2020年10月31日、東武鉄道の東上線に新たな駅「みなみ寄居」駅が開業します。開業日前日の10月30日は、同駅の開業式典が行われ、駅の内部などが報道公開されました。当日の様子、みなみ寄居駅の概況などを紹介します。
東上線の新駅、みなみ寄居駅の所在地は埼玉県寄居町大字富田地先。東武竹沢駅から北に1.8キロ、男衾駅から南に1.9キロの地点に開設されます。駅の西側には、本田技研工業(ホンダ)の寄居完成車工場があり、2013年の同工場開業時から、新駅の設置が望まれていた経緯があります。新駅に関する協議は、埼玉県内の他の完成車工場を寄居に集約させるとの発表がなされた2017年に本格化。本田技研工業からの請願駅として整備が進められ、今回の開業を迎えます。
東武鉄道の新駅開業は、2017年7月の「東武ワールドスクウェア」駅以来約3年ぶり。東上線では、2002年3月開業の「つきのわ」駅以来17年半ぶりとなります。
寄居町の南側に立地することから、その方位を駅名に使い、「南」を平仮名で表記することで「みなみ寄居」に決定。副駅名として「ホンダ寄居前」が用いられます。
なお、東武鉄道で平仮名を2つ以上使う駅は、みなみ寄居を含めて10。駅名に「みなみ」が付く駅は、横浜線の「八王子みなみ野」、長良川鉄道の「みなみ子宝温泉」がありますが、いずれも地名に基づくため、方位を平仮名で表記して駅名で使う例としては、東西南北を含め、みなみ寄居駅が唯一です。
開業式典と記念ヘッドマーク列車
10月30日の開業式典は、主催者の東武鉄道、請願者企業の本田技研工業、来賓として、寄居町、小川町、埼玉県からそれぞれ挨拶があった後、テープカット、記念撮影といった流れで進められました。
挨拶の中で共通していたのは、新駅開設の経緯とその意義で、主に工場従業員・関係者の交通利便性の向上、工場近辺の道路混雑の緩和、それらを踏まえた環境負荷の低減などについてでした。駅周りをサクラの名所にする計画が進められていることや、駅を契機とした工場と地域との交流の促進も視野に入れていることも挙がり、総じて新駅への大きな期待がうかがえる挨拶でした。
式典に続き、駅舎内の公開と、ヘッドマーク掲出列車の入線、ホームでの記念撮影などが行われました。列車が出た後、ホームや駅構内を見学。その際に撮影した写真に沿って、同駅の概要を紹介します。
みなみ寄居駅のチェックポイント
みなみ寄居駅は、単線区間に設けられたため、ホームの形態は1面1線。そのため、ホーム上の案内などに上り、下りを番線で識別する表示はありません。乗車時には列車の行先を改めて確認する必要がありそうです。
改札の入出場時にも注意を要します。ICカードを使う場合、男衾・寄居方面、池袋・小川町方面では改札通路が分かれており、利用者は対応する側を選ぶ必要があります。
きっぷの場合は、入場時に注意点があり、男衾・寄居方面と東武竹沢駅までの分は同駅でのきっぷの発売はなく、乗降車駅証明書発行機で証明書を出し、係員に申し出て入場することになっています。これは、みなみ寄居駅の運賃設定が特例による取り扱いになっているためで、当面の間続く予定です。
なお、小川町駅以遠の上り方面各駅については、券売機できっぷを購入でき、同方面の改札通路から入ることができます。改札横には駅事務室があり、所定の時間帯に係員が在室しています。不在時はインターホンによる対応になるとのことです。
みなみ寄居駅から寄居完成車工場への通用口付近までは直線距離で200メートルほど。連絡通路によりアクセスできます。駅周辺には、工場以外の建物や店舗などはなく、北側にしばらく進むと住宅地が散見されるというのが現状です。利用者数についても、現段階では明確な想定は出ていないとのこと。将来どのように変貌していくのか、サクラの展開を含めて楽しみにしたいと思います。