新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて、4月7日に政府より出された緊急事態宣言。外出の自粛が求められ、勤務のテレワーク化や学校の休校、また旅行の取り止めといった動きが進む中で気になるのが、購入したきっぷ類の取り扱いです。
JR東日本では、定期券、回数券、乗車券類それぞれの措置について発表しています。
通学定期券の場合は最終登校日基準で払い戻し
まず、2月28日に休校要請が発出され、3月2日より休校となったことで不要となった通学定期券(大学生等相当のものを除く)については、2月28日以降の最終登校日を最終使用日とみなし、1か月単位で計算した額を払い戻す特例措置を取っています。
払い戻しの対象は、2月28日以降の最終登校日より、残りの有効期間が1か月以上あるもの。有効期間から使用した月分の1か月定期券運賃と手数料を引いた額が払い戻し額となります。
たとえば、2020年1月10日から3か月(4月9日まで)有効の新宿~東京間の高校生通学定期券(11820円)で、2月28日が最終登校日となった場合、同日を最終使用日とみなし、発売額から既に使用した2か月分の定期運賃(4140円×2か月分)と手数料220円を差し引き、残額の3320円が払い戻されます。
残りの有効期間が1か月を切っている場合は、払い戻しの対象となりません。また、最終登校日以降に対象の通学定期券を使用(Suica定期券の場合はチャージも含む)した場合にも、この特例措置は対象外となります。
通勤定期券や回数券でも特例措置
通勤定期券や、大学や短期大学、専門学校といった上記のもの以外の通学定期券については、2020年4月8日以降に定期券を使用していない場合に限り、4月7日に払い戻しを申し出たとみなし、上記通学定期券と同様、1か月単位で計算した額を払い戻す特例措置を取っています。なお、当該定期券を使用(Suica定期券の場合はチャージも含む)した場合は、最終使用日を申し出日として取り扱います。
なお、有効開始日から7日が経過していない場合には、有効開始日から経過した日数分の往復運賃と手数料を定期券発売額から引いて払い戻す計算方法となります。
回数券では、緊急事態宣言発出によって払い戻す場合、当該回数券の有効期間を経過した場合でも、特例として4月7日に払い戻しの申し出を受けたとして取り扱います。こちらも定期券同様、払い戻し時には所定の手数料が引かれることとなります。
この払い戻し措置の特例は、緊急事態措置最終日の翌日より1年間実施されます。仮に2020年5月6日をもって緊急事態措置が終了した場合、2021年5月6日までの間、払い戻しが受けられることとなります。
なお、定期券や回数券払い戻しの特例措置は、払い戻し申し出日について便宜を図っているもので、払い戻し額の計算などについては、従来通りとなっています。
ここで注意したいのは、Suica定期券を使用している場合です。Suica定期券の払い戻しの申し出前に新たな定期券を購入し、Suicaの情報を上書きしてしまった場合、払い戻し対象となっていた定期券の情報を参照することができず、払い戻しも不可能となってしまします。終息後にいつも通り定期券を購入してしまいそうですが、忘れないようにしましょう。
その他のきっぷは1年間無手数料で払い戻し
このほかの乗車券類についても、JR東日本は特例措置を発表しています。
普通乗車券、特急券、グリーン券、指定席券等、そしておトクなきっぷについては、「外務省による新型コロナウイルスに関する渡航中止勧告又は退避勧告の発出」「新型コロナウイルスの罹患」「新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的にイベント等が中止、延期または規模縮小等が決定」「新型コロナウイルスの感染防止」のいずれかを理由として旅行を見合わせる場合、2月27日午後以降の申し出に限り、無手数料での払い戻し措置を取っています。
また、緊急事態宣言の発出を踏まえ、「緊急事態宣言発出による外出自粛を事由とする払い戻し」「4月7日以前に購入した乗車券類」「『新型インフルエンザ等緊急事態措置』が実施される期間が乗車券類の有効期間に含まれている」の3件全てに該当する場合には、4月7日に払い戻しの申し出があったとして取り扱われます。この払い戻し措置の特例は、定期券や回数券と同様、緊急事態措置最終日の翌日より1年間実施されます。
たとえば、2020年4月10日有効の新幹線のきっぷを4月1日に購入し、払い戻すこととなった場合、4月7日に払い戻しの申し出があったとみなし、緊急事態措置最終日の翌日より1年間、払い戻しが受けられます。
JR東日本以外での特例措置実施会社
通勤定期券と回数券については、JR東日本以外の各社でも、申し出日の便宜を図る特例措置を発表しています。4月10日現在で、通勤定期券、大学生相当の通学定期券、回数券の払い戻し期間延長措置を発表しているのは、以下の各社です。なお、こちらでは省略していますが、通学定期券の払い戻し特例措置については、ほとんどの事業者が2月末より実施しています。
【当面の間受付】
・東京メトロ
・相模鉄道
・近畿日本鉄道
・四日市あすなろう鉄道
・大阪メトロ
・泉北高速鉄道(定期特急急行券含む)
・大阪高速鉄道(大阪モノレール)
・神戸市交通局(定期券類のみ)
・福岡市交通局
【緊急事態措置最終日の翌日より1年後まで受付】
・JR東日本
・JR西日本
・JR九州
・東京都交通局
・横浜市交通局
・わたらせ渓谷鐵道
・関東鉄道
・首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)
・流鉄
・東葉高速鉄道
・北総鉄道
・新京成電鉄
・千葉都市モノレール
・埼玉高速鉄道
・埼玉新都市交通(ニューシャトル)
・東京臨海高速鉄道(りんかい線)
・多摩都市モノレール
・横浜高速鉄道(みなとみらい線)
・横浜シーサイドライン
・湘南モノレール
・伊豆箱根鉄道
・しなの鉄道
・水島臨海鉄道
【緊急事態措置最終日の翌日より2か月後まで受付】
・アルピコ交通(上高地線のものに限る)
【緊急事態措置最終日の翌月末日まで受付】
・阪急電鉄
・能勢電鉄
・神戸電鉄
・山陽電気鉄道
・神戸新交通
【2020年5月30日まで受付】
・京都市交通局
・北神急行電鉄
【2021年4月7日まで受付】
・仙台市交通局(定期券のみ)
・京阪電気鉄道
・叡山電鉄
同じく4月8日現在で、定期券・回数券を除く乗車券類の払い戻し期間特例措置を取っているのは、以下の各社です。
【緊急事態措置最終日の翌日より1年後まで受付】
・JRグループ各社
・東京メトロ
・わたらせ渓谷鐵道
・しなの鉄道
・近畿日本鉄道
【当面の間受付】
・青い森鉄道(普通・団体乗車券、企画乗車券)
・野岩鉄道(普通・団体・貸切乗車券、特急券)
・北越急行(普通乗車券、ほくほくワンデーパス)
・伊勢鉄道(普通乗車券、企画乗車券、特急券、グリーン券、指定席券)
【2020年4月30日まで受付】
・名古屋鉄道(普通・団体・特殊乗車券、特別車両券(ミューチケット))
払い戻しはコロナ終息後に
東京メトロや福岡市交通局では、4月8日に定期券の払い戻しを一時中止したと発表しています。これは各社の収入が落ち込む中で、現金による定期券の払い戻しが相次ぎ、駅の現金が不足したことによるもの。ネット上では他社でも現金の不足による払い戻し中止の報告が相次いで見られます。
上記のように、緊急事態宣言の対象となっている地域の事業者では、多くが長期間の払い戻し期間を設定しています。また、新型コロナウイルスがまん延する中、混雑する定期券発売所に並び払い戻しを受けることは、感染リスクを高めることにもつながります。感染拡大防止のため、そして自身の身を守るためにも、定期券の払い戻しは落ち着いた頃に行いましょう。