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引退間近! オール2階建て新幹線E4系が誕生した東北・上越新幹線の事情とは?

2021年9月11日(土) フォトライター 栗原景

8両編成単位で柔軟な運用を可能に

当時、東北新幹線には1997年3月に開業したE3系「こまち」と併結する新型車両として8両編成のE2系が登場していました。しかし、E2系の乗車定員は630名で、増加する通勤需要を満たすことはできません。

そこで、E2系をベースに、オール2階建て車両としてリファインされたのがE4系です。E2系と同様8両編成を基本とし、山形新幹線400系や秋田新幹線E3系、あるいはE4系同士など、2本の編成を柔軟に併結できるよう設計されています。E4系同士を連結した場合は座席定員1634名と、高速鉄道として世界一の乗車定員を誇りました。

E4系は、走行機器や運転台の設計などをE2系と共通化している。先頭部は、E4系は前照灯を運転台下に配置したため、断面積の変化が調整され、より波打つようなデザインになった(編集部撮影)
E4系は、走行機器や運転台の設計などをE2系と共通化している。先頭部は、E4系は前照灯を運転台下に配置したため、断面積の変化が調整され、より波打つようなデザインになった(編集部撮影)

E4系は、E1系の登場からわずか3年あまりで登場した後継車両で、サービス面の多くをE1系から引き継いでいます。2階自由席はやはり3列×3列の非リクライニング6列シートですし、自由席のデッキには折り畳み式のジャンプシートが用意されています。

E1系から引き継がれた、2階自由席の6列シート。「詰め込み式」と言われたが、ピーク時でなければ6列すべてに着席することはまれで、ベンチシートのような構造を好む人も多かった
E1系から引き継がれた、2階自由席の6列シート。「詰め込み式」と言われたが、ピーク時でなければ6列すべてに着席することはまれで、ベンチシートのような構造を好む人も多かった
同じ自由席でも1階席は指定席と同じ5列シート。90年代に流行した、背もたれだけでなく座面もボタンで動かすことができるシートだ
同じ自由席でも1階席は指定席と同じ5列シート。90年代に流行した、背もたれだけでなく座面もボタンで動かすことができるシートだ
天井が普通車よりも5cm高いグリーン車。わずかな違いだが、意外に印象が異なった
天井が普通車よりも5cm高いグリーン車。わずかな違いだが、意外に印象が異なった
1階・2階への階段はE1系から引き続き半らせん式を採用。中央は車内販売ワゴンのエレベーターで、一部車両では車いすにも対応している
1階・2階への階段はE1系から引き続き半らせん式を採用。中央は車内販売ワゴンのエレベーターで、一部車両では車いすにも対応している

空力性能はE1系より大きく進化しました。現代の新幹線の先頭形状は、スピードを出すための流線形というよりは、特にトンネルで騒音を出さないためのデザインです。高速でトンネルに突入すると、内部の空気が圧縮されて反対側から押し出され、微気圧波と呼ばれる爆発音を発生させます。これを防ぐために、列車の先端部から徐々に車体断面を大きくすることで、ゆっくりとトンネルに入っていくのと同じ効果が得られます。

オール2階建ての巨体ながら、流れるような先頭形状でスマートさも兼ね備えているE4系
オール2階建ての巨体ながら、流れるような先頭形状でスマートさも兼ね備えているE4系

E1系の頃は、単純に先頭部を尖らせたくさび形でしたが、E2系、そしてE4系になると、3次曲面を多用してより効果的に微気圧波を抑える形状に進化しています。

通勤ラッシュ用の車両としても、山形新幹線などと併結する長距離列車としても活躍できる柔軟性を備え、文字通りマルチに活躍できる新幹線車両となったE4系は、E1系の3倍近い26編成208両が製造されて、東北・上越新幹線を中心に活躍しました。しかし、やがてE4系にも逆風が吹き始めます。それは、スピードとバリアフリーという問題でした。

次回は、E4系が引退する理由について、解説いたします。

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