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将来は編成組み替えも? 横須賀・総武快速線用のE235系1000番台お披露目

2020年12月11日(金) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

JR東日本は12月11日、2020年12月に営業運転を開始する予定の、横須賀・総武快速線用E235系1000番台を報道陣に公開しました。

横須賀・総武快速線用E235系1000番台
横須賀・総武快速線用E235系1000番台

E235系1000番台は、2015年に山手線で営業運転を開始したE235系の横須賀・総武線バージョン。短距離利用の多い山手線用に対し、中距離移動の需要があるため、グリーン車の連結やトイレの設置など、一部仕様が変更されています。

「スカ色」をまとった車体

E235系1000番台は、既存のE217系同様、基本編成が11両編成、付属編成が4両編成の組成。基本編成の4・5号車は、2階建てグリーン車となっています。

外観のカラーリングは、これまでの横須賀・総武快速線用を踏襲した、通称「スカ色」。車体側面は、山手線用の0番台では縦方向に帯が入っていますが、1000番台ではE217系同様、横方向に帯が入っています。なお、0番台はデザイナーの奥山清行さんがデザインを手掛けた車両ですが、1000番台では、カラーデザインは総合車両製作所が担当したということです。

既存のE217系(左)から「スカ色」を受け継いだE235系(右)
既存のE217系(左)から「スカ色」を受け継いだE235系(右)

普通車の車体外観は、カラーリング以外は0番台とほぼ同じ。雨どいが目立たない車体肩部のデザインや、フルカラーLEDの行先表示器といった要素は0番台から引き継がれています。また、0番台では出発時などで先頭部の行先表示器に花などの絵柄を表示する機能がありますが、1000番台でも「運用時期に合わせて施行を考えている」(JR東日本 横浜支社運輸部車両課長 井上春彦さん)といいます。

側面のLED行先表示器
側面のLED行先表示器

0番台との相違点として目立つのは、ドアの半自動機能。長時間停車する際にドアを利用者が操作できるスイッチがドア横に設置されており、これは横須賀・総武快速線では初めての導入となります。

半自動ドアのボタン
半自動ドアのボタン

グリーン車は全席コンセント設置、普通車は全車ロングシートに

車内は、普通車では山手線用の0番台を改良した内装に。グリーン車も従来形式より居住性が向上しています。

従来のE217系では一部がセミクロスシートだった普通車ですが、E235系では混雑に対応するため、全車両がロングシートとなりました。また、0番台同様に各車両へフリースペースを設置。優先席は車体端1箇所から両端部へと増設されています。このほか、E217系の基本編成では両先頭車の1・11号車、グリーン車の5号車にトイレが設置されていますが、E235系では1・5・6号車に設置位置が変更されています。

普通車の車内。全車ロングシートとなりました
普通車の車内。全車ロングシートとなりました
各車の車端部にはフリースペースを設置
各車の車端部にはフリースペースを設置

0番台との違いとしては、ドア上のVIS(デジタルサイネージ)のサイズ。0番台では17インチだった画面ですが、1000番台では21インチに大型化されました。

21インチに大型化された、ドア上のデジタルサイネージ
21インチに大型化された、ドア上のデジタルサイネージ

また、0番台では一部が透明座席の袖仕切りは、透明な部分が無いものに。JR東日本の担当者によると、「お客様が寄りかかった際に、座っているお客様が不快に感じるというご意見があった」ことを踏まえた変更だということです。

グリーン車は、車両設計こそE233系やE217系などから引き継がれていますが、内装は大きく進化。妻面が黒基調になり、落ち着いた雰囲気を演出しています。案内表示は、普通車同様のデジタルサイネージに。同社の普通列車グリーン車としては初めて、各座席にコンセントが設置されたほか、公衆無線LANサービスも提供する予定です。

E235系のグリーン車
E235系のグリーン車
各座席の肘掛けにコンセントが設置されています
各座席の肘掛けにコンセントが設置されています

乗務員室は、0番台同様のつくり。山手線用のATC関連の装備は無い一方、総武快速線などのホームドアに対応する無線アンテナや、TASC(定位置停止装置)のスイッチなどが設置されています。なお、改造でホームドアに対応したE217系では、ホームドア連携用のアンテナが縦に設置されているため、乗務員から「視認性が悪くなった」との苦情があったとのこと。E235系では、アンテナを横向きに搭載し、視認性の悪化を最小限に抑えています。

E235系1000番台の乗務員室
E235系1000番台の乗務員室

将来は10両+5両編成への組み替えも想定?

床下機器は0番台を踏襲していますが、1000番台では新たに非常走行用のバッテリーを搭載。停電などで架線電力による自走が不可能となった場合でも、バッテリーから供給した電力で、約10キロ程度の距離を自走できます。なお、バッテリーは基本編成のみの搭載。付属編成には搭載されていません。

非常走行用のバッテリー
非常走行用のバッテリー

また、バッテリーを搭載した2号車のモハE234形1300番台、6号車のモハE234形1200番台では、限りある床下スペースの余裕が少なくなっています。そのため、ブレーキシリンダーへ送る圧縮空気を溜めるタンク「元空気ダメ」を、屋根上に搭載していることも特徴となっています。

屋根上に設置された元空気ダメ。一般的には床下に設置されることが多い機器です
屋根上に設置された元空気ダメ。一般的には床下に設置されることが多い機器です

基本編成と付属編成の連結時に情報を伝達する電気連結器は、E217系の1段から2段に変更。上下ともに物理的に接続する電気接点タイプですが、上段は従来型の伝送方式で、下段はイーサネット用となっています。E235系が採用する最新型のモニタ装置「INTEROS」では、伝送速度に優れるイーサネットを採用したことで、従来のモニタ装置「TIMS」よりも10倍となる、100Mbpsの伝送速度を実現しています。

2段となった電気連結器
2段となった電気連結器

なお、既存のE217系では、TIMSよりも旧型の「MON」を搭載しています。仮にE235系とE217系を連結する場合には、INTEROSとMONの互換性を考慮しなければなりません。JR東日本の担当者によると、互換性の確保も検討はしたものの、結局はこれをしない方針になったとのこと。そのため、営業運転でE235系とE217系が連結して走ることはできません。

ところで、横須賀・総武快速線では、基本編成の久里浜方に付属編成を連結するため、E217系の基本編成では、久里浜方の先頭車にのみ電気連結器を設置しています。しかしながら、E235系1000番台では、付属編成を連結しない千葉方の先頭車にも、電気連結器が設置されています。

JR東日本の担当者は、「まだ検討段階にある」と断りつつも、「将来的に付属編成の連結位置を入れ換える際に対応するため」と説明。東海道線では東京方(横須賀・総武快速線の千葉方に相当)に付属編成を連結していますが、これによって両線のグリーン車連結位置が異なってしまい、たとえば戸塚駅での対面接続の際、両線のグリーン車の乗り継ぎにはかなり移動する必要がある、といったことを理由に挙げていました。

また、両線でグリーン車の連結位置が異なるということは、ドア位置の違いも生まれてしまいます。これは筆者の推測ですが、将来的に横須賀線でホームドアの導入を進める際、武蔵小杉駅のように複数路線の列車が発着する駅では、ドアの配置パターンが多くなると、それだけホームドアの設置が困難になってしまいます。ホーム上の安全性向上を目指すホームドアの設置のためにも、両線のグリーン車連結統一、すなわち付属編成の連結位置変更が検討されているのではないでしょうか。

E235系1000番台は、12月21日に営業運転を開始する予定。既存のE217系と同じ、基本編成51本、付属編成46本の、計745両を投入する計画で、E217系を順次置き換えていくということです。なお、新型コロナウイルスの影響で鉄道各社の経営は厳しさを増している状況ですが、JR東日本では、この車両の投入計画に変更はないとしています。

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