副都心線へ伸びる線も描かれており、副都心線への直通も視野に入れているようです。ただし、相鉄や東急、鉄道・運輸機構の各種資料では、渋谷以遠への直通に関する記述が無いため、渋谷駅止まりでの運転となる可能性もあります。

副都心線の先、東武線と西武線への直通については、現段階では未知数です。とくに西武鉄道はかつて直通に否定的な見解を見せており、副都心線を越えた直通運転の実現性は低いでしょう。しかしながら、相鉄が東急線方面直通用に製造した20000系の第1編成には、保安装置を一括で切り替える機能を持つ運転台の鍵や、保安装置の切り替えスイッチには、「東急」のほかに「地下鉄」や「東武」「西武」との記載があるため、相鉄側は東武・西武への直通意欲があるようです。

相鉄20000系の保安装置切り替えスイッチ。相鉄ATS用の「相鉄」や、東急・地下鉄に対応する「ATC」のほか、「西武」「東武」の段があります
相鉄20000系の保安装置切り替えスイッチ。相鉄ATS用の「相鉄」や、東急・地下鉄に対応する「ATC」のほか、「西武」「東武」の段があります

次に設備を見てみましょう。開業したばかりの羽沢横浜国大駅にはホームドアが設置されていますが、このホームドアは8両編成と10両編成のみに対応している様子。乗務員がホームに降りるスペースのための「セットバック」は8・10両位置のみに設けられており、6両編成の発着は想定していないようです。余談ですが、現在相鉄では6両編成の列車は運転されていないものの、相鉄初のホームドア本格導入事例となった横浜駅3番線では、6両編成位置にもセットバックが設けられています。

ホームドアが設置されている羽沢横浜国大駅
ホームドアが設置されている羽沢横浜国大駅
横浜駅のホームドア。手前のホームドアが湾曲している部分が「セットバック」。乗務員がホームに降りるためのスペースで、乗務員室が来る位置に設けられます
横浜駅のホームドア。手前のホームドアが湾曲している部分が「セットバック」。乗務員がホームに降りるためのスペースで、乗務員室が来る位置に設けられます

また、新横浜駅では先述の通り、折り返しに対応した中線が設けられます。

これらを踏まえると、相鉄側からは目黒線方面への直通がメイン、一部が東横線への直通となるのではないでしょうか。目黒線方面は三田線、南北線・埼玉高速鉄道線ともに直通が可能ですが、東横線方面は渋谷駅止まり、遠くても和光市駅までの直通となりそうです。

反対に、東急側からの場合は、新横浜駅折り返し設備の活用が想定されます。先述の通り、羽沢横浜国大駅は現時点では6両編成には対応していませんが、新横浜線とレールが直接繋がる目黒線では、新横浜線開業時点では6両編成が残る予定です。そのため、南北線と埼玉高速鉄道の6両編成については、最遠でも新横浜駅まで、あるいは引き上げ線が1線が残される日吉駅での折り返しとなりそうです。

なお、鉄道・運輸機構の神奈川東部方面線相鉄・東急直通線事業概要においては、運行区間は海老名駅・湘南台駅~西谷駅~羽沢横浜国大駅~日吉駅~渋谷方面・目黒方面、運行頻度は朝最混雑時間帯が10~14本程度、その他の時間帯が4~6本程度とし、車両編成数は8・10両としています。

相鉄は、相鉄・JR直通線用車両の12000系導入より早い2017年度、相鉄・東急直通線用の20000系を製造しました。運転台配置などの取り扱いを東急線に合わせたため、相鉄側の慣れが必要となり、取り扱いがこれまでと同じJR用よりも早く20000系を製造したのだといいます。2018年度以降は、相鉄はJR線への直通に注力していましたが、2019年11月の開業でこれは一段落となりました。

相鉄・東急直通線の開業予定は、2022年度下期。今も工事が進められている同線ですが、今後は開業に向けた準備がさらに加速しそうです。

 

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