3月4日、東京メトロ03系の03-136編成が、車両解体施設のある旧北館林荷扱所へと回送されました。同編成は03系最後の編成で、これにより営業線から03系は姿を消すこととなりました。
03系は、1988年に登場した日比谷線用の車両。当時逼迫していた日比谷線の混雑緩和策として、1994年までに42編成が製造されました。
車体は18メートル級3ドアですが、うち10編成は、両端各2両のドアを5か所に増やして製造。ドア数を増やすことによって乗降時間の短縮を図りました。
また、営団地下鉄(当時)としては初めて、デビュー時から冷房を搭載した形式でもあります。
冷房機器は、屋内を冷やす代わりに、室外機によって熱を屋外へと放出します。かつての営団地下鉄では、冷房使用でトンネル内に熱がこもることを避け、車両冷房の使用による電気代の上昇を防ぐため、車両の代わりに駅やトンネルへ冷房を設置し、気温上昇対策としていました。
後に、駅やトンネルの冷房設備が整うとともに、車両の省エネルギー化が進んだことにより、方針を転換。1987年に車両冷房の設置を決定し、翌年に登場した03系が、初めて冷房を設置した形式として登場したのです。
デビュー後の03系は、北千住~中目黒間の日比谷線のほか、相互直通運転先の東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)、東急東横線(2013年3月まで)で活躍。田園都市線鷺沼駅横の鷺沼工場で検査を受けるため、回送列車として大井町線や田園都市線を走る姿も見られました。
2016年に登場した13000系によって、03系は置き換えが進められました。最後に残った03-136編成は、2月28日の運用をもって営業運転を終了。3月2日から4日にかけて、旧北館林荷扱所へと回送されました。
なお、今回の03系引退に際しては、さよならイベントの開催はありませんでした。
東京メトロの担当者は、「千代田線の6000系が引退する際にさよならイベントを開催したところ、一部の鉄道ファンがホームや車両に殺到する事態となり、運行に支障が出たほか、多くのお客様にご迷惑をお掛けする事態となった」としており、駅や車内での混乱を避けるため、告知せずに引退させることとなったようです。
東京メトロからは去った03系ですが、他の鉄道事業者へ譲渡された車両は、まだまだ活躍が続きます。
熊本電鉄では、03系を改造した03形を、3編成導入する予定。2019年に第一陣として、2両編成1本が運転を開始しています。
長野電鉄は、03系の改造車を3000系として、2020年に3両編成2本を導入する予定。同社では日比谷線時代に03系が置き換えた営団3000系の改造車が活躍していますが、03系はこれを置き換える計画です。
北陸鉄道でも、03系の改造車を導入します。2019年7月に2両編成2本が金沢総合車両所へ甲種輸送され、2020年1月にうち1本が出場。浅野川線の車両基地がある内灘駅に搬入されています。