「自分の鉄道知識を試したい!」そんな声に応えて誕生した「鉄道マイスター検定」は、2022年10月に第1回が開催され、大評判となりました。そして3月には、第2回が開催されることも決定しています。
しかし第1回では、出題された問題のレベルが高かったことに加え、出題範囲が過去から現代まで幅広かったことで、受験者からは「何を使って勉強したらいいのかわからない」といった声もあったといいます。
そこで鉄道コムでは、第2回鉄道マイスター検定の開催を前に、問題作成を担当した交通新聞クリエイトの助川和彦さんに、出題の傾向と対策を聞きました。
検定の問題を作成した「マイスター」助川さん
――まず、問題作成を担当した「マイスター」である助川さんについて教えてください。
私が勤める交通新聞クリエイトは、「JR時刻表」や、雑誌「鉄道ダイヤ情報」などを制作する交通新聞社の子会社です。交通新聞社の受託業務をメインとしており、私はJRグループの情報を中心に掲載する「JRガゼット」の編集などを担当しています。また、JR各社の広報誌の編集なども、当社が受託しています。
私は、いわゆる「ブルトレ世代」に属する鉄道ファンで、子どもの頃からの鉄道好きでした。交通新聞社には30歳で入社し、JRの広報誌の編集などを手掛けてきました。2005年から2017年までは鉄道ダイヤ情報の編集長を務め、2019年からは交通新聞クリエイトに出向しています。
広報誌の仕事では、色々な知識を得ることができました。たとえば、新幹線と在来線では、保守作業時の線路内の立ち入り手続きや管理方法が異なります。どちらも安全な運行を守るということは同じなのですが、実務や管理の方法などは、両者でさまざまな点において異なるのです。そのような社内の決まりや仕事を、社員や家族の方々に、誤解やミスがなく、かつ簡潔に伝えなければいけない、というのが、広報誌の仕事でした。
個人的な趣味の話をすると、若い頃お金がないのに鉄道趣味の対象を広げた結果、どれも中途半端に終わっていたと思います。カメラは安いもので済ませ、模型はそれほど走らせず、旅行は「青春18きっぷ」で……。ただ、さまざまな対象に手を伸ばしたおかげで、知識が広がったと思います。
――難易度の高い問題が数多く登場した鉄道マイスター検定ですが、これらの問題はどのように作成したのでしょうか。
私たちの会社では、鉄道業界の専門誌やJR各社の周年誌など、さまざまな資料を保有しています。これらを読んで、「マニア的にツボに入りそうだ」「検定に使えそうだ」というネタがあれば、検定用にピックアップしました。そして、検定のテーマに沿って、たとえば「旅・食」のカテゴリであれば、弁当や食堂車……などと考え、問題を作りました。
鉄道趣味としての人気は、車両や路線、きっぷなどの営業面など、見えやすい場面に偏ってしまいます。ですが、私自身は会社の仕事を通して、線路や建築、架線、信号・通信など、より専門的な部分も見てきました。また、鉄道といえば、旅行や駅弁など、周辺の文化も密接に紐づいています。
この検定は「マイスター」と謳っているので、人気のある部分だけではなく、その他の分野や文化のような部分にも光をあてて、まんべんなく出題しようという考えのもと問題を作成しています。
出題する内容については、簡単な方向でも難しい方向でも作ることができましたが、難易度が高い方が、コアな方々の挑戦欲がくすぐられるのではないか、という話になり、この方向性に決定しています。
――第1回の結果についてはどのように感じましたか。
全問正解した方が1人だけだったということで、難易度が高かったかもしれないと思います。コアな方には受けたのでしょうが、ライトな鉄道ファンなどの受験者には、「何だこれは」と思われたかもしれません。正直なところ、私自身が鉄道のコアな部分が好きなので、その方向を狙ったということもありました。
分野についても、「車両・列車・駅」「歴史」「技術」「時刻表」「旅・食」の5つに絞って出題したとはいえ、そもそも鉄道というジャンルは幅が広いものです。結果、出題傾向の把握に難儀した方も多かったかと思います。
これを受けて、第2回ではテーマを「新幹線」に絞り、出題することに決定しました。ただ、新幹線は長い歴史があるものですので、JR発足以降の話だけでなく、国鉄時代の内容の問題も出題します。なので、古くからの鉄道ファンにも、面白く挑戦していただけると思います。
また、受験しても達成感が得られない、という方が少なくないのは、検定としては魅力に欠けると思います。検定の面白さは、そこにあるはずですから。なので、第2回では選択肢の数を減らすなど、さまざまな改善を試みています。
第2回の出題傾向と対策は? 問題作成者が語るヒント
――第2回の鉄道マイスター検定を受けるにあたっては、どのようなもので勉強したらいいのでしょうか。
今回は、マニアックな内容ばかりを揃えたわけではありません。社員でしかわからないようは話は入れておらず、新幹線に詳しい本を読んでいれば、ある程度は情報が出てくる問題にしました。
具体的な内容ですが、車両については、みなさんが馴染みのある内容です。ただし、現存しない車両についても出題します。歴史については、国鉄時代から現代まで、幅広い範囲が対象です。戦前の「弾丸列車」に触れる内容も、直接的な部分ではありませんが、出てくるかもしれません。
時刻表については、あまり古い話をしても面白くないので、JR発足後の話がほとんどになります。ただし、時刻表の本文だけでなく、営業制度や料金が記載された、いわゆる「ピンクのページ」からも出題します。なお、旅と食については、国鉄時代も含みます。食堂の担当業者の話も出てきますが、昔の時刻表には、業者やメニューが載っています。
技術に関しては、施設、電力、信号・通信の他に、車両の技術も若干含まれます。この部分では、もしかすると愛好者レベルでは知っているか知らないかレベルのものが出てくるかもしれません。
――前回は鉄道全体から50問で、今回は新幹線という限られたジャンルから50問となりましたが、その問題の深さについてはいかがでしょうか。
出題範囲は狭くなっていますが、問題それぞれの深さについては、前回同様です。新幹線だから作りやすい、作りにくい、というわけではありません。「この列車の編成は?」という問いを出すかもしれませんし、なにをもって難しくするのか、ということを考えながら、問題を作成しました。
――平均的な知識量の鉄道ファンが受験した場合、正答率はどのくらいになるのでしょうか。
わざと難しくしている、というわけではありませんが、50%くらいの正答率になるのではないでしょうか。作った本人が問題を解けないこともあるかもしれませんから(笑)。ただし、受験するごとに問題をランダムに表示するシステムの検定なので、それによってある程度は変動する可能性があります。
ちなみに、挑戦時に出題する問題は50問ですが、ランダムに出題するシステムのため、問題自体は多数を用意しています。
――第2回の挑戦者に向けて、メッセージをお願いします。
今回も、皆さまのご期待に添えるような問題にしております。是非とも受験されて、検定をお楽しみいただければと思います。鉄道は、趣味としてはもちろんですが、生活とも密着しており、社会現象の一端も担っています。そのような部分を、検定を通して感じていただければと思います。
第2回の鉄道マイスター検定は、3月18日から6月4日まで開催。5月31日まで受験申込を受け付けます。
受験料は、初回が4500円、2回目以降が2500円。受験期間内であれば、何度でも再受験可能です。
問題数は50問で、制限時間は40分。テーマは「新幹線」で、「車両・列車・駅」「歴史」「技術」「時刻表」「旅・食」の5分野から出題されます。
合格率は80%以上。合格者には認定バッジやデジタル合格認定証が贈呈されるほか、正答率ランキング上位30位までの挑戦者は、ウェブサイトにて公表されます。加えて、上位合格者の特別賞として、鉄道コムや鉄道雑誌各社の特典も用意されています。
さらに今回は、本番前に受験できる「試乗版」も公開。問題は第1回の内容ですが、これに合格すれば、第2回の500円割引クーポンを入手できます。試乗版の受験料は無料。合格するまで何度でも挑戦できるので、こちらで腕試しをし、本番の第2回に挑戦するのもいいでしょう。
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