同じ渋谷駅でありながら、北と南で離れ離れだった山手線と埼京線の各ホーム。埼京線側が北に移る形で、ホームを横並びにする「並列化」工事が行われてきましたが、さる6月1日の始発から、新ホームの運用が始まり、埼京線、湘南新宿ラインなどの列車が発着するようになりました。
今回は、その新ホームの様子のほか、ここ数年での埼京線ホームの変化などについてご紹介します。
埼京線渋谷駅、新ホーム始動
新ホームの供用にあたり、JR東日本では5月29日22時ごろから6月1日の未明にかけ、埼京線下り線の切り替え工事を実施。線路のかさ上げや、すでに連絡通路として使われていた新ホームを線路の位置まで拡幅する工事などが行われました。
東急東横線渋谷駅の跡地などを活用し、大崎方面(上り線)の線路を東側に新設した高架部に移したのが2018年5月のこと。ホーム用地が確保され、新ホームの設置工事も本格的に始まりました。新南口に直結するかつてのホームとは縦列になる形で設けられ、そのままつなぐと少なくとも30両編成の列車が停まれる長さになります。
6月1日以降、旧ホームは新南口への連絡通路として使われるようになり、人が行き来できる範囲も縮小。線路側には柵が設けられ、ホームの南側も閉鎖されました。
南改札、ハチ公改札ともつながる
5月29日の工事が始まる前までは、山手線との乗り換えや中央改札、中央東改札へのアクセス用の通路として、すでに新ホームが使われていました。ただし、新ホームに新たに設けられる南改札、ハチ公改札に通じる階段などはまだ使えない状態だったため、ルートとしては限定的。6月1日に大きく変わった点は、埼京線、湘南新宿ラインが山手線と並ぶ位置で発着するようになったことのほか、ホームと南改札、ハチ公改札が直接つながったことが挙げられます。
南改札とは階段とエスカレーター1基が、ハチ公改札とは階段、エスカレーター2基、エレベーター1基がそれぞれ結んでいます。中央改札、中央東改札とは階段、エスカレーター2基、エレベーター1基です。次の山手線ホームの工事などが控えているため、南改札、ハチ公改札に通じる新設ルートはいずれも仮囲いがなされ、改札までの距離も多少ある状態です。
なお、新宿寄りではハチ公改札が、恵比寿寄りでは中央改札、南改札へのアクセスがそれぞれ近い形になりますが、10両編成、15両編成では停車位置が異なるため、山手線との乗り換えを急ぐ場合などは注意を要します。また、同じ10両編成でも埼京線系統と湘南新宿ラインの列車では号車の位置が異なるので、女性専用車両やグリーン車を使う場合など、ホーム上の号車表示を確認する必要があるでしょう。
並んでいないホームから「並んだぜホーム」へ
埼京線の渋谷駅がデビューしたのは、1996年3月のダイヤ改正時でした。恵比寿駅ホームも同時に開業し、新宿駅発着の埼京線187往復中、78往復が恵比寿駅の発着などとなりました。当時の資料では、埼京線利用での池袋~渋谷間の所要時間は11分。山手線利用での16分に対し、5分の短縮とうたわれていますが、山手線側に通じる連絡通路(約270メートル)の移動を加えればあまり変わらないとの見方もありました。埼京線ホームが離れていることをたとえ、「南渋谷」駅と称する声もあったほど。24年余りを経て、その南渋谷状態から脱却したと言えます。
埼京線、湘南新宿ラインで使う山手貨物線の線路は、東急東横線渋谷駅が地上から地下に移ったことで、その跡地を使う形で移設することができました。東横線渋谷駅は2013年3月にその歴史に幕を下ろし、同5月までイベントスペース「SHIBUYA ekiato」として使われた後にいよいよ解体工事が始まりました。
解体後、埼京線側では、2014年4月から準備工事がスタート。並列化に向けた本体工事は2015年9月に始まり、2018年5月には、列車の運休を伴う大がかりな工事が行われました。
連絡通路の変化
新ホームの工事が進むのにあわせ、新南口と中央改札を階上部でつなぐ連絡通路は、2018年11月末で廃止に。同12月に、仮設した新ホームが仮の連絡通路として使われるようになりました。
「動く歩道」を備えたかつての連絡通路は、現在では階段の名残や、支柱部分を残すのみとなっています。この支柱や構造物などを除くと、新たな用地ができ、次は山手線の内回りの線路が移設される予定。内回りの2番線、外回りの1番線で2面に分かれている山手線のホームは、線路移設後に2番線側を拡張し、1面2線の構造に変えることになっています。
その後、1番線の線路も移しつつ、島式のホームをさらに拡幅。旧1番線ホームは廃止となり、JR渋谷駅の一連のホームに関する工事は完了となる見込みです。渋谷駅全体の改良工事は、2027年度の完成を予定しています。