1960年代、鉄道貨物輸送が国内物流の主力を担っていた頃。当時の国鉄では、戦前から活躍が続く茶色の旧型電気機関車に代わる、新世代の電気機関車の導入を進めていました。
東海道本線などの直流幹線向けとしては、1960年にEF60形がデビューしていました。この車両の欠点を改良する形で、1965年にデビューしたのが、2021年現在も運用が続く「EF65形」です。
1960年にデビューしたEF60形は、直流平坦線での貨物列車や寝台特急列車のけん引に使用された万能機でした。しかしながら、もとは貨物列車けん引用に低速時の出力を重視していたため、高速性能が要求される、東海道・山陽本線の高速貨物列車や寝台特急列車のけん引に向いているとは言えませんでした。
そこで、EF60形よりも高速寄りの性能を持つ機関車として開発されたのがEF65形。EF60形をベースとしながらも、性能を高速寄りの設定とし、さらに加速時に自動でモーターへ流れる電気の回路を切り替える「自動進段式」の制御器を平坦線用機関車としては初めて搭載するなど、新技術を採用した機関車として誕生しました。
EF65形は、1965年1月に1号機が落成。この1号機を含む0番台は135両が製造され、一般貨物列車用として扱われました。
続いて、1965年6月に登場した500番台は、寝台特急列車や高速貨物列車に対応した車両。このうち17両(後に0番台から8両が改造編入)は、20系客車けん引用装備を備えた通称「P形」として、17両は、P型に加えて重連運転用の総括制御機器や10000系貨車けん引用の装備を備えた通称「F形」として、合計で34両が新製されました。
さらに1969年には、EF65形の決定版となる1000番台が登場。耐寒・耐雪装備を備え、寒冷地での重連運用向けに前面に貫通路を設置した形態となりました。このグループでは、F形の10000系貨車けん引用装備は省かれたものの、その他の部分はP形とF形の双方の機能を備えていることから、通称「PF形」と呼ばれています。
このPF形は、当初は1970年まで製造された0番台と同時並行で量産されていましたが、後に直流汎用電気機関車EF65形としての標準形態と位置づけられ、1979年まで139両の製造が続きました。末期に製造された車両については、耐寒・耐雪装備を省略して東海道・山陽本線用となるなど、当初は寒冷地用向けだった立ち位置も変化していきました。
当初は貨物列車や寝台特急列車の花形けん引機として活躍したEF65形。後にEF66形などが登場した後も第一線での運用が続いていましたが、国鉄分割民営化後には、車齢が高い0番台を中心に、次第に引退する車両が増えていきます。
JR旅客各社では、当初は「はやぶさ」「富士」などの東海道筋花形寝台特急列車の運用こそEF66形に譲っていたものの、「出雲」や「銀河」などの運用を持っていました。しかしながら、これらも車両置き換えや列車そのものの廃止によって運用が減少。旅客列車の定期運用は、2008年3月の急行「銀河」廃止をもって消滅してしまいました。
一方、JR貨物においても、EF200形やEF210形の導入によって、次第に置き換えが進められていきます。2011年にはPF形以外の運用が全て終了。2020年2月現在では新鶴見機関区に37両の在籍となっています。また、JR化直後の1990年には、山陽本線瀬野~八本松間(セノハチ)用補助機関車として、0番台5両がEF67形100番台に改造。2020年2月現在では、3両が残存しています。
2021年現在、JR貨物ではEF210形の増備を進めているものの、EF65形は未だ現役。全般検査を受けている車両もあり、しばらくは貨物列車をけん引する姿は見られそうです。なお、JR貨物のEF65形は、一時期は現役車両全てが同社独自の更新色となっていましたが、2016年頃より、検査時に国鉄時代の塗装に変更される車両が増加しています。
一方、旅客会社に配置されるEF65形は全て定期運用はなく、残存車両は、JR東日本高崎車両センターの1両、同田端運転所の5両、JR西日本下関総合車両所本所の10両となっています。
JR西日本の車両については、工事列車や団体臨時列車、配給輸送列車のけん引用として活躍。うち1両は、「特別なトワイライトエクスプレス」けん引用に、2015年に「トワイライトエクスプレス」塗装へと変更されています。
JR東日本の車両も、JR西日本同様に、工事列車や臨時列車、配給輸送列車のけん引用として活躍しています。しかしながらJR東日本では、機関車の置き換え用として、電気式気動車「GV-E197系」と、事業用電車「E493系」を、2021年春以降にそれぞれ導入することを発表しています。特に、高崎車両センター所属の501号機は、現存するEF65形では最古参。今後の動向が注目されています。