3月14日に実施される、2020年春のJRグループダイヤ改正。この改正において、JR北海道から「スーパー」を冠する特急列車が消滅します。
2019年3月改正のダイヤでは、JR北海道は函館本線の特急「スーパー北斗」と、石勝線・根室本線の特急「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」を設定していました。これらの列車は、国鉄時代に投入されたキハ183系の代替として、キハ281系やキハ283系といった高速性を意識した車両を導入。従来よりも大幅なスピードアップを図っており、当時残存していた、あるいは置き換えたキハ183系充当列車との差別化を図るため、「スーパー」を冠した列車名となりました。
しかしながら、現在は各列車ともJR化後の形式に統一されており、「旧型車両との差別化を図るという意義が薄れてきた」(JR北海道)ことから、ダイヤ改正にあわせて「北斗」「おおぞら」「とかち」と、スーパーを外した列車名に変更されます。
また、今回のダイヤ改正では、新たに運転を始める「サフィール踊り子」に代わり、東京都心と伊豆半島を結ぶ特急「スーパービュー踊り子」が運転終了となります。
ダイヤ改正後も「スーパー」の名称が残るJRの旅客列車は、JR西日本管内の特急「スーパーはくと」「スーパーいなば」「スーパーおき」「スーパーまつかぜ」の、わずか4列車のみとなります。
「スーパー」を冠する定期列車で最初に登場したのは、1988年にデビューしたJR九州の783系による特急「スーパー有明」です。九州新幹線開業前、そして特急「つばめ」の運転開始前に博多~西鹿児島(現:鹿児島中央)間を結んでいた特急「有明」ですが、新型車両の導入と同時に、博多~西鹿児島間を現在の新幹線「つばめ」並みに停車駅を絞った速達列車1往復が、スーパーを冠した列車名となりました。
翌年の1989年には、JR東日本が651系による「スーパーひたち」、JR北海道が785系による「スーパーホワイトアロー」を、それぞれ運転開始しました。両列車とも既存愛称に「スーパー」を冠したものですが、スーパー有明のような停車駅を絞った速達性に加え、新型車両の導入をアピールする狙いもありました。
JR西日本では、新型車両を投入した列車のほか、既存形式のアップグレード車両を投入した速達列車にも、「スーパー」を使用しました。1989年には、381系による紀勢本線の特急「スーパーくろしお」と、485系による北陸本線の特急「スーパー雷鳥」が登場。いずれも展望車両であるパノラマグリーン車を連結しており、新型車両でないながらも、各線のフラッグシップトレインとして存在感を放っていました。
俗称として使用されたケースもあります。1980年代、東北新幹線で大宮~仙台間をノンストップで運転する、現在の「はやぶさ」のような「やまびこ」は、自然発生的な愛称として「スーパーやまびこ」と呼ばれていました。また、この列車に充当された、2階建てを組み込み100系のような先頭形状をした200系のH編成を、スーパーやまびこと呼ぶこともあるようです。このほか、その設計自体は構想で終わりましたが、後に300系として実現する東海道新幹線の次期車両モックアップを、JR東海は「スーパーひかり」と呼んでいました。
これらの結果、スーパーひかりを除けば、新型車両を投入した在来線特急には「(ワイドビュー)」を冠したJR東海、国鉄時代同様オーソドックスな命名としたJR四国を除くJR4社で、「スーパー」な特急が生まれたのでした。
しかしながら、その「スーパー」な愛称の流行は、次第に終息していきます。
スーパー有明の運転によって「スーパー」の名称を普及させたJR九州ですが、2年後の1990年には783系の愛称「ハイパーサルーン」を冠した「ハイパー有明」に統一。その後は現代に至っても「スーパー」を冠する列車は現れず、JR九州での「スーパー」な特急は2年で終わりを迎えました。
JR西日本では、リニューアル車両を投入した「スーパー」な特急の系統へ新型車両を投入するのにあわせ、全く別の愛称を導入しました。
北陸本線のスーパー雷鳥は、1995年に681系が「スーパー雷鳥(サンダーバード)」としてデビューしたことにより、485系の置き換えが始まります。681系の充当列車は、2年後には独立名称「サンダーバード」へと名前が変わり、さらに2001年に置き換えが完了したことによって、スーパー雷鳥としての歴史は終わりを迎えました。
スーパーくろしおも、同様に新型車両283系に一部が置き換えられ、「スーパーくろしお(オーシャンアロー)」、後に「オーシャンアロー」として独立します。しかしながら、こちらの場合はスーパーくろしおも残存。2012年の新型車両導入にあわせて列車名が統一され、紀勢本線の特急列車が「くろしお」へ統一されたことにより、スーパーくろしおの名称は消滅しました。
JR東日本管内では、「スーパーはつかり」「スーパー白鳥」「スーパーこまち」「スーパーひたち」「スーパーあずさ」の5列車が設定されていました。東北本線のスーパーはつかりは2002年の東北新幹線八戸開業で、津軽海峡線のスーパー白鳥は2016年の北海道新幹線開業で、それぞれ廃止。常磐線のスーパーひたちは2015年に、中央本線のスーパーあずさは2018年に、それぞれ新型車両へ統一されたことにより、「スーパー」を冠さない列車名となりました。秋田新幹線のスーパーこまちは少々特殊で、既存のE3系を置き換えるE6系を充当し、時速300キロ運転を行う列車に対し、2013年から2014年の1年間限定で使用された列車名でした。
そしてJR北海道では、先のスーパー白鳥のほか、「スーパー北斗」「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」「スーパー宗谷」「スーパーホワイトアロー」を運転していました。このうちスーパーホワイトアローは、2007年ダイヤ改正時にて「ライラック」と共に「スーパーカムイ」へ統合。さらにスーパーカムイも、2017年の旭川方面特急系統再編によって、スーパー宗谷と共に「スーパー」を外した「宗谷」「カムイ」へと名称変更されました。そして2020年3月のダイヤ改正で、残る3列車も「スーパー」を外した列車名へ変更されることとなりました。
山陰特急以外のJR旅客列車では終焉を迎える「スーパー」な列車ですが、私鉄や貨物列車では、引き続きこの名称が使われます。
小田急電鉄では、新宿~小田原間をノンストップで運転する特急ロマンスカーを、1996年に「スーパーはこね」と命名。一畑電車では特急「スーパーライナー」、特急ではありませんが、肥薩おれんじ鉄道でも快速「スーパーおれんじ」が、それぞれ運転されています。
また、東京貨物ターミナル~安治川口間で運転されているJR貨物の貨物電車M250系は、列車名称ではありませんが、「スーパーレールカーゴ」の愛称を持ちます。かつて東京~大阪間を駆けた在来線特急「こだま」「つばめ」を上回る表定速度で運転されるスーパーレールカーゴは、まさに「スーパー」な列車と言えるでしょう。