ファンの筆者目線で見た4つのギモン
このE131系、鉄道ファンである筆者の目線で見ると、いくつか気になる点がありました。
まず1つ目は、車両の帯の色が、既存車両と異なること。これまで房総各線で使用してきた209系の帯は、海をイメージした青色と、菜の花をイメージした黄色の2色となっています。E131系も209系と同様の配色ですが、青色ではなく水色を採用しています。
この点について、JR東日本 鉄道事業本部 運輸車両部 車両技術センター所長の菊地隆寛さんは、新型車両という新鮮さを出すため、明るめの色を採用したと説明しています。
2つ目は、車両に搭載している「モニタ装置」。機器の動作状態の監視や、加減速、車内放送などの車両間伝送を担うこの装置ですが、JR東日本では、E231系やE235系に対しては、「TIMS」や「INTEROS」といった、多数の形式に搭載されるシステムを採用しています。一方、このE131系が搭載しているのは「MON(モン)」。E235系と同世代の車両ではありますが、最新型システムのINTEROSではありません。
この点について聞いてみると、「E131系では、INTEROSに求められるほどの性能は不要なため」とのこと。E131系はローカル線で運用されるため、高機能なINTEROSは「総合的なバランスを考慮して」搭載せず、MONという形でモニタ装置を搭載したといいます。
もちろん、E131系のMONが低性能というわけではありません。車両のモニタリングシステムはE235系のINTEROSと同等の機能を持たせているというほか、車両間の伝送系統についても、E235系同様に、伝送速度に優れるイーサネットを採用しているということです。
3つ目は、他形式と連結した形での営業運転が可能なのか。E131系の運用線区は、所属基地である幕張車両センターと離れており、同センターから木更津駅などへ回送する必要があります。そのため、E131系導入のプレスリリースが発表された際、一部SNSでは、「他形式と連結した形で送り込み運用が組まれるのでは?」という推測が、鉄道ファンの間で見られました。
これについては、「E131系は同系列同士での連結のみ想定している」とのこと。残念ながら、209系やE235系と連結して営業運転に入る姿は見られないようです。
連結に関連した話題として、E131系の電気連結器は、209系とは異なる上下2段の構成となっています。これは、上下ともに物理的に接続する電気接点タイプですが、上段は従来型の伝送方式で、下段はイーサネット用。通常はカバーに覆われていて見ることができませんが、下段には太めの電気接点が配置されています。近年は伝送速度向上のためにイーサネットを採用する車両が増えており、E131系やE235系のほか、JR西日本の227系、JR九州の821系などでも、イーサネット対応の電気連結器を搭載しています。
そして4つ目は、なぜ新型車両を導入したのか。JR東日本では、ドア数が異なるものの、同じ直流区間向けの短編成一般形車両として、新潟エリアにE129系を導入しています。
この点について菊地さんは、「線路や車両のモニタリング装置といった「CBM」の実現や、ワンマン運転用のカメラを設置するためには、E129系では不可能だったため、新形式を立ち上げた」と説明しました。
また、具体的にどの線区へ導入する、という計画はまだ無いそうですが、「比較的短い直流電車を使っている路線は多数あるので、今後の展開に際し、拡張性が効くさまざまなシステムを盛り込むため」、E131系を開発したともいいます。具体的な言及はありませんでしたが、今後、相模線のような旧型かつ短編成の車両が使われている直流路線に対しても、E131系が投入されていくかもしれません。
E131系の導入によって、内房線や外房線の末端区間、鹿島線で運用されている209系の一部は置き換えられることとなります。車両置き換えにより、これまでの4・6両編成などから、最短で2両編成で運転される列車が生まれます。JR東日本では、列車の混雑率に応じて車両運用を組んでいくとしており、混雑する列車に大しては、従来通りの209系や、E131系の4両編成を投入するとしています。
なお、JR東日本では、現時点では房総エリアへのさらなるE131系投入の予定は無いとしており、現段階では209系の全てをE131系で置き換えるという計画は無いそうです。
このE131系は、総武快速線向け車両を除く、房総エリアローカル列車用の車両としては、113系以来約50年ぶりとなる新型車両。菊地さんは、「新しい最新の設備や快適性を感じてもらい、愛着を持ってほしい」とコメントしました。
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スペシャル動画(3分44秒)