緑・青・白……、夏色が際立つ鉄道写真
暖かな春風に色とりどりの花が喜びを謳歌していた春も終わり、これから生命の力強さが最も現れる夏がやってきます。夏の色と言えば草木の緑、海や空の青、そして波や雲の白など、柔らかな春の色に対してコントラストが高く、爽やかな色合いが鉄道を包みます。
今回は「夏の鉄道写真を楽しもう!」というテーマで、鉄道写真に夏を取り入れた撮影方法や考え方をお話ししたいと思います。
柔らかい新緑は逆光がおすすめ!
桜前線が北東北まで進むと、暖かい地域は新緑が眩しい、まさに「山笑う」季節になります。ちなみにこの「山笑う」という言葉は中国の画家、郭煕(1023年~1085年)の画論「臥遊禄」の「春山淡冶にして笑うが如く 」という言葉に由来しています。日本では俳句の季語としても使われることがありますが、気温の上昇と共に日に日に木々が芽吹いてくる様子は、 言葉の通り、山々が喜びを表しているかのようです。
その新緑の撮影も、葉の出ぐあいや濃さによって撮影のコツは変わってきます。
まず、芽吹いたばかりでまだ山肌に枯れ木が多く、茶色く見える頃は、逆光で狙うといいでしょう。これは前回の「春色の鉄道写真を求めて」にてご紹介した、梅花の撮影方法と同様の考え方になりますが、逆光では新緑の一つ一つが透過光で輝き、新緑にボリューム感が生まれます。
私は、新緑撮影では特に逆光を意識して、撮影地探しや撮影時間を考えています。ちなみに、光画部(現在でいうところの写真部)を舞台にしたドタバタ学園コメディ少年漫画「究極超人〇~る」では「逆光は勝利!」という名台詞が登場しますが、これは私の座右の銘でもあります(笑)。
また新緑は、影になりやすい木の下や幹回りを入れた撮影も可能です。深緑となると、光が当たっているところと影になっているところでは照度差が大きいので、影の部分は黒くなりがちです。一方で、影の部分に露出を合わせてしまうと、明るいところはかなりオーバー気味になります。しかし、透過率が高い新緑は影の部分が薄くなり、緑色に表現されやすいので、深緑ではできないような、影の部分を入れての表現も良い感じで撮影することができます。
また、晴れたときだけでなく、曇りでも新緑撮影はおすすめです。俯瞰撮影などの広い風景がおすすめで、新緑がより柔らかく、ふわっとした雰囲気になります。
フィルターワークでより鮮やかに!
日本人の食文化を支える水田。それは、縄文時代後期から脈々と人々の心に受け継がれた、日本の原風景でもあります。
鉄道風景写真でも、水田は切っても切れない被写体の一つ。その中でも夏といえば、田植え前の水鏡や、青々とした葉を天に向かって稲が日々伸びている風景が、実に清々しいものです。
さて、その水田風景の撮影ですが、まずは順光で狙いたいですね。順光は被写体の色をストレートに表現してくれます。特に稲の青さを鮮やかに出す場合は順光が最も有効です。
残り5604文字/全文:8428文字
高コントラストな風景で最適な設定は?有料会員に登録すると、記事全文がご覧いただけます。
また、水田は広いところが多いので、俯瞰撮影で望遠レンズを使わない限り、空が必然的にアングルに入ます。空の色が最も出るのもやはり順光。空の青さと稲の青さを高彩度かつ高コントラストで撮影するには、順光が適しているのです。さらに彩度とコントラストを高めるために、PLフィルター(偏光フィルター)やC-PLフ
次回、助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」は、イメージ写真の撮り方や考え方をお話したいと思います。ご期待ください!
また、鉄道写真やカメラ、レンズに関わる質問も随時募集しております。あわせてよろしくお願いいたします。