毎年恒例となっている、春のJRグループダイヤ改正。3月13日に実施される今年のダイヤ改正では、東海道本線で長年通勤客を支えてきた「湘南ライナー」が廃止となります。
「湘南ライナー」は、朝および夕夜間のラッシュ時に運転される、いわゆる「ホームライナー」の1つ。普通席は520円(2021年2月現在)のライナー券を購入すれば必ず座れる列車として、長距離を移動する通勤利用者に愛用されてきました。
ホームライナーの始まりは、1984年に東北本線の上野~大宮間で設定された列車でした。特急列車の運用を終え、車両基地に向かう回送列車を有効活用すべく、客扱いを実施したのです。この列車が人気を呼び、総武線や阪和線などでも、同様に回送列車を活用したホームライナーが設定されていきました。
そして、東北本線でのホームライナー運転開始から2年後、1986年に、「湘南ライナー」は運転を開始しました。この列車で特筆されるのは、ライナー列車の運転を前提とした運用が組まれたこと。それまでのホームライナーと異なり、車両基地へ回送する列車の活用ではなく、ライナー列車運転のために、ラッシュ時に東京を発着する運用を新規で設定したのです。
「湘南ライナー」は、当初は東京~小田原間で運転。車両は特急「踊り子」に使われる185系が投入されました。運転開始2年後の1988年には、新宿駅発着の「湘南新宿ライナー(現:おはようライナー新宿・ホームライナー小田原)」が登場。こちらは東海道貨物線を経由する列車で、東海道本線と新宿方面を直通する定期列車としては初めてのもの。現在の湘南新宿ラインの先駆けともいえる列車となりました。
また、東京駅発着の「湘南ライナー」でも、ラッシュ時の一般列車用の線路容量を確保するため、東海道貨物線経由で運転する列車が現れました。
運用車両も、当初は185系のみでしたが、1992年には全車2階建て車両の215系が登場。一時期は「スーパービュー踊り子」用の251系や、中央線特急用の183系、E351系、E257系もされ、バリエーションに富んだ車両が見られる列車となりました。
そんな「湘南ライナー」は、長距離「痛」勤を避けられる列車として大人気に。乗車に必要な「ライナー券」1か月分がセットとなった「ライナーセット券」も発売されていましたが、一部駅では発売前に整理券を配布するほどの人気がありました。
かつては東北本線や総武線、中央線など、首都圏のJR各線で運転されていたホームライナー。1998年に特急「フレッシュひたち」へと置き換えられていた常磐線の列車以外は、2000年代に入っても継続して設定されていました。
しかしながら2010年代に入ると、東北本線、総武線、横須賀線では、普通列車に置き換えられて運転を終了。高崎線、中央線・青梅線では、特急列車へと格上げされ、ライナー列車としての運転はなくなりました。
そして2021年3月13日のダイヤ改正で、「踊り子」で使用している185系は、E257系リニューアル車両に置き換えられて定期運用を終了。185系が使用されてきた「湘南ライナー」も、E257系によって運転される新設の特急「湘南」に役目を譲り、運転を終了します。
JR東日本の広報部は、「湘南ライナー」の特急列車への置き換えについて、「E257系リニューアル車両による運用が可能となったこと」が理由だと説明しました。E257系は、従来の湘南ライナー使用車両よりも乗り心地や車両の静粛性が向上しているほか、バリアフリー設備といった設備面の利便性もアップしているといいます。
また、従来の「湘南ライナー」では、座席こそ確保されているものの座席指定はなく、良い座席を得るためには乗車列に並ぶ必要がありました。同社では、常磐線や中央線と同様に、普通車の料金体系を指定席に統一する「新たな着席サービス」の導入によって、「従来の着席サービスよりも快適かつ便利な列車となるため、特急とすることが望ましい」という判断から、特急列車へ置き換えることとしたと回答しています。
春のダイヤ改正では、新潟エリアで運転されているライナー列車「らくらくトレイン村上」も運転を終了。同じく新潟エリアの「らくらくトレイン信越」「おはよう信越」は、全車指定席の快速「信越」へと変更され、「乗車整理券」の代わりに一般的な指定席券が必要な列車へと生まれ変わります。
これにより、JR東日本管内で乗車整理券やライナー券が必要なライナー列車は消滅。JRグループ全体を見まわしても、残るは札幌圏とJR東海管内のみとなります。
【3月2日10時30分追記:ライナー券の価格を訂正いたしました】