厳しくも美しい日本の冬と鉄道情景
四季折々の風景が美しい日本。鉄道の沿線にも春夏秋冬、常にフォトジェニックな光と彩りにあふれています。
どの季節も素晴らしい表情を見せてくれますが、生命の息遣いにあふれた春から秋に対して、冬は自然の厳しさを感じる季節。しかし、鉄道写真に限らず、アウトドアの写真分野でも冬の情景や光を使った作品は数多く発表されます。それほど冬には人の心をかき立てる大きな魅力あるのです。
今回の「助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」は、「フォトジェニックな冬の鉄道写真を楽しもう!!」と題して、冬ならではの鉄道写真の撮り方や覚えておきたいテクニックなどをお話していこうと思います。
冬でもやっぱり編成写真!
鉄道車両が大好きな鉄ちゃんは、やはり季節は関係なく車両中心の編成写真を撮りたいと思うはずです。何を隠そう、私も10代は編成写真至上主義でした(笑)。編成写真の撮影のアプローチはほかの季節ともさほど変わりませんが、ちょっとしたコツをお話ししましょう。
まず、雪の有無に関係のない編成写真撮影の場合です。編成写真撮影で好まれるのが順光、しかも太陽の光線が線路方向に対して45度の角度がベストですが、冬の時期になると日が低いこともあり、電化区間では架線柱やビーム(架線柱から延びる、架線を取り付ける部品)の影が、夏に比べて長く伸びます。
編成写真を美しく撮るための基本として、列車の顔の横に架線柱が見えてしまわないよう、先頭部の後ろに架線柱を隠すフレーミングとシャッターのタイミングが必要と、以前お話しました。しかし、日が低くて陰が長くなる冬に、特に望遠レンズで撮影する場合は、列車の先頭部が架線柱を隠したタイミングで、前にある架線柱の影が先頭部にかかってしまうということがあります。夏ではベストなシャッターポイントなのに、冬になると影で撮れなくなる、ということもあるのです。その場合、もし望遠レンズ以外でも撮れるフレキシブルな撮影地だったら、標準~中望遠クラスの焦点距離で撮影しましょう。綺麗に架線柱の影をかわすことができます。
また露出の話ですが、雪景色の中での編成写真は、ほかの季節と変わってオーバーになりがちです。雪がレフ板代わりとなって、上からの太陽光だけでなく、下からも光を反射して列車を照らすからです。レフ効果で車両の足回りのディテールがしっかり出るのは良いのですが、全体的に露出はオーバーになり勝ちなのが難点。そのためマニュアル露出で撮影する時は2/3~1段ほどアンダーに設定するのがベストです。
さらに注意を要するのは、露出をカメラ任せのオートにしている場合です。先ほども書いた通り、空はもちろん、足元の雪も相当明るくなるので、他の季節の順光時に比べて全体的に露出はオーバー気味になります。そのためカメラは「今、結構オーバーなんだな」と判断して、必要以上にアンダーにしてしまうこともあります。その時はプラス側に若干露出補正をしましょう。そうすれば極端なアンダー写真になるのを防ぐことができます。
また、カメラの背面モニターで撮影前に露出をチェックする場合も要注意。雪景色の中で、フードもなしに背面モニターを見ると、画像が暗く見えるため、露出がアンダーだと感じてしまいます。その画像をもとに露出補正をすると、写真は逆にオーバーになり、大失敗の原因にもなります。ミラーレス一眼であれば接眼部で画像を確認し、一眼レフの場合はフード付きルーペなどで背面モニターを確認するようにしましょう。
鉄道風景写真は撮影時の設定も準備も大切!
冬の鉄道写真の表現で、鉄道風景写真は欠かせない撮影方法です。特に降雪直後の雪晴れの風景は木々の枝葉に雪がたくさん付いているので、実にフォトジェニックな光景になります。
鉄道風景撮影の撮影方法も、基本的にはほかの季節の撮り方と変わりません。鉄道風景写真の極意は「風景が主題、鉄道車両は副題」です。
車両好きの鉄ちゃんが陥りがちなのが、風景よりも車両が目立ってしまう構図。フレーミング中では列車は思った以上に小さく写し、その分風景をダイナミックに捉える構図を心掛けてください。鉄道風景写真はメリハリが大切です。露出に関しても編成写真の時と考え方はあまり変わりません。もちろん雪景色になったら全体的にオーバー目になるので、露出をややアンダーにする必要があります。
また、もう一つのポイントとして、彩度やコントラスト、シャープさをつかさどる撮影モード(ニコンの「ピクチャーコントロール」、キヤノンの「ピクチャースタイル」など)は、「ビビッド」や「風景」よりも、「スタンダード」や「ニュートラル」を選ぶことです。雪景色はハイライトとシャドーの差が大きい、コントラストの