4月19日、神奈川県海老名市にオープンする、小田急電鉄の博物館「ロマンスカーミュージアム」。3月26日、開館より一足先に、館内が報道陣に公開されました。
「“子ども”も“大人”も楽しめる鉄道ミュージアム」がコンセプトのロマンスカーミュージアム。小田急電鉄初となる屋内常設展示施設の様子をご紹介します。
ロマンスカーミュージアムは、小田急電鉄初の屋内常設展示施設。海老名駅の隣接地に立地し、駅とは自由通路で直結しています。
館内は、「ヒストリーシアター」、「ロマンスカーギャラリー」、「ロマンスカーアカデミア」、「ジオラマパーク」、「キッズロマンスカーパーク」、ミュージアムカフェ「ROMANCECAR MUSEUM CLUBHOUSE」、ミュージアムトレインショップ「TRAINS」、「ステーションビューテラス」といった構成。歴代ロマンスカーの車両展示のほか、小田急線沿線を模した鉄道模型ジオラマや、7000形「LSE」の実物運転台を使用した電車運転シミュレーターなどが設置されています。
ミュージアムの外観は、花型車両を展示するミュージアムというには少々地味にも見えます。これは、海老名検車区に隣接する施設ということで、検車庫をコンバージョンし、華美にならずシンプルなイメージでデザインしたとのこと。ちなみに、館内も車両展示区画を中心に無機質なデザインとなっていますが、これは色を抑えることで、ロマンスカーをはじめとした展示物やコンテンツが引き立つような空間を目指したということです。
小田急の歴史をたどる「ヒストリーシアター」
エントランスを入り、1階に降りると、まず「ヒストリーシアター」に到着。ここには、1927年の小田急線(当時は小田原急行鉄道小田原線)開業時に導入されたモハ1形が展示されています。
小田急では1927年から1960年まで活躍したというモハ1形。小田急での引退後、他社に譲渡されていた車両を引き取り、1981年より保管してきました。このミュージアムでは、小田急電鉄の歴史を物語る役者として、一番始めのゾーンに展示されることとなりました。
モハ1形の横では、小田急の歴史をたどる映像が放映されています。歴史をたどる、とは言っても、硬苦しい内容ではなく、タップダンスやジャズに乗せた軽快なものとなっています。
歴代ロマンスカーが展示される「ロマンスカーギャラリー」
ヒストリーシアターを抜けると、ミュージアムの目玉である「ロマンスカーギャラリー」です。3000形「SE」から20000形「RSE」まで、引退したロマンスカー5形式が展示されています。
最初に目に入るのが、3000形「SE」、3100形「NSE」、7000形「LSE」の3形式。いずれも「バーミリオンオレンジ」を基調とした車両です。登場順の配置ではあるのですが、オレンジ系の3車種の並びには、ロマンスカーの伝統色であり、最新のロマンスカーである70000形「GSE」にも受け継がれる「バーミリオンオレンジ」を強調する意図もあるということでした。
SEは、ロマンスカーギャラリーの入口側先頭車は登場時の形に復元した状態ですが、反対側の先頭車は、5両編成化後の「SSE」時代の顔となっています。また、NSEも同様に、入口側先頭車は列車愛称表示がアクリル板の仕様ですが、反対側の先頭車は現役末期の方向幕仕様となっています。
3車種の奥に展示される10000形「HiSE」は、1両のみの展示ですが、後尾側ではロマンスカーの特徴である「連節台車」が見学できるようになっています。
HiSEの横には、20000形「RSE」が。こちらは北側の窓に面しており、ミュージアム外部からも車両を見ることができます。
展示車両は、SEとNSEが先頭車2両・中間車1両の計3両(SEのうち先頭車1両は「SSE」)、LSEとHiSEが先頭車1両、RSEが先頭車・中間車各1両。HiSEとRSEの先頭車は車内に立ち入り可能ですが、SEとNSE、RSEの中間車は、安全性などのためにデッキ部のみ車内見学可。LSEは車内見学が不可能となっています。
車両展示スペースの端にはシャッターがあり、外部から車両を搬入できるようにも見えました。将来、現在運行中のロマンスカーが引退した際、展示車両を追加する可能性があるのか質問したところ、「現段階では決定していない。引退するタイミングで検討することになると思う」ということ。つまり現状では、将来の30000形「EXE」や50000形「VSE」が引退した際に車両を展示することは決定事項ではないようです。
沿線を再現した巨大な「ジオラマパーク」
ロマンスカーギャラリーから2階へ上がると、そこは「ジオラマパーク」。新宿から箱根まで、小田急線沿線を模型で再現した展示です。博物館のジオラマ展示では、車両が線路を一周するようなループ線タイプのものが多いのですが、このロマンスカーミュージアムでは、実際の線路のように新宿~片瀬江ノ島・箱根湯本間を線状に再現。その分スペースも広大で、広さはなんと約190平方メートルです。
ジオラマは、通常時は「小田急沿線の1日」をテーマに列車が走行。背景と連動し、列車の動きや街の明かりが変化していきます。そしてその合間には、プロジェクションマッピングを駆使したジオラマショー「時間と距離のロマンス」が上演されます。
このほか、ジオラマ内には100円で3分間模型を運転できるコーナーも。70000形「GSE」と、江ノ島電鉄500形を、実際の車両で使われていた運転台で操作できます。
誰でもロマンスカーの運転士に「ロマンスカーシミュレーター」
ロマンスカーギャラリーと並び、ミュージアムの目玉となりそうなのが、「ロマンスカーシミュレーター」です。LSEの実物運転台を再活用したシミュレーターで、実際の運転席から撮影した映像で運転体験ができます。
体験レベルは、「入門」「初級」「上級」の3段階。「入門」では、最初の操作以外は自動で走行するということで、運転操作が難しい子どもでも、運転体験ができるといいます。運転可能区間は、「入門」が成城学園前→新宿間。「初級」「上級」ではこれに加え、秦野→本厚木間、本厚木→町田間の体験も可能です。
シミュレーターの体験は、1回500円。券売機で抽選券を発券する当日抽選制となっています。
このシミュレーターが設置されている「ロマンスカーアカデミア」には、他にもコンテンツがあります。シミュレーターのすぐ後ろにあるのは、「インタラクティブアート"電車とつくるまち"」。何もない土地の上で手を動かすと、線路が引かれ、駅を中心に町が発展していく……という鉄道事業者のまちづくりが、遊びながら体験できるコンテンツです。
また、シミュレーターとは離れた1階には、同じロマンスカーアカデミアの展示として、ロマンスカーや小田急電鉄の歴史を学べるコーナーが設置されています。年表や雑誌、下北沢駅付近複々線化事業の模型などを展示するこのコーナーでは、講演やワークショップなどで活用することもできるといいます。
子どもも楽しめる「キッズロマンスカーパーク」と「ステーションビューテラス」
子どもが楽しめるエリアが、シミュレーター横の「キッズロマンスカーパーク」です。ロマンスカーをモチーフとし、展望席や2階の運転席などを設けた遊び場や、オリジナルのロマンスカーなどをペーパークラフトで作り、そのペーパークラフトをキッズジオラマ内で走らせることができる体験コーナー(1回500円)などが設置されています。
施設の屋上には、海老名駅が見渡せる「ステーションビューテラス」があります。テラスには、ロマンスカーの海老名駅発着・通過時刻表が設置されており、どのロマンスカーがいつ通過するのかを知ることができます。
「走る喫茶」再現メニューも ミュージアム内のカフェ
ミュージアム内に設置される「ROMANCECAR MUSEUM CLUBHOUSE」。こちらは入館料不要で、誰でも利用できます。
カフェのメニューには、かつてロマンスカーの車内シートサービス「走る喫茶室」で提供された「クールケーキと日東紅茶のセット」や、ロマンスカーを描いたドリンク「飲める車両図鑑」、「ロマンスカードッグ」などがラインナップ。座席は海老名駅に面したものもあり、ロマンスカーを眺めながら喫食できます。
ロマンスカーミュージアム概要
ロマンスカーミュージアムは、4月19日(月)10:00に開業する予定。新型コロナウイルス対策のため、当面の間は事前予約制での入館となります。予約受付は、4月1日(木)12:00に開始。5月以降は1か月前の12:00より予約を受け付けます。
住所:神奈川県海老名市めぐみ町1-3(海老名駅北口すぐ)
営業時間:10:00~18:00(最終入館17:30)
料金:大人(中学生以上)900円、小学生400円、幼児(3歳以上)100円
※3歳未満は無料 ※館内に一部有料コンテンツあり
休館日:第2・第4火曜日 ※別途休館日の設定あり
※当面の間、入館にはウェブサイトでの事前予約が必要