JR東海は2月25日、新型新幹線「N700S」の量産車第1編成となるJ1編成の先頭車を、報道陣に公開しました。
N700Sは、従来のN700系・N700A(以下N700系)に代わる、東海道新幹線の新型車両です。末尾の「S」は「Supreme(最高の)」という意味で、N700系シリーズ中、最高の新幹線車両であることを示しています。2018年に確認試験車となるJ0編成が落成し、量産車の製造に向けて約2年の間試験を進めてきました。
先頭部は、N700系の「エアロ・ダブルウィング」を進化させた「デュアル・スプリーム・ウィング」となり、空気抵抗や騒音、最後尾の動揺を従来車両よりも削減。前照灯もN700系のHIDからLEDとなり、N700系とは印象が変化しています。
足回りも、従来車両と比べて進化しています。
主変換装置(制御装置)には、高速鉄道では世界初となるSiC素子を採用。冷却方式も走行風による冷却技術を全面的に採用しました。これにより機器の小型軽量化を実現し、主変換装置1台あたりの比較では、初期のN700系よりもサイズは約55%に。重量も同じく1台あたり約0.6トン軽量化されています。主変換装置のほか、主変圧器やモーターを含めた駆動システム全体での比較では、編成あたり約20%、約10トンの重量削減となりました。
この小型軽量化によって機器配置の制約が緩和され、編成組成の自由度も向上しています。300系以来、東海道新幹線向けの各形式は16両編成での組成に最適化されており、短編成化するには機器配置を変更する必要がありました。一方、機器類の小型軽量化を実現したN700Sでは、機器配置の違いによる車両形式の違いを大幅に削減できました。これにより、東海道新幹線向けの16両編成から、他路線での短編成仕様や海外輸出も見据えた12両編成・8両編成など、設計を変更することなくさまざまな編成長に対応することができるようになっています。
また、異常時対応面も強化されています。N700Sは、東芝インフラシステムズと共同開発したバッテリーを床下に搭載しており、これにより停電時でも低速での自走が可能。停電時に駅間で停止してしまった場合でも、最寄り駅など安全な場所まで移動することができます。
「自走用バッテリ装置」は、1編成あたり8基を搭載。時速30キロ程度の速度で、東海道新幹線内にある全てのトンネルから脱出できる程度の距離を走行することができるといいます。この装置は、停電時の移動用のほか、構内入換や車両整備での活用も検討しているとのことです。
台車周りでは、フレーム構造の見直し、新幹線初の6極モーターの採用など、こちらも新技術の投入による軽量化や信頼性向上が図られています。また、東海道新幹線の量産車では初めて「フルアクティブサスペンション」を一部車両に搭載し、セミアクティブサスペンション搭載車両よりも乗り心地を向上させています。
車体の妻面や搭載機器の一部には、N700Sのエンブレム入りプレートが貼られています。これはN700Sという車両自体をブランド化し、それに携わる人たちに誇りを持ってもらえるよう、内外に示すためのものだといいます。
N700Sは、東京オリンピック開催までに5編成が落成し、2020年7月1日に営業運転を開始する予定。既存のN700系に代わる、東海道新幹線の新たな主力車両となっていきます。
JR東海 新幹線鉄道事業本部 車両部 担当部長の田中英允さんは、「乗り心地や座り心地、車内の快適性をいかに上げていくかを重視して開発した」とし、これらを体感してほしいと話していました。