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二線級から新幹線へ 飛躍する特急「かもめ」

2020年11月22日(日) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

JR九州は10月28日、九州新幹線西九州ルート(武雄温泉~長崎間)で運行する列車名を、「かもめ」とすると発表しました。

「かもめ」は、2020年現在は博多~長崎間の在来線特急で使われている愛称。もともとは日本で4番目の特急列車に採用された、由緒ある名称です。

長崎本線などを走る特急「かもめ」
長崎本線などを走る特急「かもめ」

日本で初めて「かもめ」の名を冠した列車は、1937年に東京~神戸間で運行を開始した特急「鴎」(本来は旧字体)。日本で4番目の特急列車として運転されていました。当時は先に運転を始めた「富士」「櫻」「燕」に継ぐ立ち位置だった「鴎」ですが、当時の特急列車は文字通りの「特別な急行列車」で、看板列車とは言えずとも、東海道本線の最上級列車群の一翼を担っていました。また、1939年にはそれまで非連結だった展望車の連結が始まり、車両面では先行する3列車に近づいていました。

しかしながら、1937年には日中戦争が始まり、日本は戦時体制に移行。1941年には太平洋戦争が始まり、軍需輸送を含む国内の貨物需要が激増した一方、旅客列車は次第に削減されていきます。1942年には「櫻」が急行列車に格下げされ、愛称が消滅。そして1943年には、「鴎」が廃止されてしまいました。

戦後、旅客需要の復活とともに、特急列車が復活していきます。「かもめ」は1953年に復活。東海道本線での運転だった戦前とは異なり、戦後の「かもめ」は京都~博多間の山陽本線特急として設定されました。

1961年10月のダイヤ改正では、「かもめ」にキハ80系(貫通型先頭車のグループ)を投入。運転区間を京都~長崎・宮崎間に延長し、初めて「かもめ」が長崎駅へと乗り入れました。宮崎駅発着の編成は、1965年には西鹿児島駅(当時)発着へと延長されるものの、1968年には佐世保駅発着へと変更されています。

「かもめ」にも使用されたキハ80系(写真は小樽市総合博物館の保存車両)
「かもめ」にも使用されたキハ80系(写真は小樽市総合博物館の保存車両)

1975年、山陽新幹線の全線開業にあわせて「かもめ」は廃止。東海道・山陽本線の特急列車としての歴史は終わりを迎えました。

翌1976年、長崎本線の電化開業にあわせ、小倉・博多~長崎間の特急列車として「かもめ」が復活。7往復が設定されました。編成は485系8両でしたが、7往復のうち6往復は、同じ長崎本線を走る佐世保線特急の「みどり」と連結。肥前山口駅以東は12両編成での運転となっていました。

JR発足後には、運用車両もさまざまなものが投入されました。1990年には、JRグループ初の特急型電車である783系が「かもめ」での運用を開始。一時期は783系の愛称にちなんだ「ハイパーかもめ」として運転されていました。また、1994年から1996年にかけては、「つばめ」でデビューした787系も定期列車に投入。「にちりんシーガイア」などと共通で運用されていました。

783系による「かもめ」
783系による「かもめ」

また、1992年には特急「ハウステンボス」との連結も始まります。1976年から運転されていた「みどり」との連結列車は、国鉄末期に一旦廃止されていましたが、1989年に復活。これに加え、博多~早岐間で「みどり」と連結する「ハウステンボス」が連結相手となり、博多~肥前山口間では「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」の3列車を連結した運転が始まりました。

この3列車を連結する必要があったのは、博多~鳥栖間の鹿児島本線区間が過密ダイヤだったため。九州新幹線開業前は、熊本方面の特急「つばめ」「有明」が20分に1本運転されており、そこへ1時間に2本の「かもめ」、1時間に1本の「みどり」「ハウステンボス」が走っていました。さらに、久大本線の特急「ゆふいんの森」「ゆふ」や、普通列車、貨物列車のダイヤも織り込まれます。このため、限りある線路容量で列車本数を確保した結果、3列車の連結が見られたのです。

このような3列車を連結した多層建て列車は、国鉄時代には九州以外でも見られたものの、JR発足後の定期列車としては、この「かもめ」他の例が唯一です。

そして2000年には、振り子式車両の885系が「かもめ」でデビュー。カーブの通過速度を高めたことにより、非振り子式車両よりも所要時間を約10分短縮しました。同時に、それまで単独運転の「かもめ」に使われていた783系は、885系によって単独運転列車の運用から撤退し、「みどり」「ハウステンボス」との併結列車に充当されるようになりました。

九州新幹線博多~鹿児島中央間が全通した2011年には、九州の特急列車の運行形態や車両が大きく変わりました。

鹿児島本線では新幹線接続特急「リレーつばめ」が廃止され、「有明」も大幅に削減。そのため、博多~鳥栖間の線路容量に余裕ができ、「かもめ」は全列車が単独運転に。「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」の連結列車は消滅しました。

また、「リレーつばめ」廃止や「有明」削減によって余裕のできた787系が、15年ぶりに「かもめ」定期列車に投入されました。787系は、それまで併結列車を中心に活躍していた783系に代わり、約半数の「かもめ」を担うように。一方、783系による「かもめ」は、1日わずか数本のみの運転となってしまいました。

「かもめ」にも使用される787系
「かもめ」にも使用される787系

東海道本線の特急列車から、山陽本線、長崎本線へと移り変わり、いよいよ新幹線の列車名称となる「かもめ」。その「かもめ」が走る予定の九州新幹線西九州ルートは、2022年秋ごろの開業を予定しています。この時点では武雄温泉~長崎間のみの開業となり、博多~武雄温泉間は在来線特急に乗り継ぐ形となります。

武雄温泉~長崎間開業時に投入される「かもめ」用車両。JR東海が開発したN700Sを採用します(画像:JR九州)
武雄温泉~長崎間開業時に投入される「かもめ」用車両。JR東海が開発したN700Sを採用します(画像:JR九州)

かつて新八代~鹿児島中央間の部分開業時に同様の形態となっていた九州新幹線鹿児島ルートでは、新幹線「つばめ」に接続する特急「リレーつばめ」を博多~新八代間で運転し、新幹線と在来線が接続する新八代駅で対面接続する方法が採られていました。

新たに開業する西九州ルートでも、武雄温泉駅で新幹線「かもめ」と在来線特急が対面で接続する形となります。接続する在来線特急の名称はJR九州からの発表はありませんが、NHKなど一部報道によれば、鹿児島ルートと同じように、リレーを冠した「リレーかもめ」が予定されています。

かつては「燕」などの看板列車よりも一歩後ろの立ち位置であった「鴎」「かもめ」。まもなく日本の鉄道の最高峰である、新幹線の仲間入りを果たします。

 

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