完全なバリアフリーを目指して「軌道」を選択
コンパクトシティを目指す都市は全国にあり、専用道に大型バスや連節バスを走らせて鉄道に近い定時運行性を確保する「BRT」(Bus Rapid Trainsit)を選択するケースも増えています。鉄軌道ではないので建設費が安く済み、渋滞のない郊外では一般道路に乗り入れることができる点が、日本のBRTのメリットです。では、なぜ宇都宮市はLRTを選択したのでしょうか。
実は、宇都宮市でもLRTを導入する前にBRTとの比較を実施していました。それによれば、LRTの建設費383億円(2013年当時の試算)に対し、BRTは168億円と、半額以下で整備可能という試算が出ていました。
しかし、運転手がハンドル操作を行い、停止位置を完全に固定できないBRTは、車いすの乗降にスロープのセットが必要など、身障者が健常者と同じように一人で乗降することが難しいとされています。また、乗り心地も運転手の技術に左右され、CO2排出量も電車よりはるかに大きいこと、想定される1日の利用者が1万6300人、ピーク時間帯には1時間あたり1800人の利用が見込まれると算出されたことから、LRTが選択されたのです。
また、運賃収受についても、LRT本来の特性を活かす信用乗車制度の導入が検討されています。これは、乗客が自らの意思でICカード乗車券をタッチして、乗務員のチェックを受けることなく一番近い扉から乗降するシステム。わざわざ車両前方まで移動しなくてもよく、乗り降りがスムーズになって定時運行性と安全性が向上するというメリットがあります。ただし、ICカードを持たない乗客は、当面前乗り・前降りによる現金収受が行われる予定です。
信用乗車制度は、以前、富山ライトレールが一部導入していましたが、富山地鉄への合併とともに止めてしまいました。
既存の鉄道インフラを改良・接続して基幹公共交通網を完成させた富山市。ゼロからLRTシステムを建設し、暮らしやすい町として選んでもらうことを狙う宇都宮市。今、LRTを柱とした町づくりに注目が集まっています。