さまざまな「X」を持つ「スペーシア X」の車内を見る
「X」にさまざまな意味を持たせた「スペーシア X」の車内設備を、報道関係者向け発表会での展示をもとにご紹介しましょう。
浅草方先頭車となる6号車には、「コックピットスイート」が設置されます。乗務員室の直後に設けられる個室で、広さは私鉄最大となる11平方メートル。最大で7人まで利用可能です。コンセプトは「走るスイートルーム」で、プライベートジェットをイメージしたといいます。
発表会では、ソファーやテーブルなどのみの再現となっていましたが、「(良い意味で)これが東武の車両!?」と驚くほどの質感の高さがうかがえました。
6号車の「コックピットスイート」以外のスペースには、従来のスペーシアと同様に、4人用個室の「コンパートメント」を設置。今回の発表会では座席などの実物展示はありませんでしたが、室内に設置する照明が公開されました。
「コックピットスイート」とは反対側の先頭車となる1号車は、「コックピットラウンジ」となります。こちらは「時を超えるラウンジ」がコンセプトで、1・2・4人掛けのソファーが設置されます。
発表会では、座席そのものは1人掛けのソファーのみの展示でしたが、座り心地は良好。他の座席のように大きな背もたれはないため、リラックスするには他の車両に劣りますが、仲間うちで談笑しながらの利用などでは使い勝手が良さそうです。
5号車の一部には、半個室の「ボックスシート」が2組設置されます。横幅約80センチの座席で、大人1人に加え、小さな子ども1人の着席も可能としました。
2号車に設置する「プレミアムシート」は、2-1列配置でゆったりとした座席を採用。シートは電動リクライニングで、座席を倒しても後席に影響しない「バックシェル」タイプとなっています。
「プレミアムシート」の座席は、コイト電工製のものが採用されました。同社の担当者によると、他の鉄道事業者へ納入した製品をベースにしたということ。近鉄の80000系「ひのとり」の「プレミアムシート」など、多くの鉄道車両用座席を納入してきた同社のノウハウが、「スペーシア X」にも活かされています。
3・4・5号車には、普通車に相当する「スタンダードシート」を設置します。シートピッチは100系と同じ110センチメートルで、観光やビジネスなど、幅広い利用シーンを想定しています。
座席の土台部分は500系「リバティ」のものがベースとなっているといいますが、背もたれなどは「スペーシア X」用に新たにデザインされました。背面テーブルとインアームテーブルの2つを装備する点は「リバティ」と同じですが、背面テーブルは大きさが拡大され、PC利用時の安定性が向上しています。また、インアームテーブルには「鹿沼組子」をイメージした六角形のデザインが盛り込まれています。
「リバティ」では袖仕切りに設置されていたコンセントですが、「スペーシア X」では使い勝手を考慮し、腰掛けの裏側に位置が変更されました。
側面表示器には、交通電業社の「彩Vision」を採用します。液晶式の表示器で、従来のLED式よりも情報量の増大を実現。動画の表示も可能となっています。液晶式表示器の採用例としては、2021年にデビューした京阪3000系のプレミアムカーに次ぐもので、関東の鉄道事業者では初だといいます。
この「彩Vision」は、側面表示器のほか、デッキの天井にも「天窓表示器」として設置される予定。鉄道車両天井へのディスプレイ設置は、世界でも例を見ないものだといいます。