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「踊り子」でデビュー、最後の活躍が続く185系

2020年10月4日(日) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

東京駅を始発駅とする東海道本線の昼行特急として、最後に残った特急「踊り子」。この列車の運転開始時より使われているのが、国鉄が開発した185系です。

1980年当時、伊豆方面の優等列車としては、特急「あまぎ」と急行「伊豆」が運転されていました。このうち、「伊豆」には急行型車両の153系が使われていましたが、同形式は1958年にデビューしたもので、老朽化が進んでいました。

国鉄では、この153系の置き換えを目的として、急行列車、そして間合い運用で普通列車にも使える車両の開発に着手。さらには「あまぎ」も「伊豆」と統合することとなり、特急型車両としての性格も求められました。

こうして誕生したのが185系です。設計は京阪神地区の新快速用車両117系をベースとしましたが、特急用車両に求められる装備を持った車両として生まれました。

クリーム地に緑のストライプを配した外観は、これまでの国鉄特急型車両には無いデザイン。一方、特急型車両でありながら、普通列車充当時の乗降時間を短縮するため、普通車のドアは1両あたり片側2箇所の配置。普通車の座席は回転式クロスシートではなく転換式クロスシートとし、さらに窓も開閉可能となるなど、車内外の多くの面で国鉄では前例の無い仕様として生まれました。また、当時の国鉄車両に共通した設計として、腐食しやすい部分にはステンレスやFRPなどを採用。従来の車両よりも長持ちする車両を目指して開発されています。

クリーム地にストライプという、国鉄特急型車両ではこれまでに無いデザインで登場した185系
クリーム地にストライプという、国鉄特急型車両ではこれまでに無いデザインで登場した185系

185系は、1981年3月にデビュー。当初の予定通り、「伊豆」と普通列車に充当されました。同年10月には、「あまぎ」と「伊豆」を統合した特急「踊り子」が運転を開始。これまで「あまぎ」に充当されていた183系とともに、踊り子の運用を担いました。

翌年の1982年3月には、寒冷地仕様の200番台が上野口で営業運転を開始。6月に大宮~盛岡間で東北新幹線が開業すると、上野~大宮間を走り新幹線と接続する「新幹線リレー号」に充当されました。200番台は、1985年の東北・上越新幹線上野開業後は、急行列車を置き換えて生まれた「新特急」に充当。「草津」「谷川」など、新幹線を補完する列車で運転されました。

そんな、新たなスタイルの特急型車両として生まれた185系ですが、特急列車に転換式クロスシートという設備はさすがに見劣りがするため、1995年より200番台からリニューアル工事が進められました。座席は回転式リクライニングシートに交換。塗装も、「踊り子」用は「湘南ブロック塗装」とも呼ばれる湘南色の、200番台は「エクスプレス塗装」とも呼ばれるグレー、赤、黄色のブロックパターンに変更されました。

「エクスプレス塗装」となった185系(南富良野さんの鉄道コム投稿写真)
「エクスプレス塗装」となった185系(南富良野さんの鉄道コム投稿写真)
「湘南ブロック塗装」となった185系
「湘南ブロック塗装」となった185系

また、特急列車と普通列車の双方に充当できる車両として生まれた185系ですが、デッキ付きの片開き2扉車両ではラッシュ時間帯の充当は困難。ピークを外した列車で運転されました。ただし、185系による定期普通列車の運用が消えたのは、2014年3月のこと。前年の2013年3月までは、185系デビュー当時から設定されていた普通列車運用が残存していたなど、当初のコンセプトは細々と、しかしながら長い間用いられていました。

185系に大きな動きが見られたのは、2013年のこと。それまで「踊り子」用車両は田町車両センターに、上野口特急用車両は大宮総合車両センターに分散配置されていた185系ですが、同年3月をもって全車が大宮総合車両センターに集約されることに。これとともに一部編成が組み替えられ、余剰車両は185系として初めての廃車となりました。

一方、余剰となった編成は波動用となり、それまで臨時列車に用いられていた183系を置き換えます。東京~大垣間の夜行快速列車「ムーンライトながら」は、2013年12月からは183系に代わり185系で運転されるようになり、定期列車では顔を見せなかった名古屋圏へも乗り入れることとなりました。

これと前後し、リバイバル塗装をまとった編成が現れます。2010年には、80系を模した湘南色塗装が登場。翌2011年には「踊り子」運転開始時のストライプ塗装、さらに2012年には157系風の塗装と、3種類のリバイバル編成が現れたのでした。

湘南色塗装(左)と157系風塗装(右)(青いE331さんの鉄道コム投稿写真)
湘南色塗装(左)と157系風塗装(右)(青いE331さんの鉄道コム投稿写真)

このうち、ストライプ塗装は1編成にとどまらず、185系全体に波及。他の編成も全てストライプ塗装へ塗り替えられ、湘南ブロック塗装とエクスプレス塗装は2017年に消滅してしまいました。

デビュー以来、「踊り子」や高崎線系統、さらには「湘南ライナー」や特急「はまかいじ」など、さまざまな列車で活躍してきた185系ですが、製造から30年が経過した2010年代に入ると、次第に置き換えが進められます。

2014年には、高崎線系統の特急に、常磐線から転用された651系が投入。1往復のみ残存した185系による「あかぎ」「スワローあかぎ」も2016年に651系に置き換えられ、1982年から続いた高崎線系統での定期運用は約34年で終焉を迎えました。

最初の活躍の場となった東海道線でも、いよいよ終わりの時が見えてきました。JR東日本は2018年、中央線特急へのE353系投入によって余剰となったE257系を、東海道線系統へ投入することを発表。2020年3月のダイヤ改正より、このE257系が「踊り子」での運転を始めました。9月時点ではE257系は「スーパービュー踊り子」用の251系を置き換えたのみですが、185系も今後置き換えが進められることとなります。

185系を置き換えることとなる「踊り子」用E257系
185系を置き換えることとなる「踊り子」用E257系

JR東日本では、定期運用に就く形式としては最後に残った国鉄型特急電車、185系。約40年となる定期運用は、まもなく終わりを迎えます。

 

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