実際に撮影
それでは、実際に撮影した画像をご紹介しましょう。なお、以下にご紹介するZ5の実写写真は、すべてサンプル機で撮影したものとなります。
まず最初に使用したのは、Z5と同時に発売される「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」。沈胴機構を採用しており、全長は51mmとコンパクト。レンズ単体の質量は195gで、Z5と組み合わせた場合は870g。焦点距離は限られますが、軽量・コンパクトなためにスナップに最適なレンズとなっています。
コンパクトかつ軽量な組み合わせは、旅先で突然撮影したいものに出会った時に最適。機動性は既存の一眼レフよりもかなり上です。
背面モニターは角度を変えられるチルト機能を持つため、ローアングルでの撮影もモニターを見ながらできます。
焦点距離が限られたレンズではありますが、スナップ写真のほか、編成写真も撮影は可能です。
しかしながら、やはり24-50mmという焦点距離では、鉄道写真、特に編成写真の撮影は厳しいものがあります。
そこでオススメしたいのが、Z5よりも一足早く発売された「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」。8.3倍の高倍率ズームレンズで、重量は約570gとこちらも軽量なレンズ。いわゆる「便利ズーム」と呼ばれる製品の一つではありますが、光学性能を追求するZレンズの一つとして、高い描写性能を誇ります。
200mmまでをカバーするこのレンズは、編成写真を撮るのであれば十分。これ1本で撮影旅行も可能ではないでしょうか。
もちろん、編成写真のみならず、スナップ撮影も可能です。
Z5などのZシリーズは、ミラーレスカメラ専用規格の「Zマウント」を採用しており、従来の一眼レフが採用してきた「Fマウント」のレンズをそのまま使うことはできません。しかし、マウントアダプター「FTZ」を使用すると、ZシリーズでもFマウントのレンズを使うことができるようになります。
新しいマウントへ移行すると従来のレンズ資産が無駄になってしまいますが、FTZを使えばこれまでの資産を活用することが可能。また、Zレンズがカバーしていない焦点距離でも、Fレンズで対応することができます。
ニコンでは、Fマウント用レンズ「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」を2015年に発売しています。500mmという超望遠撮影が可能なレンズながら、希望小売価格は19万2500円と高いコストパフォーマンスを誇るこのレンズは、2020年8月現在は200mmまでのレンズしかラインナップされていないZシリーズと組み合わせるには最適ではないでしょうか。
200-500mmは、三脚座装着状態で約2300gとかなり重いレンズです。Zシリーズにこのレンズを装着した場合、重量バランスがレンズ寄りになってしまいますが、Zシリーズでは本体のグリップ性を追求しているため、構えづらく撮影できない、ということはありませんでした。
スナップ撮影に使うレンズというような外観ではありませんが、超望遠でのスナップもトライ。もともと超望遠での撮影はボケが出やすくなっていますが、APS-C機よりもさらにボケを出し、被写体を強調することができます。
Z5そのものの性能はどうでしょうか。鉄道写真撮影でもハードな被写体として、新幹線をチョイス。時速200キロを超えて走る被写体を捉えてみました。
筆者は、鉄道車両を撮影する際は、普段より連写で撮影しています。ここでも連写で新幹線を捉えたのですが……Z5の連写性能は最大で秒間4.5コマ。1枚目ではきっちりフレームに入りましたが、2枚目ではフレームから外れてしまいました。
筆者が普段から使用するD500が秒間約10コマという高速連写性能を持つことを差し引いても、フルサイズエントリーモデルのD780の秒間約7コマよりも少なく、APS-CエントリーモデルであるD3500の秒間5コマとほぼ同等という数値は、少々物足りない印象を受けました。ただし、在来線を撮影する場合には、物足りなさこそ感じるものの、この連写性能でも有効ではあると感じられます。
もちろん、連写性能に頼らず、一発で決めることができれば、素晴らしい画質の写真が撮影できます。なお、EVFの性能は上位機のZ6とほぼ同等で、表示遅延はまったく気にならないレベルでした。
暗所性能はどうでしょうか。ISO感度は上げれば上げるほどノイズも出やすくなりますが、そこは最新の画像処理エンジン「EXPEED 6」を搭載したZ5。ISO12800で撮影した場合でも、ノイズは少なめ。夜間や地下などの暗所での撮影に活躍してくれそうです。
さすがに最大値のISO51200で撮影すると、ノイズが気になるレベルで出始めます。とはいえ、明るいレンズが無い場合でも、この数値で撮影できることは頼もしいです。
ミラーレスカメラは一眼レフカメラよりも軽量なのが特徴ですが、今回のZ5ではこれが際立っていた印象。荷物がかさばる旅行時では嬉しい性能です。
一方、上位機のZ7やZ6と比べると、性能が絞られている面は否めません。特に連写性能が秒間約4.5コマに絞られている点は、鉄道写真撮影では物足りなさを感じます。
しかしながら、Z5の魅力は、その性能と価格のバランス。連写性能などはたしかに上位機に劣るものの、それでも撮影できる写真そのものは妥協がありません。また、ボディ単体の店頭予想価格は税込18万2600円と、フルサイズ機としてはかなり低価格。この価格でこの性能を持つカメラとしてみれば、かなり優秀なのではないでしょうか。
ニコン3番目ののフルサイズミラーレス機として発売されるZ5。フルサイズ機に興味があったものの、価格や重量で尻込みしていた方、あるいはフルサイズ機を使用しているものの、小型・軽量なカメラが欲しいという方に、ぜひオススメしたい製品です。