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新たなトレンドを切り開いたE231系 一時はJR車両最多形式に

2020年5月5日(祝) 鉄道コムスタッフ

通勤路線から郊外路線まで

E231系の試作車にあたる209系950番台は、1998年に登場しました。車体は後に登場する量産車とほぼ同一ですが、1編成内に2種類の制御機器(三菱電機製・日立製作所製)を搭載し、両ユニットで磁励音が異なるという、試作車らしい特徴を持つ編成として製造されました。製造後はしばらく試運転を実施した後、翌1999年に中央・総武緩行線での営業運転を開始しています。

量産車の登場は2000年。まずは従来車両の老朽化が深刻化していた中央・総武緩行線に、通勤タイプが投入されました。量産車のデビューにあわせ、209系950番台もE231系900番台へ改番されています。

最初にE231系が投入されたのは中央・総武緩行線。計44編成440両が投入されました
最初にE231系が投入されたのは中央・総武緩行線。計44編成440両が投入されました

2002年には、常磐快速線・成田線でも通勤タイプが営業運転を開始しました。それまで常磐快速線では103系が使用されていましたが、同線は駅間距離が長く、快速列車の最高速度も時速100キロ(当時)と比較的高く設定されていたため、短距離での高加減速に重点を置いた103系にはミスマッチな路線でした。一方、これを置き換えるE231系は、先述したように加減速性能も高速性能も確保した車両。同線での旅客列車がJR化後の車両に統一された現在は、性能をフルに発揮した、最高時速120キロで運転する場面も見られます。

2002年には常磐快速線・成田線用の車両も登場。現在は上野東京ラインへも乗り入れています
2002年には常磐快速線・成田線用の車両も登場。現在は上野東京ラインへも乗り入れています

常磐線用車両と同じ2002年には、山手線用の500番台もデビューしました。当時山手線で活躍していた205系は、第1編成の登場から18年、最終編成の投入からも11年しか経過していない、比較的若い車両でしたが、山手線の保安装置更新を前に、車両を置き換えることとなったのです。このグループでは、ドア上の液晶ディスプレイという、今では当たり前となった装備が、JRでは初めて本格採用されています。また、山手線へのホームドア設置を前に、製造当時に連結していた6ドア車を4ドア車に置き換える編成組み換え工事が、2010年から2011年にかけて実施されています。

山手線用の500番台。2020年1月に山手線から引退し、現在は中央・総武緩行線で活躍しています
山手線用の500番台。2020年1月に山手線から引退し、現在は中央・総武緩行線で活躍しています

2003年には、中央・総武緩行線と地下鉄東西線の直通列車用に、800番台が投入されました。こちらは地下鉄線の狭い車体限界に対応し、他の広幅タイプではなく、狭幅タイプの車体に。機器類はE231系通勤タイプと同じですが、地下鉄千代田線直通用に投入された209系1000番台をアップグレードしたような車両となりました。

地下鉄東西線直通用の800番台
地下鉄東西線直通用の800番台

近郊タイプの車両は、通勤タイプの量産車と同じ2000年に登場。当初は宇都宮線で運用を開始し、翌2001年からは高崎線や湘南新宿ラインへも運用線区を拡大しました。2004年には東海道線用の編成も登場し、現在は黒磯・前橋~逗子・伊東・沼津間と広範囲で活躍しています。

高崎線や東海道線などで活躍する近郊タイプ
高崎線や東海道線などで活躍する近郊タイプ

E231系の転機が訪れたのは2015年。山手線で新型車両のE235系がデビューし、E231系500番台の置き換えが始まったのです。山手線から転出した500番台は、カラーリングを変更して中央・総武緩行線に投入。同線で活躍していたE231系を他の路線へ転属させるという、いわゆる「玉突き転配」によって旧型車両を間接的に置き換えていきました。

中央・総武緩行線から捻出されたE231系は、8両編成と4両編成に短縮され、前者が武蔵野線用、後者が八高・川越線用として改造。両線で活躍していた205系や209系を置き換えています。

E231系の総製造数は2736両。山手線の6ドア車置き換え用に製造した4ドア車も含むため、全ての車両が同時に在籍したことはありませんが、これは2011年現在ではJRグループでの最多両数。次世代車両のE233系には記録を抜かれたものの、総製造数では現在でもJRグループ2位の記録となっています。

鉄道車両の「標準化」に貢献

JR東日本が開発した車両であるE231系ですが、その設計は他の事業者へも影響を与え、E231系の私鉄バージョンと言える車両がいくつか登場しています。

相模鉄道が2002年に投入した10000系は、前面デザインを除けばほとんどがE231系と同一の設計。これによりE231系と部品を共通化することで、車両の設計・導入コストを抑えています。相鉄ほど極端ではありませんが、東京都交通局の10-300形1・2次車や、東急電鉄の5000系も、E231系と一部機器・部品を共通化し、コストを削減しています。

相模鉄道の10000系。前面デザインこそ異なりますが、設計はE231系の通勤タイプとほぼ共通です
相模鉄道の10000系。前面デザインこそ異なりますが、設計はE231系の通勤タイプとほぼ共通です

この設計共通化の流れに乗り、鉄道車両や部品のメーカーが加盟する日本鉄道車輌工業会は、2003年に「通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン」を発表。車体寸法や採用機器、性能などのひな型を作り、車両設計の共通化によるコスト削減を目指したのです。このガイドラインに沿った車両は、必ずしもE231系のようなステンレス・広幅車体ではありませんが、大小さまざまな面で共通化を図っており、特に首都圏の事業者において採用されています。

また、E231系にて採用されたTIMSは、車両の標準化以上に多くの事業者へ広まりました。事業者によって名称は異なるものの、小田急電鉄や京王電鉄、ゆりかもめなど、多数の事業者がこれを採用しています。現在はTIMSの後継システムにあたる「INTEROS」も登場。通信容量が大幅に拡大しており、E235系やE261系などJR東日本の最新型車両のほか、東急電鉄2020系、東京都交通局5500形などに採用されています。

 

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