東武鉄道は10月15日、「SL大樹」用の展望車両を報道陣に公開しました。
この展望車は、JR四国から譲渡された12系を改造した「オハテ12形」。「ぶどう色」のオハテ12-1(元オロ12-5)と、青色(青2号)のオハテ12-2(元オロ12-10)の2両です。
車両の改造テーマとしては、SLが数多く活躍していた時代、昭和20~30年代の客車をイメージ。オハテ12-1はぶどう色に赤帯とし、窓枠を茶色に塗装することで、旧型客車らしさを表現。オハテ12-2は青色に緑帯とし、窓枠を灰色とすることで、国鉄10系のグリーン車をイメージした外観としました。
展望デッキは、車端部に設置。中間車への設置のため、JRの「SLばんえつ物語」や「SLやまぐち」などのような、迫力ある後面展望や、全力で走る機関車後部の風景が見られるわけではありませんが、仕切りは柵のみのオープンデッキとなっているため、トロッコ列車のような雰囲気に。SLの煙や石炭の燃える匂い、そして風を感じられる車両となっています。
展望デッキの設置にあわせ、客室内もリニューアルされています。
ボックスシートのデザインは、旧型客車をイメージし、昭和レトロを感じられるものに。各ボックスには大型テーブルが設置されました。また、床敷物も木目調に変更されています。
ちなみに、展望車に改造された12系は、譲渡前のJR時代にリクライニングシート装備のグリーン車に改造されていました。今回は登場時のようなボックスシートに復元されていますが、見たところ12系のものとは別物。担当者によると、「他社から新たに調達し設置した」ということです。
客室のデッキ寄りには、アテンダントの業務用基地となるアテンダントカウンターと、テレビモニターやパンフレット台などを備えたギャラリースペースを新設。これまでアテンダントは車掌室などの業務スペースで業務を実施してきましたが、新たに専用のスペースが設けられたことになります。
加えて、展望車には「メロディホーン」が鳴動可能な車外向けのスピーカーが設置されました。メロディーは「SLが力強く走る様子」「沿線から手を振ってくださる方へ」をテーマとした2曲。倉沢大樹さん作曲の楽曲で、「沿線の皆様からのおもてなしに対して感謝を伝えるツール」として、SL観光アテンダントにより走行中随時放送するといいます。
さらに車体側面には、「SL大樹」のエンブレムを配置。これまで同列車のロゴは前後のヘッドマークやテールマークのみに掲出されていたため、車体への直接表記は初めてとなります。
東武鉄道では、展望車を導入する理由として、従来の14系では側面窓が開けられなかったため、SL列車であると感じにくいと、利用者からの意見が寄せられていたことを挙げています。今回展望車に改造された12系は、開放型の展望室を設けた上、側面窓も開閉が可能なため、SLらしさを感じられる車両となっています。
この展望車は、10月17日に運転される団体臨時列車が、初の営業運転となります。定期「SL大樹」においては、オハテ12-1が11月4日に、オハテ12-2が11月13日に、それぞれ営業運転を開始する予定。「SL大樹」「SL大樹ふたら」の3両編成の客車のうち、中間車両として運用します。
展望車は従来の14系と混成して運用に就くため、リクライニングシートやボックスシートといった、異なるコンセプトの接客設備を提供することで、利用者にさまざまな選択肢を用意するということ。また、今後の「SL大樹」中間車はこの展望車がメインの運用となるようですが、これまで中間車として使用してきた「ドリームカー」についても、ニーズに応じて編成に組み込み運用するとしています。
さらに今後、ぶどう色塗装の客車を増やし、青色塗装統一の編成と、オハテ12-1を含むぶどう色塗装統一の編成を、それぞれ1本ずつ組成できるようにする計画だということです。
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スペシャル動画(1分34秒)