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スピードアップと乗り心地の向上を重ねてきた、東海道・山陽新幹線「のぞみ」30年の歩み

2022年3月14日(月) フォトライター 栗原景

「のぞみ」中心のダイヤへ

2003年10月1日、東海道新幹線品川駅が開業しました。ほぼ同時に、東海道新幹線から100系電車が引退し、東海道新幹線は300系・500系・700系の「のぞみ」型車両に統一されました。

全ての列車が時速270キロ運転に対応したので、この改正から東海道新幹線は「のぞみ」を中心としたダイヤになります。それまでは遅い「ひかり」「こだま」の合間を縫って時々「のぞみ」が運行されていたのが、1時間あたり「のぞみ」最大7本、「ひかり」2本、「こだま」最大3本となったのです。時刻表の表記も、「のぞみ」の方が目立つように変わりました。「ひかり」が大幅に減ったので、この改正から「のぞみ」にも自由席が導入されています。

2007年7月1日、「のぞみ」第三世代車両としてN700系がデビュー。N700系は、コンピュータ解析によってさらに先頭形状の空力最適化を進め、さらに曲線区間で車体を最大1度傾けて遠心力を打ち消す車体傾斜装置を採用した車両です。これにより、従来減速していた一部曲線区間での時速270キロ運転が可能となり、東京〜新大阪間の所要時間は最速2時間25分と5分短縮。山陽新幹線での最高速度は、500系以来となる時速300キロを実現しました。もちろん、座席配置は300系、700系と全く同じ1323席です。

700系(左)をさらに進化させた形のN700系(右)
700系(左)をさらに進化させた形のN700系(右)

翌2008年3月15日のダイヤ改正では、全列車が品川駅・新横浜駅に停車となりました。現在も走り続ける「のぞみ」は、この時完成したと言って良いでしょう。

2013年には、ブレーキシステムなどを改良したN700Aが登場。既存のN700系も、順次N700A相当となる改造工事を受けました。ブレーキ性能が向上し、車体傾斜装置の動作も改良された結果、2015年3月14日のダイヤ改正から東海道新幹線の最高時速を285キロに向上。東京〜新大阪間は最速2時間22分に短縮されました。

N700系の改良型であるN700A
N700系の改良型であるN700A

1時間最大12本運行される大動脈に

次々と新しい技術が投入され、乗り心地の向上とスピードアップを重ねてきた「のぞみ」。2010年には座席数が他の形式とは異なる500系が「のぞみ」運用から引退し、2012年には300系が、そして2020年には700系が引退しました。

2020年の700系引退で、東海道新幹線の全営業車両が時速285キロ対応に
2020年の700系引退で、東海道新幹線の全営業車両が時速285キロ対応に

2022年現在は、N700Aタイプと、2021年7月に営業運転を開始したN700Sが、東京〜博多間を毎日走り続けています。全列車が時速285キロ運転に対応したことから、東海道新幹線では1時間あたり最大12本もの「のぞみ」が運行可能。新型コロナウイルスの影響によって現在は運行本数が減らされていますが、時刻表を見なくても、いつでも乗車できる利便性は健在です。

2021年にデビューした最新型のN700S
2021年にデビューした最新型のN700S

「のぞみ」編成は、東京〜博多間を1日に最大1往復半、実に3200キロあまりを走破しています。東京〜博多間の最速列車は「のぞみ64号」で、所要時間は4時間46分。これからも、「のぞみ」は日本の新幹線の看板列車として走り続けていくことでしょう。

 

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