7月1日、JR東海の新型特急車両「HC85系」が、いよいよデビューします。
HC85系は、高山本線などで活躍するキハ85系の置き換え用として開発された車両。2019年に試験走行車が登場し、2022年には量産車が登場しました。7月1日に特急「ひだ」でデビューし、キハ85系を順次置き換えていく予定となっています。
ところで、今後置き換えられるキハ85系は、非貫通型先頭車では運転席直後からの前面展望が楽しめる構造で、貫通型先頭車でも運転席直後はガラス張りです。しかし、今回デビューするHC85系では、全ての先頭車が貫通型で、運転席直後も窓のない壁と、前面展望が配慮されていません。なぜなのでしょうか。
JR東海の広報担当者によると、非貫通型の車両を設定しなかった理由は、「両方の先頭車に増結することがあり、前面の車窓をお楽しみいただけないこともあるため」だといいます。
2022年現在、キハ85系による「ひだ」では、名古屋駅発着の列車と大阪駅発着の列車を岐阜駅で連結する運用があります。この運用をそのままHC85系で置き換えると、岐阜方に大阪駅発着編成、高山方に名古屋駅発着編成を連結することに。グリーン車は岐阜方先頭車に設定されているので、岐阜~高山間ではグリーン車の先頭車が編成中間に連結されることとなります。
HC85系の今後の詳細な運用は検討中のようですが、このような組成となった場合に、「せっかく展望席を取ったのに前が見えない!」となることを防ぐため、グリーン車はキハ85系のパノラマタイプではなく、他と同じ貫通型先頭車としたということです。また、全ての先頭車を貫通型とすることで、増解結時の柔軟な運用が可能となることも考えられます。
しかし、貫通型の車両であっても、現行のキハ85系のように、運転席直後に窓を設ければ前面展望は可能です。この点をJR東海の広報担当者に質問すると、「車両に搭載する機器が増え、機器スペースとしたため」という回答が返ってきました。
たしかに、近年の鉄道車両では、防犯カメラやデジタルサイネージ、車内Wi-Fiサービス用機器といった設備が増えており、機器設置スペースが従来車よりも増えているものがあります。たとえば、同じJR東海の新型一般車両315系でも、運転席に向かって右側の仕切り壁が機器設置スペースに充てられ、前面展望がしにくくなっています。
現行のキハ85系では、座席部分の床を一段高くすることで眺望に配慮していますが、HC85系ではバリアフリー対応のため、こちらもフラットな床面に変更。かつて「ワイドビュー」を名乗っていたキハ85系と比べると、展望面では物足りないかもしれません。しかしJR東海によると、「側面窓は現行と同等の大きさとしており、車窓をお楽しみいただけるようにしています」ということで、運転席直後以外の座席の展望自体は、大きく変わってはいません。