デビュー時の4倍に増えた「のぞみ」
2003年、東海道新幹線17番目の駅、品川駅が開業。ダイヤも大幅に変更され、「のぞみ」は1時間あたり最大7本、「ひかり」は最大2本と、「のぞみ」主体のダイヤへと生まれ変わりました。当時、JR東海ではTOKIOの楽曲「AMBITIOUS JAPAN!」を使用したCMなど、大々的なPRを展開。700系の両先頭車にもこのステッカーが貼られたほか、車内チャイムもJR東海車両はAMBITIOUS JAPAN!に変更されました。
品川駅の開業にあわせて、運転開始以来全車指定席だった「のぞみ」に、新たに自由席が設定。指定席料金も値下げされ、「のぞみ」の立ち位置は「特別な列車」から一般的に利用しやすい列車へと変わっていきました。なお、品川駅開業に先立つ9月には、東海道新幹線から100系が引退。東海道新幹線内を走る営業列車は、全て時速270キロ運転が可能な車両に統一されました。
2年後の2005年には、愛知県で「愛・地球博」が開催されました。JR東海はこれに対応すべく、「のぞみ」の本数を最大8本に増発。0系が大阪万博輸送で活躍したように、700系も愛・地球博輸送で活躍しました。なお同年、N700系の先行試作車であるZ0編成が落成し、営業運転に向けた試験を開始しています。
N700系の投入と700系の引退、「のぞみ」は12本ダイヤへ
2007年、700系の次代となる新型車両、N700系の営業運転が開始。300系などの置き換えが始まるとともに、700系も主力の座から追われていきます。当時、東海道新幹線では300系が、山陽新幹線では0系や100系が残存しており、N700系の投入による700系の玉突きで、これらを置き換える形が取られました。これまで東海道新幹線では「のぞみ」を中心に活躍してきた700系ですが、次第に「ひかり」「こだま」の運用が中心となっていきます。
なお、N700系のデビュー前年には、東海道新幹線で新型ATC「ATC-NS」が本格稼働を開始しています。現在ののぞみ高頻度運転を支えるシステムの1つですが、現在位置の判別が可能となったことが700系にとってはポイント。終端駅の過走対策として抑えていた700系の加速性能を、フルに活用できるようになりました。2008年から2009年にかけて、700系の改造工事が実施され、東海道新幹線内は時速1.6キロ毎秒に抑えられていた加速性能が、時速2.0キロ毎秒に向上しました。
2012年3月には、100系と300系が引退。同時に700系は定期「のぞみ」運用から撤退し、「ひかり」「こだま」が中心の運用となりました。この2011年度には、JR東海からJR西日本へ、700系C編成が部品取り用を含め9本が譲渡されており、これによってJR西日本所有の300系が置き換えられています。
300系の引退後、いよいよ700系の置き換えが始まります。部品取り用として廃車されたC4編成、2013年に廃車された量産先行試作車のC1編成を皮切りに、N700系シリーズの投入と共に順次置き換えが進んでいきます。
2014年のダイヤ改正では、車内の自動販売機が全面的に廃止されました。0系の「ビュフェ」から始まり、100系では2階建て食堂車、300系や500系では売店として設置されてきた供食設備ですが、700系開発時には「基地でのサービスよりもワゴンサービスの強化を」との方針から、ドリンクとスナックの自動販売機を設置していました。東海道新幹線開業から50年の節目で、供食設備はひっそりと消えたのでした。
2017年1月には、700系最後の全般検査が終了。同年3月には東海道新幹線の定期「ひかり」運用が消滅し、東海道新幹線内の定期運用は「こだま」のみとなりました。そして2019年3月のダイヤ改正で、定期運用は「こだま」5本のみに。さらにN700系シリーズの投入が進んだことで、2019年12月1日の「こだま」636号をもって、定期列車から引退しました。
最後に残ったJR東海のC53編成・C54編成は、定期運用引退後も、臨時「のぞみ」で活躍。引退まで1か月を切った2月12日からは、引退記念装飾を掲出し、臨時列車に充当されています。
700系C編成のラストランは、3月8日の「『ありがとう東海道新幹線700系』のぞみ号」。東京発新大阪行きのこの列車をもって、東海道新幹線の営業列車からは引退します。JR西日本のB編成も、3月13日の「ひかり」441号を最後に定期運用から撤退。翌日の14日からは、「のぞみ」が1時間最大12本運転される、かつてない高頻度ダイヤへと生まれ変わります。
東海道新幹線から引退する700系ですが、山陽新幹線ではまだまだ活躍が続きます。
JR西日本が「ひかりレールスター」用に導入したE編成は、2018年より全トイレの洋式化改造が行われており、今後もしばらくは運用が続く見込みです。また、16両編成仕様のB編成も、今後もしばらくは波動用として残されると報道されています。
また、700系を基にした923形「ドクターイエロー」は、2編成とも全般検査を出場したばかりで、どちらも今後数年間は運用が続きます。
そして、台湾高速鉄道用車両として、700系をベースに開発された700T型。2004年から2015年にかけて製造された同型式は、台湾高速鉄道唯一の旅客用形式で、700系らしさが垣間見えるこの車両は、まだまだ南の地で走り続けます。