東武鉄道は4月21日、動態復元作業を進めてきたSL「C11形123号機」の試運転を公開しました。
当日は、南栗橋車両管区内にある訓練線を数度往復。最初は時速15キロというスロースピードから始まり、徐々に速度を上げていき、最終的には「SL大樹」営業列車の通常運転速度と同じ時速45キロでの走行を披露しました。
東武鉄道によると、123号機の営業列車での運転開始は、2022年7月を予定。これに先立つ6月中旬には、南栗橋車両管区内において、同社が運用するC11形3両を集め、3重連で運転するイベントを実施するといいます。
このC11形123号機の動態復元完了によって、東武鉄道のSLはC11形3両という、日本では唯一の同一型機3両体制となります。この123号機のほか、「SL大樹」運転開始時からの207号機、真岡鐵道から活躍の場を写した325号機とともに運用に入ることで、SLの長期検査時も含めた通年のSL安定運行の実現、イベント列車の実現性向上が可能になるとしています。
123号機は、動態復元作業を進めるにあたって、一部の部品が新製されているといいます。たとえば、老朽化した部品では水漏れの恐れがある水タンクは、新しいものへと交換。キャブ(運転席)周りも新製されました。
前照灯も、白みがかった色合いのLEDタイプに交換。復元整備において交換する部品が多かったことが理由だといい、ほかの「SL大樹」けん引機である207号機や325号機と異なる、123号機独特のポイントとなっています。
また、先頭部にはATSの車上子が設置されており、こちらも207号機や325号機と異なるポイントです。「SL大樹」では、保安装置関連機器はSLの後ろに連結する車掌車に一括搭載する方式を採っており、ATS装置本体はSLには搭載していませんでした。
ただし、123号機のATS車上子は、現在は準備工事にとどまっており、ATS装置に繋がっているわけではないとのこと。広報担当者によると、今回は多くの部分に手を加える復元整備だったことから、ATS関連機器を設置する余地があったため、今後さまざまな形で活用できるようにATS車上子を設置したのだそう。どのような形で、という説明はありませんでしたが、たとえば車掌車なしでの営業運転といったことが考えられそうです。
C11形123号機は、もとは「C11 1」として、1947年に滋賀県の江若(こうじゃく)鉄道向けに製造された車両です。北海道の鉄道に譲渡された後、1975年に廃車。以降は日本保存鉄道協会が保有する形で、北海道で静態保存されてきました。
2018年、この車両を東武博物館が取得し、東武鉄道によって、大手私鉄では初となる蒸気機関車の動態復元作業に着手。新型コロナウィルス感染拡大などの影響で、当初は2020年冬の完了を予定していたスケジュールに遅延が発生しましたが、2021年冬に「火入れ式」を開催。そして今回、ようやく試運転を実施する運びとなりました。
いよいよ線路上での自力走行を披露した123号機。営業列車での復活まであと少しです。